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49.残念勇者登場

 魔王を倒した俺はレイラと共に王都に帰り、ギルドに向かった。


「只今、帰りました」

「え?…ラソマ?」

「ラソマ子爵、どうしてここに?」

「終わったからだよ」


 ギルドに入るなり、中にいた全員が俺達の姿に驚く。俺は短く答えると、レイラと一緒にミオナさんのもとに向かう。


「ラソマさん、お帰りなさい。…あの、もしかして?」

「はい、2人で魔王を倒してきました」

「「「おおおおおっ!!!」」」


 俺の言葉に皆が歓声を上げる。


「ラソマ、私は何もしてないわ。足止めをしていただけよ。皆、魔王はラソマが倒したわ」

「別に言い直さなくても良いのに」

「駄目よ。情報は正確に伝えないと」


 まあ、そうだけど。魔王を相手に1人で足止めをしようとしただけでも凄いと思うけど。


「さすが英雄!」

「やっぱりSランクは違うな」

「俺達とは根本的に違うよな」

「何はともあれ、無事に事が終わって良かった」


 ギルド職員や冒険者達が口々にそう言う。

 でも俺は素直に喜ぶ事ができない。だって金の魔王が攻めてきた理由は、俺が火の魔王を倒した事による敵討ちだからだ。


「それではギルドマスターに報告してもらって良いですか?」

「分かりました」


 ミオナさんに言われた俺はギルドマスターに会いに行く。


「そうか。魔王を倒してくれたか。さすが英雄だな」


 ギルドの一室で、ギルドマスターが笑いながら言う。今、部屋には俺とギルドマスター、それにレイラがいる。最初、自分は倒していないと言って一緒に来ようとしなかったレイラだけど、当事者という事もあって断れず、来る事になった。


