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52.ダンジョンマスターとの遭遇

 ダンジョンを進む。

 まず思った事は、ダンジョン内部が明るい事だ。天井の一部が照明のように光っていて、薄暗くはあるけど、足元が見えないという事はない。明るいと、不意打ちができないぶん、モンスターには不利じゃないだろうか。

 ちなみに俺は暗闇を透視しているので、昼間と同じように見えている。少し進むと3匹のゴブリンが現れた。結界刃で切ると次に進む。ゴブリンの素材は置いていく。高額ではないからだ。もしダンジョン内部にモンスターの死体を放置しても、ダンジョンが吸収するそうだ。ちなみに、人がダンジョン内で死んだ場合でも、ダンジョンに吸収されるらしい。なかなか怖い場所だ。


「ラソマ伯爵!?」

「英雄がここに!?」


 たまにすれ違う人達に驚かれる。それでも声をかけられたわけではないので気にせずに進む。一本道ではなく、グネグネしている場所もあれば、複数に分岐している場所もある。俺の目的はダンジョン深くに行く事だから、下の階に行く階段を目指して進む。


「無いな…」


 階段を探し始めて体感的に1時間。まったく階段が見つからない。1階でこれならダンジョンってのは、かなり難しい場所だな。モンスターも素材価値が低いものばかりだから、倒し甲斐がないし。かと言って倒さないとずっと攻撃してくるもんな。


「よし、壁伝いに歩いていくか」


 それにしても、当たり前かもしれないけど、ダンジョンは迷路だな。子供の頃、遊園地とかで迷路に入った時は時間がかかり過ぎて係員の人が迎えに来てくれたっけ。そんな事が何回かあって迷路は好きだったけど、両親に止められた。入る度に迷子になられたら係員に迷惑をかけてしまうからな。

 そうして歩く事、数十分(体感)。ようやく、下り階段を見つけた。…長かった…。


 2階を歩いているとゴブリンに遭遇した。

 …またゴブリンか。儲けにならないし、早く3階に行こう。


 それから体感的に1時間、階段を探すけど見つからない。面倒なのが、1階への上り階段も見つからない事だ。瞬間移動ができなければ、俺はここで終わっていたかもしれない。

 ダンジョンが迷路になっている以上、俺はダンジョン攻略に向いていないのではないだろうか。自動でダンジョンの地図を作成できるようなスキルもないし。


 ………いや、待てよ?地図は作成できなくても、階段の位置なら透視を使えば分かるんじゃないか?壁を透かして見る事ができるなら…できた。上り階段と下り階段の位置が分かった。

 それから俺は下り階段の場所に瞬間移動する。これなら楽にダンジョンを進めるな。


 それからは同じ方法でダンジョンを進み、現在は10階に来ていた。

…ちょっと待て。ダンジョンの壁を透視できるなら、地面も透視できるんじゃないか?試してみるか。

 地面を透視した結果、下の階が見えた。さらにその階の地面も透視する事ができた。一気に最下層まで透視してみるか。結界スーツは張っているけど万が一を考えて、俺の事が周囲から見えなくなる結界を自分に張っておく。これなら魔物、それに冒険者からも見えない。もし見えたらぼーっと何もせずに立っている人だからな。

 さて、下を見て行くぞ。

 うーん、結構、階層が深いな。…っと、行き過ぎたか。これ以上は土が続くな。少し戻って…ここが最下層かな。広い空間だな。ドラゴンでもいるのか?………………いや、ドラゴンじゃないけど、中学生くらいの少年が立っている。冒険者かな?でも子供過ぎるか。いや、見た目で強さは判断できないし、もしかしたら強い魔法使いか、強力なスキルを持っているのかもしれない。周囲に人はいないし、1人で攻略したのか?


 ん?天井を見上げた?いや、俺を見ているのか?前に白龍と目が合った時と同じだ。少年はニヤリと笑っている。正直、不気味な笑顔だ。


『ここまで見える人がいるなんて珍しいね』


 声が頭の中に直接聞こえた。テレパシーか?


