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57.勇者チェンジで

お待たせしました。

 謁見の準備ができたと言うので、俺とレイラはメイドに連れられて謁見の間に行く…と思っていたら、到着したのは以前来た謁見の間ではなかった。部屋に入ると、そこは普通の部屋だった。普通と言っても100畳くらいある。その中心にテーブル席があり、国王と王女が座っている。

 俺とレイラは促されるままに同じテーブル席に座った。最初は恐縮したけど、嫌だと言うわけにはいかないから、素直に座った。


「さて、ラソマ伯爵、久し振りだな」

「お久し振りです」

「ラソマ伯爵、また会えて嬉しいです」

「私も王女殿下にお会いできて嬉しいです」


 俺がそう返事すると、王女が俯き加減になってしまった。失礼だったか?


「まったく…相変わらずラソマ伯爵は娘を口説いてくるな」

「え!いえ、そんな事は…」


 陛下が笑いながら言ってくる。雰囲気的には怒ってないだろう。


「そんな事は…何だ?口説く必要がないほど魅力がないと?」

「そんな事はありません!王女殿下は魅力的です」

「ラソマ伯爵…」


 王女が呟くように俺の名前を呼ぶ。陛下は笑っている。何だ、からかわれているのか?


「相変わらずラソマ伯爵の反応は面白いな。いや、馬鹿にしているわけではないぞ」

「はい」

「さて、それでは本題に入るか。1人、放っておいては悪いからな」

「いえ、大丈夫です」


 国王の言葉にレイラが冷静に返答する。


「手紙には勇者の件で会わせたい人がいると書かれていたが、その女性がそうなのか?」

「はい、彼女の名前はレイラ。Sランクの冒険者です」

「レイラです。よろしくお願いします」

「うむ。レイラか。その若さでSランク冒険者になるとは凄いな」

「恐れ入ります」

「ふむ…ただの冒険者ではないのか。礼儀がしっかりしている。貴族なのか?」

「今は貴族ではありませんが、以前、貴族の爵位を頂いていました」

「ん?お主に爵位を与えた覚えはないが」

「私は別の国から来たので…その国で頂きました」

「そうだったのか。その時の爵位は?」

「伯爵です」


 レイラの言葉に国王と王女が驚く。


「…待てよ…今回、ラソマ伯爵の用事は勇者と関係する事。そしてレイラ…異国で伯爵位を持っていた。まさか…そういう事なのか?」


 国王は気付いたようだ。


「はい。レイラは異国の勇者でした。スキルも間違いなく勇者です」


 俺の言葉に再び国王と王女が驚く。

 それから俺とレイラで事情を説明した。


「成程。国からの行き過ぎた厚意に耐えられなかったか」

「はい。本来であれば喜ぶべき事だとは思うのですが、私は勇者を産む為の人間ではないので」

「それはそうだな。そもそも勇者というスキルが遺伝だというのは俗説であり、真実ではない」

「私も同じ女性としてレイラさんが受けた厚意は嫌ですね。私が産む子供は王族になりますけど、私は王族を産む為の人間ではないので、そのように扱われたら国を出たくなります」


 王女は同じ女性としてレイラに共感してくれたみたいだ。


「そこで相談なんですけど、レイラをこの国の勇者にできませんか?」

「我が国には既に勇者がいるぞ?」

「はい。ですが性格に問題があると思います。魔王が攻めてきた時にも何も行動をしませんでしたし」

「それはそうだが」

「金属の魔王が来た時、私が行く前にレイラは闘ってくれていました」

「ああ、例の冒険者はレイラだったのか!冒険者ギルドのギルドマスターから話は聞いている」

「魔王が攻めてきた際の行動力があるのなら、レイラさんの方が良いのでは?私はラソマ伯爵の意見に賛成です」


 王女は賛成してくれた。後は国王だな。


「だが今の勇者はどうする?」

「レイラの居た国の勇者になってもらうのはどうでしょうか?」

「あの国は納得するか?」

「レイラでなくても勇者が来てくれるのなら、喜ぶのではないでしょうか?」

「そうだな。勇者がいてくれれば安心するだろう」

「でも勇者は納得するかしら?」


 王女が疑問を投げかけてくる。


「失礼ですが、勇者は女性好きですよね?レイラが居た国に行けば、子供を産ませる為として、女性を紹介するのではないでしょうか?レイラは嫌がりましたが、勇者は喜ぶ筈です」

