45.レイラと冒険
「何!?火の魔王が殺されただと!?」
「は、はい!」
とある場所、火の魔王が殺された事に男は驚愕し、激怒していた。
「勇者に殺されたのか?」
「いえ、それが…」
「違うのか?誰だ?」
「人族の冒険者です」
「冒険者だと?勇者ではないのか?勇者でもないのに魔王を倒すなど…本当なのか?」
「はい、間違いありません」
「そうか…あいつは俺の友だった………そいつが居る国はどこだ?」
その頃、ラソマはギルドで依頼を受けて、ドラゴン討伐の為、山に来ていた。
「やっぱりSランクになると、ドラゴン討伐の依頼が多いな」
まさかドラゴンの繁殖率が高いとは思わなかった。イメージだと、ドラゴンは稀少だから繁殖率は低いと思っていた。繁殖率が高い割に素材価値は良くて、売れば高いし、武器防具にすれば優秀な物が作れるらしい。
そのぶん、討伐が大変だから素材が一般市場に出回る事は少ない。大抵は国が使うか、国交の材料に使うらしい。俺みたいに討伐した人は依頼内容によるけど、ドラゴンの素材を多少は自由にできる権利がある。
…まあ、ほぼ売るけど。牙だったり爪は屋敷に飾りたいな。頭部の剥製も良いと思ったけど、その話を聞いたアミスとメルが怖がったから止めておく。
「さて、目当てのドラゴンはどこかな、と」
透視プラス千里眼を使って周囲を見回し、目的のドラゴンを発見する。瞬間移動をし、ドラゴンの前に立つと、結界刃でドラゴンの首を切断する。そうして呆気なくドラゴンの討伐は終わった。
「…このスキル、強過ぎないか?いや、弱いよりは良いけど」
俺の結界刃、誰か防げる人や魔物はいるんだろうか?………驕りは駄目だな。防がれた時に狼狽えてしまう。結界刃を防がれた時にどうするか、その対策を考えないと。防ぐ事はともかく、見えないはずなのに魔王は避けたからな。
「帰るか」
俺は王都に帰る事にした。
瞬間移動で王都に帰り、ギルドには歩いて行く。ギルドにも瞬間移動で行こうと思ったけど、今はまだ昼過ぎ。報告を急ぐわけでもないし、ゆっくりと歩いて行こうと思った。
「おい、見ろ。あれがラソマ男爵か…」
「馬鹿!今回の件で子爵になられたんでしょ!」
「そうだったな。すごいよな」
街を歩いていると、そんな会話が聞こえてくる。
「英雄か…カッコイイな」
「俺も英雄になりたい」
「お前は無理だろ!」
そんな会話も聞こえる。英雄って何だろうか。会話の流れからして…俺?
理由は見当がつくけど、魔王を倒した事か?自分の知らないところで異名がついていた?…いや、確認してからにしよう。もし俺の勘違いなら恥ずかし過ぎる。
そして俺はギルドに着くと、ミオナさんのもとに向かう。気のせいか、俺がギルドに入ると、ミオナさんのいる受付に行こうとしていた冒険者が別の場所に移動した。お陰で、すぐに受付に行く事ができた。
「お帰りなさい」
「ただいま帰りました。ドラゴンは問題なく討伐しました」
「さすが英雄ですね」
ミオナさんが微笑みながら言う。
「あの、英雄って何ですか?」
「あれ、知らないですか?魔王を倒した事でラソマさんは英雄という二つ名がついたんですよ」
やっぱり英雄とは俺の事だったか。
「でも俺の二つ名なのに、俺に報告というか、そういうのはないんですね?」
「二つ名は周囲が勝手に言う事なので…ラソマさんが嫌だと言っても、英雄と呼ばれると思います」
「まあ嫌じゃないから良いんですけど、嫌な二つ名をつけられたら嫌ですね」
例えば臆病者とかな。それは二つ名ではなくて悪口だろうけど。
「本人が嫌がるような、悪口のような二つ名はつきません。皆、二つ名は尊敬できる人にしかつけないので」
「そうなんですか」
いろいろなルールがあるんだな。そうか…俺が英雄か。嬉しいけど、少し恥ずかしいな。