『僕の声が聞こえてるはずだ。返事をしてよ』

『…お前は何者だ?』


 テレパシーと同じように頭の中で話しかけてみる。


『このダンジョンの主、ダンジョンマスターだ』


 この少年がダンジョンマスター…いや、外見は少年でもダンジョンマスターだというのが本当だとしたら、少年ではないか。


『僕がいる最下層まで見える人は初めてだよ。きみもダンジョン攻略を目指してるんだろ?それなら早く来てよ。僕が相手をしてあげる』

『別に攻略を目的にしているわけじゃないんだけどね』


 強力な魔物を倒してお金にする為、いわゆる金稼ぎに来ているだけだ。まあ、いつかはダンジョンを攻略してみたいとは思うけど。


『つまらないね。だけどキミには闘う術が無いから、攻略を考えない気持ちも分かるかな』

『俺に闘う術が無い?』

『そうだよ。キミは地面を透かしているのか、遠くを見る事ができるのか、そういうスキルだろう?戦闘用のスキルじゃないよね』

『俺のスキルが戦闘用ではない、なんて決めつけて良いのか?』


 とは言っても本当に通用するか分からない。一応、試しておくか。

 近くに落ちている小石を最下層のダンジョンマスターの目の前に瞬間移動させて落としてみた。…うん、無事に成功したな。


『…何だ?今のは…小石?』

『成功したみたいだな』

『今のはキミが?いや、見るという行為に関連したスキルだよね?もしかしてスキルじゃなくて…魔法?それも複数の魔法を使えるなら、大魔法?』


 確かに大魔法ならそういう事もできそうだ。魔法に関して勉強した事はないから、どういった魔法があるのかは知らないけど。


『それなら簡単だ。この僕のいる空間では魔法が使えないようにすれば良い。そしたらキミが僕に攻撃する手段は無い』

『俺が魔法使いだと判断するのは早いと思うけどな。それよりも、わざわざその場に行かなくても、ここから武器を、例えば剣を直接、お前の体に移動させるというのもアリだな』


 実際はそんな事しないけどな。闘うなら実際に最下層に行ってみたいし。瞬間移動で今すぐにでも行けるけど。


 俺の言葉にダンジョンマスターは冷や汗をかき、さっきまでの余裕の表情が消える。


『キミはどういうスキルか魔法を持っているんだい?』

『教えるわけがない。とりあえず今の目的はダンジョン攻略じゃないから安心してくれ』

『………ふぅ…来ない事を祈るよ』


 そう言ったダンジョンマスターの姿が消えたので、俺も透視と千里眼を解除する。


「さて、もう少し下の階層に行って強い魔物を倒そうかな」


 その後の階層も弱い魔物ばかりだから精神的に辛かったけど、30階層に来た時、ダンジョンの作りが変わった。通路を含めて空間が広くなった。これは出現する魔物が大きくなる証拠か?単純に言えないけど大きい魔物の方が強くて、素材も高く売れる。

 通路を歩いている間は魔物が一切いなかったけど、広い空間に出ると、俺が待っていた光景だった。


「ドラゴンか!」


 前方に5匹のドラゴンがいた。大きさは高さ5メートルくらいだけど、天井も高いし、翼で空を飛ぶ事も可能だろう。ダンジョンの中なのに空って言い方もおかしいような気がするけど。


『どうだ!これならキミも勝てないだろう?』


 脳内に声が聞こえた。この声はダンジョンマスターか。


『お前の仕業か?』

『そうだよ。ダンジョンに出現する魔物は僕が操作できるからね。悪いけどキミは僕にとって脅威だからね。早めに潰させてもらうよ』


 ダンジョンマスターが個人を狙うとか…。でも高値で売れる素材が欲しいから、これは嬉しいかな。

 5匹のドラゴンは一斉にこちらを見ると、口を開けた。様々な色があるから、それぞれ別の属性のブレスをはいてくるのかな。と思っていたら、予想より早くブレスを放ってきた。5種類のブレスが俺を襲う。


『ハハハハハッ!どうだ!所詮、人間!ドラゴンのブレスを受ければひとたまりもないだろう!』


 ブレスで俺の姿を確認できないのか、ダンジョンマスターが上機嫌に笑う。実際は結界で一切ダメージがないんだけどな。


『なんだって!?』


 ブレスが消えて俺の姿が確認できたのか、ダンジョンマスターが驚きの声をあげる。


『どうして無傷なんだ!?』

『教える必要はないな。さて、せっかく素材が高く売れるドラゴンを出してくれたんだ。有り難く倒して素材を貰っていくよ』


 結界刃でドラゴンの首を切断して倒すと、異空間に収納する。


『なに!?ドラゴンが消えた!?』


 驚きっぱなしだな。さて、どうするか。

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