51.ダンジョンに行こう
雇う使用人が増えた事で、俺もますます頑張らないとな!伯爵になったけど、貴族としての仕事がないのは嬉しい。
「おはようございます。何かSランクの依頼はありますか?」
ギルドに着き、依頼がないかミオナさんに聞く。
「おはようございます。ありますよ。キングスコーピオンの討伐です。キングスコーピオン自体はAランクでも討伐可能なんですけど、今回はキングスコーピオンのみで群れを作っているんです」
「キング系のモンスターは普通、群れないですよね?自分より下のランクのモンスターで群れは作りますけど」
「そうですね、異常事態です。今のところ、街や村に向かっているという報告はありませんが、万が一の事があります。群れになっているとAランク冒険者でも難度が上がりますから」
「どれくらいの数がいるかは分かりますか?」
「いえ、数十匹は確実にいるんですが、多過ぎて数えられていないんです」
「分かりました」
その後、報酬と居場所など、詳しい情報を聞いた。
「この依頼、受けます。それでは行ってきます」
「行ってらっしゃいませ。気をつけてくださいね?」
「はい」
数十匹のキングスコーピオン討伐依頼を受けた俺は、早速、聞いた場所に瞬間移動した。
場所は王都から離れた荒野。スコーピオンというから砂漠かなと思っていたけど違った。千里眼で周囲を確認すると、依頼通り、たくさんのキングスコーピオンがいた。ちなみに遮蔽物がないから、透視は併用していない。
「さて、やるか」
まず俺は念動力で自分を上空に浮かばせる。10階建てのビルくらいの高さで、ここからなら全体が見渡しやすいし、俺も安全だ。ここまで飛ばすような遠距離攻撃は持っていないだろう。
地上にいるキングスコーピオンは俺の存在に気付いていない。数は53匹か。Aランク相当の魔物が53匹で群れているなんて、普通に考えたら地獄だな。
「まずは効率的な倒し方だな。頭部を切断してみるか」
そう考えて、1匹のキングスコーピオンの頭部を結界刃で切断してみる。そうすると、スコーピオンキングは動かなくなった。ふむ、頭部の切断は有効だな。体との境目が分かにくいが。
その後、残り52匹のキングスコーピオンの頭部も切断した。中には俺に気付いて攻撃してくる個体もいた。尻尾から針を飛ばしてきた事には驚いたね。スコーピオンっていうくらいだから毒があるだろうし。高さもあるから届かないだろうと思ったけど、届いた。まあ結界で防ぐから関係ないけど。
さて、素材回収をするか。素材を納品しないといけないわけじゃないけど、このランクのモンスターなら割と高く売れるからな。使用人も増えたし、稼がないといけないからな!
キングスコーピオンを異空間に収納して、ギルドに瞬間移動する。
「ただいま戻りました」
「お帰りなさい!大丈夫でしたか?」
「はい」
ギルドでミオナさんに報告をする。
「キングスコーピオンが53匹ですか…」
「やっぱり異常ですか?」
「異常です!本当にラソマさんが無事で良かった…」
「まあ、無傷で終わりましたから、心配しないでください」
と言っても心配するんだろうな。ミオナさんは良い人だし、特に自分が担当している冒険者の事は心配してしまうんだろう。魔王を倒せる実力があったとしても。
「それでキングスコーピオンの素材を買い取って欲しいんですけど」
「ラソマさんが素材を持ってくるのは珍しいですね」
「屋敷で雇う使用人を増やしたので、少しでも稼ぎを多くしようかな、と」
「貴族になると大変ですね」
そう言ってミオナさんは苦笑いする。
その後、ギルドにキングスコーピオンの素材を無事に買い取って貰えた。53匹分もあるから心配だったけど、状態が良かったから割高で買い取って貰えた。外殻は武器や防具、内臓は薬に使われるらしい。
「他にも依頼はありますか?」
「お金が必要なんですよね?」
「恥ずかしながら」
「それならダンジョンに行ってみてはどうですか?」
ダンジョンか。この世界にはダンジョンが幾つもある。大抵は地下に向かっているけど、出入口が山の麓にあると、山頂に向かっているものもある。
中にはモンスターが存在し、例外なく、進めば進む程、強力になっていくらしい。
宝箱もあるみたいだけど、誰が宝箱を用意してるんだろうか?謎だ。
「俺もそろそろ、ダンジョンに手をつけるべきですね」
「そうですね。ラソマさんなら深い場所まで行けるかもしれませんよ?ただ、ダンジョンには2人以上で挑んでほしいですが」
「1人でも大丈夫ですよ」
「万が一の事が起きた場合、2人以上いれば、それを報せる人ができますから」
例えば俺に何かあって動けなくなった場合、他の誰かが救援を呼びに行ったり、俺を担いで移動する事ができる。俺の結界があれば攻撃は受けないと思うし、例え動けなくなっても念動力で動いたり、瞬間移動で帰る事ができる。でもそれは慢心に繋がってしまうか。人を頼る事を覚えた方が良い時もあるし。
「分かりました。なるべく一緒に行く人を探してみます」
とは言え俺はSランク。一緒に行くにも同ランクの強者が良い。Sランクの知り合いか…レイラしかいないな。レイラなら、強いという事は知っているし。ただ高難度の依頼を受注した時ならともかく、ダンジョンに行きたいからという理由で誘うのは気が引ける。やっぱり最初は1人で行くか。
それから俺はダンジョンに行く為に、屋敷に帰った。アミス達にダンジョンへ行く事を知らせておく為だ。
「危険ではないですか?」
アミスが心配してくれる。
「たぶん大丈夫だよ。まあダンジョンに入ってすぐに瞬間移動ができるかどうか試してみるし、危険そうなら、すぐに帰ってくるから」
「分かりました。ラソマ様の強さを信じていないわけではないですが…それでも気をつけてくださいね」
「ああ、ありがとう。それじゃあ行ってくるよ」
「行ってらっしゃいませ」
さて、ダンジョンに行くか。目的のダンジョンは王都から1時間程歩いた場所にある。ミオナさんにダンジョンのある方角は教えてもらっているから、千里眼と透視でダンジョンを見つけると、その場に瞬間移動した。
ダンジョンの出入口は洞窟のようになっており、広さは大人が横に5人並べる程。高さは、窮屈さは感じないけど、長剣を振りかぶれるほどかな。剣士には嬉しいかもしれない。まあ、ダンジョンの先がどうなってるか分からない以上、楽観視はできないか。
人はあまりいない。
「おい、あれラソマ伯爵じゃないか?」
「そうだ、英雄ラソマだ!」
…人がいないわけじゃないから気付かれるよな。この世界にはテレビやカメラがないのにどうして俺の顔が知れ渡っているのか気になった事がある。理由はどうやら魔道具にあるらしい。魔道具で俺の姿を写し、それを特殊な魔道具によって見る事ができるようだ。その道具も一般的なものではなく、ギルドであったり、その他、人が大勢集まる場所に設置されている。
…指差されてるなぁ。まあ良いや、早く行こう。目立っても仕方がない。魔王を倒すという事を考えれば、目立たない事が有り得ないんだけど。
ダンジョンに入った。まずは瞬間移動ができるか、だな。取り敢えず、人がいない場所まで移動して…試すか。移動場所は屋敷の自室。ダンジョンの外に出て、再び目立つという事はしたくない。
…うん、無事に瞬間移動できたな。次はダンジョンの中に瞬間移動。勿論、人がいない事を確認する。…無事に成功。これで緊急避難ができる事は証明されたな。
よし、ダンジョンを進むか!




