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54.王女にかけられた呪い

「ところで私の顔に巻いている包帯について知りたい事はありますか?」


 王女はそんな事を聞いてきたけど、俺としては答えにくい。怪我か病気かな?とは思うけど、その答えを知っても王女に対する考えが変わるわけでもないし。


「王女殿下、失礼ながら、それは国家の秘密であり、例え相手がラソマ伯爵でも簡単に話さない方がよろしいかと」


 傍にいるメイドが話しかけている。そりゃあ、そうだよな。


「いえ、ラソマ伯爵なら大丈夫よ。それに国家の秘密と言っても知っている人は少なくないし」

「…王女殿下がそう言われるのであれば…」


 いや、もっと制してよ。国家の秘密なんて知りたくないし…あまり関わりたくないなぁ。でも、知りたくありません、なんて言えないしな。


「ふふ、困ってますね。でも大丈夫です。国家の秘密と言っても、そんなに大ごとではないですから」

「…はい」

「私の顔に巻いている包帯の原因は…呪いです」

「呪い、ですか?」

「はい。この呪いのせいで、私の顔は酷い状態になっていて、誰にも見せる事ができないんです」

「そうなんですか」


 女性で顔が酷くなるっていうのは辛いだろうな。ましてや王女で人前に出る機会も多いだろうし。


「でも呪いは呪術師というスキルを持つ人が解けるのではないですか?」


 呪術師は呪いをかける事も解く事もできる。呪いをかけるという、他人からすればあまり好ましくない事ができるので、自分は呪術師でも呪いをかける事はできないという人が多いらしい。


「お父様もその事は考えてくれて国中から呪術師の方を集めてくれました。でも誰も呪いを解く事はできなかったんです」


 王様が集めた呪術師でも解けないなんて。


「でも、そんな話を私にしても良かったんですか?」

「はい。正直に言うと、少し打算的なところがあります」

「打算的ですか?」

「ラソマ伯爵は私と年齢が近いのに活躍しています。そしてこれからも活躍すると私は思っています。そんな人ですから、もしかしたら今後、私の呪いを解く方法を見つけるかもしれない、そんな事を考えてしまったんです。ごめんなさい」

「約束はできないです。でも呪いを解く方法を探してみます」

「いえ!偶然に発見する程度で良いんです。ラソマ伯爵にはラソマ伯爵の人生がありますから、私の呪いの事を優先して考えなくても大丈夫です」


 王女の態度を見る限り、本当にそう思ってそうだな。でもせっかく秘密を話してくれたんだ。呪いを解く方法は探してみよう。


 そうして王女とのお茶会は、王女の包帯の秘密を知るという事で終わった。緊張はしたけど、王女の事が少しでも知れて良かったかな。まあ国家の秘密は知りたくなかったけど。


――クリス――


「はぁ…」


 お茶会が終わり、ラソマ伯爵が帰ってから、私はため息を吐く。


「どうされたのですか?」


 そんな私に対して傍にいるメイドが声をかけてくる。


「いえ、ラソマ伯爵に甘えてしまったなと。本当なら呪いの話までしなかったのに」

「ラソマ伯爵に期待してしまったのですか?」

「ええ。つい」


 ラソマ伯爵は魔族の大群の襲撃を倒し、魔王を2人も倒している。勇者でもないのに。レミラレス伯爵家から出てきて、まだそんなに日が経っていないのに、それだけの活躍をしている。今後を考えれば、まだまだ活躍はするでしょう。もしかしたら呪術師に頼らない呪いの解き方も知るかもしれない。

 私はそんなラソマ伯爵に甘えてしまった。もしかしたらラソマ伯爵は何かしてくれるのではないかと。


「でも王女殿下の言葉にラソマ伯爵は嫌がっていなかったでしょう?」

「ええ。嫌がるどころか、本当に呪いを解く方法を探してくれそうだったわ」

「それなら大丈夫じゃないですか?」

「そうだと良いのだけど…」


 1歳とは言え、私の方が歳上なのに甘えてしまうなんて。


「思っていた以上に王女殿下はラソマ伯爵がお気に入りなのですね。そうでなければ甘える事などしないでしょうし」


 この人は私が幼少の頃から、私専属のメイドとして働いてくれている。一緒にいる時間が長いから、こうしてくだけた言い方もしてくる。


「ええ、そうかもしれない」


 思えば最初に目を褒められた時から…でも私の顔は呪いで酷い状態…こんな顔じゃなければ…。せめてラソマ伯爵の私に対する接し方が変わらない事を願います。


「王女殿下がラソマ伯爵への気持ちを認めるなんて!私、全力で王女殿下の恋を応援しますね!」

「ちょ、ちょっと!止めてよ!私に恋なんて無理よ…こんな顔だもの…見ればラソマ伯爵も気持ち悪く思うに決まっている…」

「そうでしょうか?ラソマ伯爵が気持ち悪く思う…王女殿下は本当にそうお考えですか?ラソマ伯爵なら呪いの件も知りましたし、受け入れてくれるのでは?」

「…そうね。でも、だからと言って私は気持ちを伝えない。ラソマ伯爵には、きっと良い人が見つかる。私では無理よ」


 自分で言って悲しくなる。でも本当にそうだと思う。貴族で英雄で、それを鼻にかけない。対外的に劣っている私ではラソマ伯爵の傍に立つ事はできないのよ。


ーーラソマーー


 それにしても、まさか呪いとはなぁ。

 俺は今、城から自分の家に向かって歩いている。城の近くで瞬間移動は使わない方が良いからな。城から離れれば瞬間移動するけど。

 呪いなんてものがあるなんて、この世界は恐ろしいな。俺の元いた世界でも呪いという言葉はあるし、かけ方も知られている。まあそれが成功するかはさておき。

 王女の呪い、なんとかしてあげたいな。俺のスキルで解決できないだろうか。

 そもそも呪いがかかった原因は何だろうか。呪術師がかけたか、呪いのかかった装飾品を身につけてしまったか。おそらく前者だろうな。呪いのかかった装飾品を王女が身につける事なんてないだろう。プレゼントだとしても安全な品物か調べる筈だ。だとすれば、呪術師が犯人の可能性が高いんだけど、わざわざ王女を呪う必要があるのか。それなら次期国王の座を狙って第一王子と第二王子、もしくは本人でなくても、その派閥の人間が犯人という事もあり得る。

 けどなぁ…呪い殺すならともかく、人に見せられない顔にする呪いって…それが良く分からない。まあ、その辺りは犯人に聞くのが手っ取り早いか。

 まずは呪いを解く方法だな。呪いを解く方法は呪術師に頼るしかないんだから、その選択肢が無い今、俺にできる事は自分のスキルで呪いが解けるかを考える事だけだ。


 呪いの事を考えている間に屋敷に着いた。


「お帰りなさいませ。どうでしたか?」


 屋敷に入るとアミスが出迎えてくれる。


「うん、有意義だったよ。ちょっと考えさせられる事もあったけどね」

「考えさせられる事、ですか?」

「まあ、これは俺自身が考える事だから、アミスには言えないんだ。ごめんね」

「いえ!そんな!私はメイドですから、ラソマ様のお考えの全てを知ろうなんて思っていません」


 これは王女の呪いについてだからな。アミスは口が堅いというか、俺が他言無用だと言えば絶対に誰にも言わないだろう。それでも誰かに簡単に話せる内容ではないから誰にも言わない事にする。


 それから1週間の時が経った。俺はSランク冒険者として活動したり、王女の呪いを解く方法を考えていた。結局、何も思い浮かばなかったけど。

 そんなある日の朝、俺の屋敷にレイラが訪れた。

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