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48.レイラの秘密

 魔王が進軍しているという情報を聞いた俺がギルドに行くと、冒険者で賑わっていた。


「おはようございます。もう情報は来ているみたいですね」


 受付のミオナさんに挨拶をしながら聞く。


「はい。また魔王です」

「期待はしてませんが、勇者は出陣したんですか?」

「していません」


 あの勇者…本当に勇者なのか?…いや、以前の事があるからと言って、今回も同じとは限らない。

 現在の勇者の状況を見てみる。………うん、前と同じだな。部屋のベッドで女と…前とは違う女だな……それで魔王が王都に来るのを待っている。最低だな。


「どうしたんですか?」

「え?」

「いえ、少し顔が怖かったので」


 勇者に対しての苛立ちが顔に出てしまったようだ。俺は何でもないと言ってはぐらかす。


「勇者が行かないのであれば、今度も俺が行ってきます」

「そうですか。ただ…レイラさんが魔王討伐に向かいました」

「レイラが?」

「はい。可能であれば倒してくるらしいです。倒せない場合は勇者が来るまでの時間稼ぎをすると言っていました」


 レイラの実力はこの前、少し見た。剣技もあるし、魔法もある。それにSランクだ。とは言え、勇者にしか魔王は倒す事ができないと言われている。どういう理屈か知らないけど、勇者でないのなら倒すのは難しいかもしれない。

 勇者でもないのに魔王を倒した俺が言っても微妙だけど。


「とにかく俺も行きます。レイラと一緒に魔王を倒してきます」

「おう!英雄の出陣だ!」

「英雄ラソマ!」

「ラソマ子爵!」


 周囲にいた冒険者やギルド職員が歓声を上げる。でもミオナさんは心配しているような顔をしている。


「大丈夫です。無事に倒して帰ってきますから」


 いや、これだとフラグみたいだな。


「前にも倒してますから、その時に比べれば気持ちは楽じゃないですか?」

「そうでもないです。魔王と言えば勇者にしか倒せない恐怖の象徴ですから」

「まあ、そうですよね。でも俺は行きます」

「はい、それも分かっています。心配ですが、ラソマさん、どうかよろしくお願いします」

「任せてください!」


 ミオナさんも本当なら俺を、いや、俺やレイラを止めたいだろうな。それもこれも勇者が悪い!おかしな考え方をせずに魔王に勝負を挑んでいれば誰も悲しまずに済むんだ!まったく…。

 まあ勇者の件はさておき、俺はギルドから出ると、レイラのいる場所を確認して瞬間移動する。と言ってもレイラのすぐ近くには移動しない。千里眼で見たところ戦闘中だから、近くに瞬間移動して驚かせてしまってはいけない。だから少し遠くに瞬間移動する事にした。


 瞬間移動した場所は森の中。そこから先の方に開けた場所があり、そこで魔王と思われる魔族とレイラが睨み合っている。俺は透視で視認しているから、逆にレイラ達から俺の姿は見えていないだろう。ここから声をかけながら近づけば驚かれる事はないはずだ。

 気になるのが、レイラの状態だ。レイラの全身には白い靄のようなものが纏わりついている。


「貴様には関係ない!」


 魔王がレイラに向かって怒鳴る。


「我は火の魔王を倒した人間を殺しに来たのだ!」


 それって俺の事か?


「関係ない。魔王が現れたら倒すだけよ」

「俺は人族の国を攻めに来たのではない。火の魔王を殺した人間だけが標的だ。その者を差し出せば、他の人族には手出しをしない。だから手を引け、勇者よ」

「私は勇者じゃない!」

「いや、勇者だろう。その白いオーラが証拠だ。それに魔王である我に傷をつけたではないか」


 そう言って魔王は腕にある傷を見せる。浅いが切り傷ができていた。


「勇者でなくても魔王を倒す事はできる。それは火の魔王の件で証明済みよ」

「だが、貴様は勇者だ。魔王である我が間違えるわけがない」


 話がおかしいな。レイラが勇者?勇者は1つの国に1人だし、この国の勇者はあの男だ。レイラのわけがない。でも魔王に傷をつけているのも事実。いや、俺は勇者ではないのに魔王を倒してしまっているけど。

