44.子爵になった報告
俺は子爵になった。
「ありがとうございます」
爵位が上がった理由は魔王を倒した事だろうけど、偉業だとは思うけど、それ程の事なのか?
「お主が不思議に思うのも分かる。しかし魔王を倒すという事はそれだけ凄い事なのだ。だから勇者には伯爵の爵位を与えている」
「そうだったのですか」
「本当ならお主も伯爵にするべきかもしれないのだが、勇者ではないのに、いきなり伯爵にするわけにもいかんからな」
「次に何かしらの功績をあげれば伯爵に陞爵する事ができるのではないですか?」
「その通りだな」
いや、別に子爵でも十分に良いんだけど。別に爵位が欲しくて魔王を倒したわけじゃないからな。とは言え、断る事は礼儀に欠ける。有り難く子爵の件は受けよう。
そうして謁見は終わり、俺は屋敷に帰った。
「お帰りなさいませ。謁見は無事に終わったのですね?」
「ああ」
帰ると、アミスが出迎えてくれる。
「魔王を倒した功績を認められて、子爵に陞爵されたよ」
「す、すごいです!それでは今日はお祝いですね!」
「そうだね」
アミスの言葉に微笑む。
それからすぐにメルにも俺が子爵になった事が伝えられ、夕食はお祝いの席になった。
「明日は朝から実家に帰るよ。子爵になった件を父さんに報告しないといけないからね」
夕食が終わり、団欒している時に俺はアミスとメルに伝えた。こういう団欒の時には2人にも寛いでもらうようにしている。とは言え、使用人の立場で精神的に難しいかもしれないけど、そこは慣れていってもらうつもりだ。無理強いはしないから本当に嫌なら強制はしない。でも、俺は2人を家族のように思ってるから時間があるなら一緒にいたいんだよな。
ちなみに2人は嫌そうな顔をせずに一緒にいてくれる。それが本心なのか使用人の務めなのかは分からない。読心を使えば分かるけど、そこまでしたくないし。
「実家に帰ったら、夜は帰ってこないかもしれない」
「そうですね。おそらくパーティーになると思いますし」
「本当なら夕方に帰ってきて、アミスとメルと一緒に過ごしたいんだけどね」
俺の言葉にアミスとメルは嬉しそうな顔をする。
「どうなるか分からないけど、夕飯までにはどうするか話すよ。瞬間移動を使えば一瞬だしね」
「ふふ、そうですね」
さて、明日は実家に帰らないといけない。早めに寝ておくか。
翌朝、アミスとメルに挨拶をしてから、実家に瞬間移動する。勿論、屋敷の中に瞬間移動する無礼は働かない。門を通って玄関に行く。
「ラソマ様、お帰りなさいませ」
「うん、ただいま」
使用人が出迎えてくれる。
「父さんに用事があるんだ。部屋に行って良いかな?」
「勿論です。旦那様は今、執務室にいらっしゃいます」
「分かった、ありがとう」
お礼を言うと使用人が俺に頭を下げる。俺は父さんがいる執務室に向かった。
「失礼します」
「ラソマか?入れ」
「はい」
執務室に入ると父さんがいた。他には誰もいない。
「今日はどうしたんだ?」
「王都に魔王が攻めてきたのは知っていますか?」
「勿論だ。だが魔王は倒されたんだろう?…まさか…お前…」
「はい。私が魔王を倒しました」
俺の言葉に父さんは驚く。
「お前、超能力者であって、勇者ではないだろう?そもそも勇者はどうしたんだ?勇者の横から手柄を横取りした、とかではないよな?」
「はい。勇者は出撃しませんでした。その事で陛下もお怒りになっていました」
「魔王が来ているのに勇者が出撃しなかった?…一体どうして」
「それは分かりません」
本当は知ってるけどね。観衆がいる中で颯爽と駆けつけピンチを救い、魔王を倒す。そんな勇者になりたかったようだ。まったく…そんな事をしたら死傷者が出てしまうかもしれないというのに。
「とにかくお前が無事で良かった」
「心配をおかけしました」
父さんが本当に安堵した表情をしている。確かに勇者でもないのに魔王に挑んでしまうなんて、ましてやそれが息子なんだから心配させてしまったな。