その後、依頼成功の手続きであったり、素材をどうするかなどを話す。欲しい部位以外は売る事にする。スキルが超能力だから、武器や防具が要らないんだよな。
「それでは、これからどうしますか?」
「そうですね…」
まだ時間も早いし、次の依頼を受けるか。
「英雄はすごい人気ね」
「レイラ、久し振りだな」
Sランクのレイラが声をかけてきた。
「ラソマもSランクになったのよね?それなら私と一緒に依頼を受けるのはどう?」
「良いのか?」
「ええ。たまには誰かと組んで依頼を受けてみたいし」
「仲間はいないのか?」
と聞いてみたけどいないと思う。Sランクにもなると、余程難しい依頼を受けない限りは単独で成功させる事ができるからだ。
「いないわ。でもたまには誰かと一緒に依頼を受けてみたいと思ったの。まあ、ラソマが忙しいなら構わないわ」
「いや、行くよ。他のSランクの実力を見ておきたいし」
「それじゃあ、ミオナ。この依頼をラソマと受けるわ」
「はい……え!?この依頼ですか?!」
「ええ。私とラソマなら問題ないでしょ?」
「確かにそうですけど…まさかこの依頼を受けてくれる人がいるとは思いませんでした」
「難度の割に報酬が安いものね。その依頼主なら文句も言えないし」
「誰が依頼主なんだ?」
「国よ」
国が直々に依頼してくるのか!驚いてしまうな。でも、確かにそれは文句が言えない。
「依頼内容と報酬は?」
「内容はドラゴンの群れの討伐。数は不明。素材は出来る限り持って帰ってくる事。報酬は国からの感謝と素材が少しね。金額の方はSランク冒険者に頼むのだから多いわ」
それはまた…随分と受ける人が少なそうな依頼だな。そんなものをレイラは受けるのか。
「私が受けるのが不思議?」
「え?まあな」
「このドラゴンの群れがいる場所の近くに村があるんだけど、そこに私の知り合いが住んでるの。放っておけないじゃない」
「優しいんだな」
「…私、別に優しくないキャラでいるわけじゃないから、そこまで意外でもないわ」
「分かってるよ。意外なんて思ってないし、普通に感心しただけだよ」
「そ、そう…」
そう言うと、レイラは納得してくれたようだ。
「それでどうする?ラソマにとっては何の関係もない村だとは思うけど」
「勿論、受けるよ。断る理由がないからね」
「そう。それならミオナ、手続きお願いね」
「分かりました」
そうして俺はレイラが紹介してくれた依頼を受ける事にした。ドラゴンの数が気になるけど、俺の結界なら攻撃も防げるだろうし、万が一の事態が起きても瞬間移動で逃げる事はできるだろう。
「それじゃあ行くわよ」
「ああ」
「行ってらっしゃいませ。気をつけてくださいね」
ミオナさんの言葉を背に俺達はギルドを出る。
「それじゃあ瞬間移動で現地まで移動するけど、良いか?」
「ええ、良いわ。瞬間移動を体験できるなんてラッキーね」
「レイラなら、瞬間移動の魔法は経験してるんじゃないのか?」
「してないわよ。そんな簡単な魔法じゃないし」
そうなのか。Sランクにもなれば、そういう事は経験していると思った。
「それじゃあ、レイラからすれば初体験になるのか」
「そうね。瞬間移動の初体験ね」
言い直した意味はあるのか?
「ドラゴンのいる場所は?」
「向こうに見える山よ」
レイラの指差した方向にはうっすらと山が見える。かなり遠いな。
「でも王都に近い場所にドラゴンが大量にいる山があるんだな」
「普段はいないのよ。だから異常なの」
「その原因は突き止めなくて良いのか?」
「調べる方法があるなら突き止めた方が良いけど、私達への依頼内容は、あくまでも討伐。調査は依頼内容に入っていないし、調査したとしても何も出ないと思うわよ」
「そうなのか。それなら討伐依頼だけに集中するか。移動するぞ」
「ええ」
行く事をレイラに伝えてから瞬間移動する。心構えをしてもらうためだ。
さて、ドラゴンの群れを討伐してくるか!




