43.報告と陞爵
遅くなってしまい、申し訳ありません。
さて、魔王も倒したし、ギルドに帰って報告するか。俺はギルドに瞬間移動し、ミオナさんのもとに向かう。
「え?ラソマ…さん?」
「ただいま戻りました」
「無事に帰ってきてくれた事は嬉しいですけど、魔王はどうしたんですか?」
「倒しましたよ」
俺の言葉にギルドがざわつく。
「え?魔王を倒したんですか?!」
「はい。草原に誰かに行ってもらえば確認が取れると思います」
「そんな…勇者にしか魔王は倒せないはずなのに………もしかしてラソマさんは勇者ですか?」
ミオナさんの質問に周囲の冒険者が息を呑む音が聞こえる。
「いえ、違います。スキル名は勇者ではないです」
超能力者だからな。そもそも1つの国に1人しか勇者は存在しないという決まり事がある。勇者はスキル名だけど、そのスキルの持ち主は各国に1人ずつしか存在しない。この国には、あんな性格だけど勇者がいる。だから俺や他の人が勇者になる事はあり得ない。
「そうですか。でもどうして勇者でもないのに魔王を倒す事ができたんでしょうか?」
「俺も分かりません。倒せた、としか」
「まだ魔王の死を確認していないですけど、確認が取れればラソマさんは英雄ですね!」
「それは少し恥ずかしいですね」
ミオナさんの言葉に俺は苦笑いする。
「この雰囲気…もしかして解決したの?」
俺達が話していると、そこにSランク冒険者のレイラが現れた。
「はい。まだ確認は取れてませんが、ラソマさんが魔王を倒してくれました」
「ラソマ、勇者なの?」
ミオナさんの説明を聞いたレイラが俺に聞く。
「いや、違うよ」
「まあ、そうよね。この国には勇者がいるんだし、ラソマが勇者だと常識が崩れるわね。でもそれだとどうして魔王を倒せたのかしら」
結局、その疑問に辿り着くんだよな。でもその疑問の答えは分からない。
その時、ミオナさんが通信用の魔道具を使い、そしてこちらを見た。
「今、確認が取れました。ラソマさんの証言通り、火の魔王の死亡が確認されました」
「すげー!」
「本当に倒したんだな!」
「前の魔族の時の活躍もそうだし、ラソマ、本当に凄いな!」
皆が喜び合う。俺の言葉だけだと本当に魔王の脅威が消えたのか分からないからな。
「また私の出番は無しか」
「今度はもう少し待っておこうか?」
「良いわよ。国の危機は早く解決させた方が良いに決まっているもの」
俺の冗談にレイラは苦笑いしながら答える。
「あとは魔王達の死体の処分だけど、それは冒険者の皆に任せても良いんですよね?」
「はい、任せてください」
「さて、問題も解決したし、家に帰ります」
「もう帰ってしまうんですか?」
「メイド達に無事に帰った事を報せないと心配するので」
「ふふ、ラソマさんは使用人の方々を大切に思ってるんですね」
「勿論です。家族みたいなものですから」
「ラソマは変わった考えをしているのね」
「レイラ?」
「普通は使用人を家族として扱わないし、大切にもしないもの」
「そんなものなのかな」
「でも大切にしないより、大切にしている方が好感は持てる」
レイラが微笑みながら言う。
「それじゃあ、無事に帰った事を報せてくるよ」
「待った!まずは、俺に報告してくれ」
ギルドマスターに声をかけられ、俺はギルマスの執務室に向かい、そこで魔王を倒した状況を報告した。その際、俺が倒した魔王は、火の魔王だという事も分かった。
この世界には魔王が、知られているだけでも9人いて、それぞれ得意な魔法がある。俺が倒したのは火魔法が得意な魔王だ。
「それにしても、勇者でもないのに魔王を倒してしまうとはな。…本当に勇者ではないんだよな?」
「違います。俺のスキルは勇者ではないですよ」
「そうか…勇者でもないのに魔王を倒す…これは色々と問題が起きそうだな」
「そうですか?」
「ああ。世間の常識が壊れたわけだからな。お前のスキルが関係しているのか、それとも魔王が弱っていて勇者でなくても倒せるようになったのか…色々と要因はあると思うが、何が正解かは分からないからな」
「そういう理由を考えるのって大変そうですね」
「原因の1つはお前だけどな」
俺とギルマスは互いに苦笑いする。
「それからお前はSランクになる」
「この前、Aランクになったばかりですよ?」
「魔王を倒したからな。それだけの強さがあればSランクになっても誰も文句は言わないだろう。帰りに受付に寄ってペンダントをSランクに変えておいてくれ。ミオナには話をつけておく」