「そうだな。2人共、帰って良いぞ。ただし、城から呼ばれると思うけどな」

「私は行かないわよ?私がした事は勇者か、ラソマが来るまでの足止め。魔王を倒す手助けはしていないわ」

「んー………そうだな。分かった。冒険者ギルドとして、レイラが呼ばれても、行かないと報告しておく」

「ありがとう」


 レイラはたぶん勇者だから、あまり城に行きたくないのかな?もしかしたら、この国の勇者と遭遇するのが嫌なのかもしれない。

 その後、俺とレイラはギルドマスターの執務室から出て、それぞれ別の場所に向かった。俺は自分の家だ。


「ただいま」

「お帰りなさいませ!無事だったんですね!」

「よかったです!」


 俺が無事だったので、アミスとメルが安心してくれた。


「今回の魔王はどうでしたか?強かったですか?」

「いや、苦戦はしなかったよ」

「やっぱりラソマ様はすごいです!」

「普通なら考えられないですね」


 アミスは感激して、メルは苦笑いする。

 苦戦…か。やっぱり勇者でもないのに魔王を倒せるのは異常だよな。自分のスキルだけど、超能力というスキルが不思議でならない。


 翌朝。ギルドマスターの言葉通り、呼び出しを受けた俺は城に向かった。


「今回も魔王を倒してくれたそうだな。良くやった」


 謁見の間で陛下が褒めてくれる。謁見の間には他に、第一王子と第一王女、それに大臣がいる。


「今回の件、またしても助かった。この働きをもって、ラソマ子爵、お主を伯爵に陞爵する」

「おめでとうございます、ラソマ伯爵」


 陛下の言葉に第一王女が嬉しそうに言う。なんとなく想像してたけど、やっぱり陞爵されるんだな。


「ありがとうございます」

「これで予定通りだな」

「予定通り、というのは何ですか?」

「伯爵までは上げたかったのだ。魔王を倒せる勇者が伯爵相当の爵位を持っているからな」


 そう言えば、そうだったかな。


「だから、これから先は余程の事をしない限り、陞爵は難しいと思ってくれ」

「分かりました。伯爵にして頂いただけで十分です」


 話はこれで終わりかと思った時、謁見の間の扉が勢いよく開かれた。跪いていたけど、咄嗟に立ち上がり扉を見る。扉は跪いていた俺の後ろにあり、王様からは前方になる。

 扉の場所には2人の男性が立っていた。1人は近衛兵の鎧を着ている。


「申し訳ありません!私では止められませんでした!」


 近衛兵が謝る。普通は止めなければいけないけど、今回は相手が相手だからな。そう、謁見の間に、乱暴に入ってきたのは勇者の青年だった。


「ふむ。今は謁見の最中だが…何か用事か?」

「また魔王が殺されたっていうのは本当なのか?!」

「本当だ。ここにいるラソマ伯爵が倒してくれた」

「お前か!俺の邪魔をしているのは!」

「邪魔なんてしてないけどな」


 実際はしてる。この勇者は自分が目立ちたい為に魔王が王都に来る事を望んでいた。そこで人々のピンチを救いたかったみたいだ。


「そうだ、ラソマ伯爵は邪魔などしていない。むしろ、出陣しない勇者殿の代わりに魔王を倒してくれたんだぞ?」

「っ!俺は…俺は勇者だぞ!?」

「それがどうしたんだ?魔王を倒してこそ、勇者としての真価があるのだろう」

「ぐ…ラソマ!俺と勝負しろ!俺が勝ったらお前は王都から出て行け!俺の邪魔をするな!」


 俺が勝った時のメリットが何もない。


「いい加減にしなさい。勇者殿、魔王が王都に迫る中、貴方が何をしていたのか知らないとでもお思いですか?女性と一緒にいた事は確認済みです」


 王女は、いや、王も王子も知っていたのか。


「それがどうした!?姫さん、あんたは呼ばないから安心しろ!お前みたいな醜い女、頼まれても抱きたくないからな!」

「っ!」


 勇者の言葉に王女が悔しそうに黙る。…こいつ…最低過ぎるだろ。


「勇者よ!その発言は許せるものではないぞ!」

「許してもらおうなんて思ってないさ。例え許せなくても俺を罰する事はできないだろ?何せ、俺は勇者だ!魔王を倒せる唯一の存在!俺がいるからこそ、この国は平和なんだ。違うか?」


 勇者は両手を横に広げながら大層に言う。


「少し違うな。お前は魔王を倒せる存在だが、魔王を倒した事は無い。しかし、ここに勇者でもないのに、実際に魔王を倒した人物がいる。どちらが国にとって有益なのか、抑止力として成果を出しているかは考えなくても分かるだろう?勇者の肩書を持つお前は重要だが、しかし実際に魔王を倒せるラソマ伯爵も重要な人物だ」

「…ちっ」


 勇者は舌打ちをして謁見の間から出て行った。


「はぁ…ラソマ伯爵よ、残念ながら、あれが我が国の勇者だ」

「はい…」


 本当に残念だ。まあ前から知ってたけど、今回のやり取りでますます残念になったな。


「王女殿下、大丈夫ですか?」

「面と向かって言われた事は無いですけど、皆さんがああいう風に思っている事は知ってますから」

「私が以前、言った言葉を覚えていますか?」

「勿論です!とても嬉しかったです」

「今もその考えは変わってません。王女殿下は魅力的な方だと思っています」

「あ、ありがとうございます」

「ふむ。父親である余の前で口説くとは、なかなかの度胸だな」


 国王は口説いていると思ったらしい。いやいや、勇者が酷い事を言うから落ち込まないように声をかけただけだよ。と言うか、親の前で口説いたりはしない。俺はそこまで度胸はない。


「お、お父様、今のは、その」


 王女は慌てているけど、たぶん国王は俺が王女を気遣って言ったのだと分かってるな。笑ってるし。


「もうラソマ伯爵がいれば、良いんじゃないですか?魔王が来ているのに出陣しない勇者、そして俺の妹に酷い事を言う勇者…要らないのでは?」


 王子がそんな事を言う。


「そうはいかん。あれでも魔王に対しての抑止力になっておるし、いなくては他国にも示しがつかんからな」

「今代の勇者は残念、と諦めるべきか」


 納得はしていないけど、王子はそう言って言葉を終わらせた。

 なんだか大変だな。どういう性格の勇者が良い、とか選べないからな。


「それにしても何故、こうも立て続けに魔王が襲ってくるのか…」

「それは私のせいです」


 国王の疑問に俺は正直に答える事にした。


「そうか。金の魔王は復讐の為に来たのか」

「はい。ですから、金の魔王の襲撃は私の責任です」

「お父様!ラソマ伯爵は悪くありません!」

「クリス、分かっている。火の魔王を倒していなければ、国に被害が出ていたからな。ラソマ伯爵を責めるつもりは無い」

「ありがとうございます」


 国王は許してくれた。良かった。


 それから伯爵になる事に際し、必要な事項などの説明を受けた。


「あ、あの、ラソマ様。お願いがあるんですけど」


 話が終わり、そろそろ帰る頃かと思った時、王女が声をかけてきた。

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