「確かにそうね。あの勇者はそういう最低なところがあるし」


 むしろ、最低なところしか見当たらない。勇者としての実力は見れてないから、性格的に難があるとしか判明していない。


「レイラは我が国の勇者として活動してくれるか?」

「はい。ただ私は勇者を産む存在ではないので」

「うむ、それは分かっている。お主の意思に反して男を紹介するといった事はしないと約束しよう。その他に条件はあるか?」


 国王に聞かれたレイラは考えていたと思われる条件を話し始めた。と言っても多いわけではなく、無茶なものでもない。国王は嫌な顔をせずに承諾していた。


「ラソマ伯爵、今回の提案は助かった。あの勇者にはうんざりしていたからな。レイラが新しく勇者になってくれるのは嬉しい事だ。よし、早速勇者に話すか。ここに来させるが、ラソマ伯爵、レイラ、できれば居てくれると助かる。お前達からも説明してくれ」

「分かりました」


 それから少しして残念勇者が部屋に入って来た。


「またお前か!ラソマ!」

「どうも」


 俺に活躍する機会を横取りされたと勘違いしている勇者は悪態をついてくる。


「お前に話がある。座れ」


 国王に言われた勇者は椅子に座る。


「俺に何の用だ?」

「単刀直入に言おう。お前には国を出て行ってもらう」

「なに!?勇者を追い出すと言うのか!?こいつが魔王を倒せるからと言って、勇者という存在が不必要というわけではないだろう!」


 勇者は激昂している。と言うか、国王相手に無礼な口調だな。まあ残念勇者だから仕方ないか。


「確かに勇者は必要だ。魔王に対しての抑止力になるからな。だが今回、ラソマ伯爵の提案と協力者によって、その問題は解決した」

「またラソマか!」

「ここにいる女性、この者は勇者だ」

「…勇者…だと?だが1つの国に勇者は1人しか存在しない筈だ。この国には俺がいる。この女が勇者だという事は有り得ない」


 疑問に思っている勇者に国王と俺で説明を始めた。


「へー!この女は勇者としての責任を放棄して、逃げ出してきたのか!!」


 そう言って勇者はレイラを笑う。いや、お前も勇者の責任を放棄して魔王を倒しに行かなかっただろう!


「それで、この無責任な勇者をこの国に置き、俺を追い出すと言うのか?」

「そうだ。だが、路頭に迷わすつもりはない。お前にはレイラが居た国に行ってもらう。その国には現在、勇者がいないからな」

「勇者を交換するって事か。だけど俺にメリットはあるのか?」

「あの国は、勇者は遺伝だと考えている。レイラには勇者の遺伝子欲しさに、国が何人もの男を用意したそうだ」

「へえ?遺伝ねぇ…そんな噂を信じる国があるんだな」

「お前が行けば、お前の遺伝子欲しさに何人もの女を紹介してくれるだろう」

「成程…」


 国王の言葉を聞いた残念勇者が喜びの表情になる。


「よし!俺はその国に行く!お前も随分と楽しめたようだが、その楽しみは俺が貰うぞ」

「私は楽しんでない。だから国を出たのよ」

「あっそ。おかしな奴だな」


 いや、お前がおかしいだけだろ。欲望に忠実過ぎるんだよ。


「馬車を出してくれるよな?まさか勇者に徒歩移動させるわけないもんな」

「無論だ。我が国の評判にも関わる。それで、いつ出発する。我々はいつでも構わないが」

「今日だ。この国でも女を抱いてきたが、早く異国の女を抱きたいからな」

「最低」


 レイラは嫌悪した表情で残念勇者に対して言う。俺も同感…いや、この場にいる残念勇者以外の全員が同感だろう。


「ラソマ!残念だったな。お前がいくら魔王を倒しても勇者でない限り、俺のように女を紹介してもらえないぜ!」


 勝ち誇った顔で言ってくる。ウザい。


「私は節操無しではないので。それよりも早く行動しないんですか?時間を無駄に過ごせば、異国で待つ女性達を抱く時間が減りますよ?」

「それもそうだな!じゃあな!」


 そう言って残念勇者は部屋を出て行った。ここには国王も王女もいるのに、本当に礼儀知らずだ。


「では、これよりレイラ、正式に我が国の勇者になってくれるな?」

「はい!勇者として全力を尽くします!」

「うむ」


 こうしてレイラは俺の住む国の勇者になった。

読んでくださり、ありがとうございます!

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