「分かりました」
その後、話し終えた俺はミオナさんの元に向かう。
「ミオナさん、ギルマスから話は聞いてますか?」
「はい、ランクの件ですよね。それではペンダントを預かりますね」
Aランクの刻印があるペンダントを手渡すと、ミオナさんは手元で作業をし、俺にペンダントを手渡してくれる。
「できましたよ。これでラソマさんはSランクです」
ペンダントにはSランクの刻印がされている。まさか、冒険者になってこんなに早くSランクに上がれるとは思わなかったな。
それから少し話をして、俺は屋敷に帰った。
「「お帰りなさいませ」」
屋敷に入ると、アミスとメルが出迎えてくれる。
「約束通り、無事に帰ったよ」
「安心しました」
「それで、魔王はどうなさったんですか?勇者が出撃したという情報はないですけど」
「うん。俺が魔王を倒してきたからね。勇者は何もする事がなくなってしまったよ」
「ラソマ様が魔王を!?」
「ラソマ様って勇者なんですか?」
「いや、違うよ」
メルの問いに苦笑いして答える。俺が魔王を倒してから勇者だと勘違いされっぱなしだ。
「とにかく無事に帰って来てくださって良かったです」
「うん」
2人を安心させる事ができて良かった。
さて、明日からは、またいつも通りに冒険者稼業の再会だな。
そう思っていたのに、魔王を倒した翌朝、俺は貴族の服装で城の謁見の間にいた。
俺の前には王様と姫様、そして総務大臣がいる。王子も来る予定だったが、公務により来れなくなったのだとか。俺としても王族にズラリと並ばれたら緊張してしまうから良かった。
俺が呼ばれた理由、それは魔王を倒したからだ。
「ラソマ男爵、今回の件、よくやった」
「ラソマ男爵があの時点で魔王を倒してくださらなかったら、王都は壊滅的な被害を受けていたでしょう」
「勇者が出陣しなかったからな」
王様は勇者が行かなかった事に立腹しているようだ。
「まったく…ラソマよ、お前が勇者であれば良かったんだがな。違うのだろう?」
「はい、勇者ではありません」
「それなのに、どうして魔王を倒す事ができたのでしょうか?」
「何というスキルなのか話す事はできるか?」
「はい」
王様に話せないとは言えないしな。そもそも冒険者として自分のスキルを大っぴらに明かしたくないだけであって秘密にしているわけではない。
「私のスキルは超能力というものです」
「超能力?聞いた事がないな」
「神父様も聞いた事がないそうです」
「具体的にどのようなスキルなんだ?」
「…全てを話す事はできないのですが、よろしいですか?」
「何故だ?」
「私は冒険者として活動しています。自分のスキルを細かく明かす事は冒険者としての仕事に差し支えます」
「それは余が誰かに話してしまう事を懸念してか?」
「それは…」
難しい質問だな。確かに王様が誰かに話してしまう事は考えられる。王様がその人を大丈夫だと判断しても、その人が誰かに話すかもしれないし、さらにその人が誰かに話す可能性もある。それはこの場所にいる全員に当てはまる。
「そんな意地悪な聞き方をしてはラソマ男爵が可哀想ですよ」
「そうだな。まあ誰にでもスキルは明かせるものではないか」
俺が困っていると姫様が助け船を出してくれる。
「それでは大まかで良い。どういうスキルなのだ?」
「そうですね…大魔法のようなものでしょうか」
「何!?魔法なのか?」
「いえ、違います。大魔法とは様々な属性の魔法が使えるスキルですよね?私のスキルも様々な事ができるんです。例えば、手を触れずに物体を動かしたり、遠くを見る事ができます」
「ふむ、その2つは全く別物だな。そういう別物が複数あるのか?それらを合わせて超能力なのか?」
「はい、その通りです」
「そうか。それで魔王を倒す事ができたと…勇者でもないのであれば、ますます状況が分からないな」
「分からなくても良いのではないですか?」
「ん?」
「出陣しない勇者でなくても、魔王を倒す事ができるラソマ男爵。そういう方が居てくださる事の方が、魔王を倒せた理由より大事だと思います」
「確かにそうだな。超能力というスキル名は分かったんだから、魔王を倒せる存在が2人に増えたという事の方がいいか」
姫様のアシストにより、俺のスキルの内容は話さなくて済んだ。勇者も本当は出陣する予定だったけどな。王都が少し侵略された後だけど。
「さて、それでは本題だ。ラソマ男爵、今回の件でお主を子爵に陞爵する」
「おめでとうございます、ラソマ子爵」
なんと俺は子爵になった。




