50.新たな使用人
お待たせしてしまい、申し訳ありません。
「もし良ければ今度、お茶会に参加してくれませんか?お茶会と言っても、私と使用人しかいないですけど」
なんと、王女からお茶会の誘いがあった。
「喜んで。是非、参加させてください」
「分かりました!楽しみに待っていますね!」
「はい」
あまりにも王女が嬉しそうに言うのと、さっきまでの暗さが消えた事で安心した。
お茶会か…まあ社交辞令的な事かもしれないけど、あれば楽しみだな。
「今日のクリスは積極的だな。ラソマ伯爵を庇ったかと思えば、お茶会に誘うなど…今まで男を誘った事は無かっただろ?」
「そ、それは!兄様、勘違いしないでください!」
「ハッハッハッ!」
王子の言葉を受けて王女が恥ずかしそうにするけど、それだと余計に勘違いしてしまいそうだ。
その後は話が終わったので、俺は屋敷に帰った。そこでアミスとメルに伯爵に陞爵された事を伝えると驚かれた。無理もないな。
それからすぐ、俺はアミスとメルを屋敷に残して、父さんの屋敷に瞬間移動した。伯爵になったことを報告する為だ。
父さんは仕事が1段落して休憩しているところだった。
「父様、ただいま帰りました」
「…ラソマ…また何かしたのか?」
「え?」
「お前が帰ってくると、驚かされてばかりだからな。今回も何かあると思ったんだが」
その通りだ。王都から帰った時はいつも、爵位をもらった時だ。
「王都に再び、魔王が迫ってきていた事は知っていますか?」
「知っている。既に倒された事もな。今回も勇者は出陣しなかったそうだが………まさか、お前」
「はい、私が倒しました。でも今回は私1人ではなく、Sランク冒険者の方も一緒でした」
「その人は無事なのか?」
「はい」
「それなら喜べるな。その人が怪我を負ったり、亡くなっていたら本気で喜べないからな」
父さんは優しい。俺だけでなく、他人である冒険者の無事を心配している。
「その事で陛下に呼ばれました」
「…うむ」
「そこで褒美として、伯爵に陞爵して頂きました」
「…はぁ…お前は…これで俺と同じ爵位になったわけか」
「はい」
「公爵を目指しているのか?」
「まさか。魔王を倒した事で陞爵して頂いただけです。爵位を上げたい為に魔王を倒したわけではありません」
「そうだろうな。伯爵ともなれば、これから先は大変だな。まずは使用人を増やさなければな」
「今のままでも問題はないですよ?」
「体裁だ。他家の貴族から見て使用人が少ないと言うのは問題がある。今までも少な過ぎたが、伯爵ともなれば2人ではいかん」
「分かりました。考えておきます」
面倒だな。俺は別に領地経営もしていないし、結婚もしていない。そんなに数は必要ないと思うんだけど。でも他家が気にしてくるなら、対策として使用人を雇わないといけないか。本業は冒険者なんだけどなぁ。
その後は前回と同じように父さんの屋敷に泊まる事になった。勿論、アミスとメルには報告済みだ。母さん達に魔王を倒し、陞爵された事を報告したら驚かれた。
「今度は伯爵に!?凄いわね」
「ラソマはどんどん出世していくね」
「次は侯爵になるんですか?!」
母さんは驚き、兄さんは苦笑い、スィスルは次を期待してくる。
「いや、そんな簡単に陞爵されないよ。今回は魔王を倒せるから、勇者と同じ爵位にしようという考えがあっただけで、これ以上は上がらないと思う」
たぶん…。
「それにしても勇者はどうして出陣しないのかしら?」
「これで2度目だからな。1度だけなら体調が悪かったと考えられるが…」
勇者は目立ちたい為に人がたくさんいる場所、つまり王都で魔王を倒したいと考えている、なんて言えないなぁ。
「勇者には出陣してほしかったわね。母親としてはラソマが心配だもの」
「そうだな。私も心配だ」
「ラソマ、あまり無茶をしないでね?」
「はい」
「ちなみに今回、魔王との闘いは苦戦した?」
「いえ、してません。無傷で終わりました」
兄さんの問いに答えると、苦笑いされた。
「それでも心配だから無茶はしないでね?」
「善処します。ですが魔王が進撃してきて、勇者が出陣しなかった場合、私が出陣します」
「それは仕方ないか。国王陛下もラソマを対魔王の戦力として考えておられるだろうしな」
「でも自分から魔王を倒す為に魔族の領地に行く事はないので安心してください」
母さんは心配してくれるけど、俺はそう言うしかなかった。まったく…勇者のせいで母さんを心配させてしまったじゃないか。
その日は、そのまま実家に泊まり、翌朝、自分の屋敷に帰った。
「お帰りなさいませ」
「ただいま」
屋敷に入ると、アミスが出迎えてくれた。この時間ならメルは朝食の片付けだろうな。
「本日はどうしますか?」
「昨日は魔王を倒したし、明日から冒険者として活動を始めようかな」
「分かりました。ゆっくりしてくださいね」
「そうするよ」
今日はゆっくりしようかな。それに使用人を増やした方が良いともアドバイスされたし、どういう役割の使用人を雇えば良いかも考えないと。貴族としての仕事がないから、執事は要らないかな。やっぱり家事かな。特に掃除する人はもっと必要かもしれない。それで人が増えれば出す料理も増える。そうするとメルに負担がかかるから料理人も必要か。
アミスとメルは信用しているけど、新たに人を雇うというのは、同じ屋敷で住むわけだし、少し不安だな。結界スーツがあるから危害を加えられる心配はないんだけど。…初対面で、この人は信用できるなんて思える人の方が少ないよな。あまり深く考えずに、まずはどんな人がいるのか見ていくか。経験者である父さんに、どういう経緯で使用人を雇ったのか今度、聞いてみるか。
翌朝。俺は使用人の事を聞く為、父さんの屋敷に瞬間移動した。
「ラソマ、今日はどうしたんだ?魔王を倒したなんていう話は聞いていないが」
父さんの執務室で俺はそう言われた。確かに最近は魔王を倒した事以外で顔を見せた事は無かったけど…。
「違います。使用人の件で聞きたい事があるんです」
「そうか。雇う事に決めたんだな」
「はい」
それから俺は悩んでいる内容を話し、それに対して父さんは丁寧なアドバイスをしてくれた。使用人を雇う方法は大きく分けて3つ。使用人養成所の卒業生を雇う、気に入った一般人をスカウトする、奴隷を買う。一般人をスカウト、というのはメルが該当する。
この中で安全なのは養成所の卒業生を雇う事だと思う。スカウトしたいと思えるような人に出会える可能性は低いと思うし、奴隷購入も抵抗がある。
そういうわけで翌日、俺はアミスと共に使用人紹介所に向かった。そこは使用人養成所の卒業生を紹介してくれる。
「これは英雄ラソマ伯爵ではないですか!」
紹介所に入り、卒業生を紹介してくれる担当の男性に会うと、開口一番、そう言われた。
「こんにちは。うちで使用人を雇う事になってね。良い人材がいれば紹介してほしいんだけど」
「かしこまりました。すぐに書類を用意します」
結論を言うと、メイドを3人、料理人を2人、雇う事になった。全員、女性だ。別に男性がいても良かったんだけど、紹介してくれた人が女性ばかりを紹介してきたんだ。選ぶ基準は読心を使った。養成所を卒業してるから大丈夫だと思うけど、雇う側に悪意を持つ人もいるかもしれない。その点に注意して選んだ。
さて、俺の屋敷で雇う人間は7人になった。明日から一生懸命に金を稼がないとな。