 それなら嘘か?でも魔王がそんな嘘を吐いても仕方がない。


 そんなふうに考えながら進むと、俺は開けた場所に出た。そう、レイラと魔王が闘っている場所だ。


「ラソマ!?」


 俺の登場にレイラが驚く。ちなみに俺は2人の横から出た場所にいる。


「誰だ?貴様は」

「お前は火の魔王を倒した人間を探してるんだろ?俺がそうだ」

「そうか!お前が!!」


 俺の言葉に魔王は怒鳴る。


「あのラソマ、もしかしてさっきの会話、聞いてた?」

「…ああ、聞いていた」


 だから、この魔王の目的が俺だと分かったんだしな。


「そう…あとで話すから、今は聞かないでもらえる?」

「当然だろ。魔王がいるんだ。のんびり話さないさ。それに話したくないなら、話さないでも良い。嫌がるレイラから無理に聞こうとは思ってない」

「…ありがとう」


 誰にでも秘密はある。少し気になるけど、無理矢理聞きたいわけではない。


「貴様ら、我を前にして余裕だな。生きて帰れると思っているのか?」

「さっき言っていただろ?俺を殺せれば他の人間には手出ししないと。それなら少なくとも、レイラは生きて帰れるだろ」

「そうだな…我の目的は貴様を殺す事のみ。他の人間に興味はない」

「そうか。ちなみに俺を殺したい理由は火の魔王の復讐か?」


 俺の言葉に魔王は怒りの形相で俺を睨む。


「そうだ!あいつとは一緒に遊ぶ仲だった!植物の魔王の領地に行って植物を燃やしたり、植物の魔族共を殺したり、いたぶったり、そういう楽しい事を一緒にする仲だった!俺達はいつもそうやって笑い合ってきたんだ!」


 …最低なんだけど。他の魔王の領地に行って暴れていたのか。


「それは同情できないわね。今までのツケがまわってきたんじゃないの?」

「何だと!?」


 レイラの言葉に魔王が怒鳴る。


「ところでお前は何の魔王なんだ?」

「金よ」


 レイラが答えてくれる。


「金?お金か?」

「いいえ、金属よ」


 成程、金属か。


「それじゃあ、レイラ。倒してくるよ」

「私は一緒に闘わなくて良いの?」

「俺が狙いみたいだからな。その前に魔王の後ろにいる魔族達を何とかしておくか」


 まず全員が逃げられないように結界を張る。そうして結界刃を千人近くいそうな魔族に向けて横から放つ。千里眼で上空から魔族の軍勢を見ているので、その量に合わせた大きさの結界刃にした。その一撃で魔族の軍勢は横薙ぎに一刀両断された。


「…今のは何だ?」


 魔王が聞いてくる。


「答えると思う?」


 結界刃は魔王でも気配で察する事ができるレベルだ。ただの魔族に察知する事はできない。


「何かが横から飛んでいったわね」

「レイラにも分かるのか?」


 さすが(おそらく)勇者だな。魔王と同じ、特別な存在だから、感知する事ができたのかもしれない。


「我の手下共が簡単に殺されるとは…火の魔王を殺しただけはあるな。だが、我はそう簡単にいかんぞ!」


 そう言って魔王は片手を前に出し、掌を俺に向ける。掌の前にはドリルのような形状のものが出現し、回転し始めた。そうして俺に向けて射出した。この世界にドリルの概念があるのか。

 ドリルは俺に向かってくるが、前方で結界に阻まれて消えた。


「馬鹿な!?」

「今のは魔法?でも魔力の動きが無かったけど」

「魔法じゃないからね」

「これならどうだ!」


 魔王が怒鳴ると、複数のドリルが出現する。そして俺に向けて射出された。でも、その全ては結界によって防いだ。


「防御で精一杯か!」


 魔王は笑うが、そんな事はない。でも確かに防いでばかりだとつまらないな。俺は魔王が続けて射出してくるドリルの1つを念動力で自分の支配下に置くと、魔王が回転させるよりも速く回転させ、魔王に向けて射出する。魔王は驚いたけど、防御魔法によって防ぐ。


「この程度では驚かんぞ!」

「…ねぇ、私も手伝った方が良い?」

「ん?大丈夫だ」


 ドリルは俺達を地面以外の全方位から囲むように出現した。それを見て、レイラが聞いてくるけど、数が増えても威力が同じなら問題ない。

 俺は結界弾で魔王の腕を撃ち抜く。


「ぐっ!?」


 結界弾が腕を貫通した魔王は呻く。やっぱり結界での攻防が有効だな。ドリルは防がれたからな。

 魔王は集中力を欠いたと思ったけど、ドリルは消える事もなく、回転して俺達に向かってきた。しかし結界によって全てのドリルを防ぐ。


「終わりだな」

「我がこうも簡単に負けるのか…」

「敵討ちなんて考えなければ良かったのにな」


 そう言って俺は念動力で魔王の動きを封じると、結界弾を魔王の頭部に向けて放った。結界弾は防がれる事なく、魔王の頭部を貫通し、念動力を解くと魔王は倒れた。読心を使ってみるけど、確実に魔王は死んでいる。


「…本当にすごいわね。勇者でもないのに魔王を倒すなんて。それも、こんなにあっさりと」

「まあな。最初、魔王を倒した時は俺も驚いた。とにかく王都に帰ろう。ギルドに報告しないと」

「そうね」

「瞬間移動で送るよ」

「お願い」


 それから俺とレイラは瞬間移動で王都に帰った。

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