「今日はその報告に来たんだな」
「もう1つあります。魔王を倒した事で陛下から褒美を頂きました」
「褒美?嫌な予感がするな」
「子爵に陞爵されました」
「子爵だと!?」
予想通りの驚きだな。
「お前は何をするつもりなんだ?」
「私は何も…ただ魔王を倒せる勇者には伯爵相当の爵位を与えているそうなので、同じように魔王を倒せた私にも相応の爵位を与えてもおかしくはないと判断されたようです」
「確かに勇者は伯爵相当の爵位はあるな。それにしても魔王を倒し、子爵になるとは…我が子ながら驚きの連続だな」
そう言って父さんは苦笑いする。俺も子爵になるとは思ってなかった。
「それから、これは冒険者としての話なんですけど」
「なんだ?」
「今回の件で、Sランクになりました」
「Sランク!?……ふぅ、今日は驚きの連続だな。まあ、魔王を倒せる実力ならSランクでも不思議はないか。おめでとう、ラソマ。貴族としても冒険者としても大出世だな」
「ありがとうございます」
「それで、今日は泊まっていくだろう?」
「そうですね。母様達にも報告したいです。報告してすぐに王都に帰るというのは、少し寂しいので」
「それはそうだな。何より、母さんが悲しむだろう」
そういうわけで、俺は父さんの屋敷に泊まる事になった。その事を報告する為に王都の自分の屋敷に一度帰る。アミスとメルに、実家に泊まる事を話さないといけないからだ。
「ラソマ様、お帰りなさいませ」
屋敷に戻るとアミスが出迎えてくれる。
「うん、ただいま。でもすぐに実家に帰らないといけないんだ」
「ご実家に泊まられるんですね?」
「うん。夕食も実家で食べるよ。アミスがいなくて寂しいけどね」
「な、何を仰るんですか……でも私もラソマ様がいなくて寂しいです」
アミスは頬を赤く染めながら言う。
「ラソマ様のお帰りを心待ちにしていますね」
「うん。俺もアミスに会えるのを楽しみにしてるよ。…ところで、メルはどうして扉の前に立っているの?こっちに来たら良いのに」
俺達がいる場所は玄関だが、近くにある扉の前にメルが立っていた。
「い、いえ、なんだか入ってはいけない雰囲気でしたので」
そう言いながらメルが俺達の傍に近づいてくる。
「そう?」
そんな雰囲気だったかな。まあ、いいか。
「それじゃあ、実家に帰ってくるよ。明日には帰ってくるから」
「分かりました」
「行ってらっしゃいませ」
2人に報告すると、今度は実家に瞬間移動する。本当に瞬間移動は便利だ。
その後、実家に帰った俺は夕飯を実家で食べる事を話した。
夕食の席では、俺が子爵になった事と、冒険者としてSランクになった事を話した。
「ラソマ兄様、魔王を倒して、子爵にもなるなんて凄いです!」
「魔王に勝ってしまうなんて…勇者でもないのに勝てた事でラソマが面倒事に巻き込まれなければ良いけど」
スィスルは本気で感心してくれて、兄さんは俺を心配してくれている。
「ラソマ、あまり無茶はしないでね?勝てたから良いけど、もしも魔王に倒されたらと思うと心配で…」
母さんが不安そうに言う。魔王に倒されると言う事は殺されるって事だからな。母さんとしては息子の俺が殺されるなんて嫌だろう。こんな風に母さんが不安になってしまうのも勇者のせいだな。勇者が真面目に出陣していれば俺が魔王と闘う事なんてなかったんだから。
「分かりました。今後、なるべく無茶はしないしようにします」
「ラソマは冒険者になったんだ。多少の無茶は仕方がないだろう。ただ命の危険があった時には、その状況からすぐに逃げるんだ。危険から逃げる事は恥ではないからな」
「はい」
その後はお互いの近況を話しながら、ゆっくりとした時間を過ごした。
翌朝。俺は皆に挨拶をしてから自分の屋敷に瞬間移動した。
「ただいま」
「「お帰りなさいませ」」
屋敷に戻った俺にアミスとメルが返事をしてくれる。さて、魔王も倒したし、また普通の冒険者生活を始めるか!




