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38.報告後のパーティー

 男爵になった事を父さんに報告した日の夜。俺が男爵になった事を祝うパーティーが開かれた。パーティーと言っても他人はおらず、家族だけのものだ。


「それにしても男爵になるなんて凄いわね」


 パーティーで一通りの食事を終えた時、母さんが言う。このパーティーまでに家族には会っていたが、男爵になった事は話していなかった。いわゆるサプライズというやつだ。


「先に貴族当主になってしまったね」


 兄さんが笑いながら言う。普通なら最初に貴族当主になるのは兄さんのはずだったからな。でも兄さんは、その事で嫉妬はしていない。


「ラソマ兄様、凄いです!男爵になっただけじゃなくて、屋敷まで頂けるなんて!」

「そうだね。屋敷まで頂けるとは思っていなかったよ」

「私が王都に行った時は、ラソマ兄様の屋敷に住んでも良いですか?」


 今年、スィスルは王都の学園に通う事になる。


「うーん、それはどうだろう。学園には寮があるはずだから、寮に住んだ方が良いと思うな。同年代の友達もできると思うし」

「そうだな。せっかく王都に行くんだ。友達を多く作った方が良い。その為には寮に住むのが1番だ」

「分かりました。寂しいですけど寮で暮らします。でも、たまには遊びに行っても良いですか?」

「勿論だよ」

「これからは屋敷に住むのか?」

「頂いたのに住まないというのも失礼にあたるかもしれないので住もうと思っています」

「その言い方だと、そこまで屋敷に住みたいとは考えていないのか?」

「はい。今、住んでいる宿にも愛着がありますから」

「そうか。だが、相手が国王陛下だからな」

「そうなんです。そこで相談なんですけど、アミスを屋敷に連れて行っても良いですか?」

「そうだな…屋敷で男爵が1人だけで住むのも体裁が悪い。周囲から不審がられるかもしれんな」

「はい。後々、料理人も雇おうと考えてるんですけど」

「それが良い。ただ、アミスにも聞くんだぞ?本人の気持ちを汲まないとな」

「はい」

「まあ、アミスなら喜んで付いて行きそうだけど」


 母さんが微笑みながら言う。アミスが俺を好いてくれているのは皆、知ってるからな。

 その好意が、恋愛感情だという事は俺以外、誰も知らないはずだ。俺は前に読心で知ってしまった。

 その後は王都での生活や冒険者としての仕事の話をした。王都には沢山の店がある事にスィスルは驚いてくれたけど、父さん達は驚かなかった。伯爵として王都に行った事もあるから、今更、俺の話す内容に驚かないだろう。兄さんは冒険者としての仕事をきちんとしている事に感心してくれた。


「ところで素敵な女性と知り合えたか?」

「え?」


 父さんが急にそんな事を聞いてくる。


「王都は賑やかだ。人も多い。素敵な女性と知り合う機会は多いだろう?」

「…そうですね。何人かは」

「え?!いるんですか?!」


 俺の言葉にスィスルが驚く。


「うん、いるよ。と言っても冒険者としての活動で知り合っただけだけどね」

「どういう人だ?」


 父さんに聞かれた俺は出会えた女性の事を話す。でも本当に少ない。

 冒険者ギルド受付のミオナさん。

 今泊まっている宿の従業員のメルさん。

 Sランク冒険者のレイラ。

 あとは前からの知り合いだけど、俺が冒険者になれるかを判断してくれたレイビスさんとウィースさん。

 …クリス王女の事は言わなくても良いか。王都で出会った素敵な女性として言ったら、失礼にあたるかもしれない。

 その他にも冒険者として一緒に行動した女性冒険者もいるけど、名前は覚えていない。


「少ないな。もっと出会えなかったのか?」

「はい。出会いよりも冒険者として活動する事に重点を置いていたので」

「そうよ、ラソマは冒険者として生きているんだもの。女性と出会う為に王都に行ったんじゃないわ」

「そうだが…男として素敵な女性と出会う事は大事だぞ。私みたいにな」


 父さんの言葉に母さんが少し照れている。子供の前でそんなイチャつかれても困るんだけど。


「ところでラソマは冒険者ランクは何になったんだい?」

「Aランクです」


 兄さんに聞かれたのでランクを答えると、皆が驚いた顔で俺を見る。


「ラソマ、Aランクになったのか?!」

「Aランクなんて…結構強いんじゃないの?」

「勿論だ。上から2番目のランクだからな」

「凄いじゃない!」


 母さんが絶賛してくれる。


「こんな短期間でAランクになれるものなのか?」

「普通は無理だろうな」

「今回、魔族の大群を倒した事が理由らしいです」

「実力に見合ったランクになったわけだな」

「そうですね。この調子でSランクも目指そうと考えています」

「それは最高のランクだろう?」

「はい。でもなれると思います」

「ハハハ!それは凄い自信だな」

「最初はAランクが目標だったんですけど、それが叶ってしまったので、次の目標を考えておかないといけないと考えたんです。その結果、今度の目標はSランク冒険者です」

「そうか。Sランクにして男爵。今までそんな人間はいなかったな」

「そうね。ラソマがそういう人になってくれると嬉しいわ」

「頑張ります!」


 父さんと母さんに期待されたら、それを裏切るわけにはいかないな。頑張ってSランク冒険者になろう。


 そうしてパーティーが終わり、自分の部屋だった部屋に行く。今日はそこで泊まる事になっている。


「うわ…綺麗だな」


 俺が出て行ってからも掃除はしていたそうだけど、今日は俺が泊まると知って、俺が寝れるようにきちんと使用人が準備したらしい。

 それから俺はアミスを部屋に呼んだ。


「ラソマ様、お久し振りですね」

「うん、久し振りだね」


 久し振りに見たアミスは全く変わっていなかった。いや、そこまで長期間会っていないわけじゃないから、変わらなくて当然か。


「ラソマ様、また素敵になりましたね」

「そうかな?」

「はい!」


 アミスは本気で言ってくれているようだけど、そんなに俺は良い風に変化したのか。


「アミス、今日は報告があるんだ。家族には話したけど、アミスにはまだ話してないからね。あ、他の使用人にも言ってないから、アミスだけを仲間外れにしたわけじゃないからね」

「ふふ、分かってます。ラソマ様がそういう人ではない事は知ってますから」


 微笑みながらアミスにそんな事を言われてしまう。まあ、本当に仲間外れにするつもりはないけどね。


「実は僕、男爵になったんだ」

「男爵ですか?!おめでとうございます!」

「ありがとう」


 ちなみにだけど、たぶん、俺が男爵になった事は他の使用人達は知ってると思うし、アミスも知っていたと思う。これくらいの事ならすぐに広まるだろうし。でも皆、俺や家族が言わない限りは知らないフリをしてくれると思う。雇い人やその家族の個人情報を知っていても自分から言わない方が良い。


「男爵様になるなんて凄いです!」

「運が良かったんだよ」

「運も実力のうちです!」

「はは、そうだね。さて、そこでアミスに頼みたい事があるんだ」

「頼みだなんて!命令してくだされば何でもしますよ?」


 なんでも…?いや、アミスも変な事を意識して、何でも、と言ったわけじゃないんだろう。


「ラソマ様も15歳ですし、私も覚悟はできています」


 あれ?俺の年齢が関係しているのか?それにアミスも覚悟って…。


「いやいや、そんな覚悟が必要な事を頼むんじゃないんだ。実は男爵になった事で屋敷を頂いたんだけど、1人で住むには勿体なくてさ。でも住まないというのも、陛下に悪い気がするんだ」

「そうですね」

「だからアミス、僕と一緒に屋敷に住んでくれないかな?」

「わ、私でよろしいのですか?」

「勿論。アミスが良いんだ」

「私で良ければ、よろしくお願いします」

「うん、こちらこそよろしくね。次は料理人を雇わないといけないな。そうしないと毎食、外食になってしまうからね」

「私が作りますよ?」

「アミスにはメイドとしての仕事があるから、料理までさせるわけにはいかないよ」


 アミスと一緒なら楽しい筈だ。ただ、ずっと2人きりだと少し緊張してくるというか…間が持たない気がする。まあ俺も冒険者としての仕事があるから、ずっと屋敷に居るわけじゃないんだけどね。


「という事で料理人を雇うよ。あとはアミスが必要だと思えば、使用人の数も増やそうと思ってる。そんなには増やせないけどね」

「分かりました。私はラソマ様と2人きりでも良いんですけど」


 アミスの後半の言葉は声が小さかったけど、はっきり聞こえた。俺もアミスと2人きりは楽しいから、その気持ちは分かる。


 何はともあれ、こうしてアミスは俺の屋敷に来る事になった。

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