34.Aランク初依頼
「ラソマさんなら大抵の依頼は大丈夫だと思いますけど、まずは肩慣らしに、この依頼はどうですか?」
ミオナさんの提案してくれた依頼はオーガキング1匹の討伐。
前にセイチさん達と倒したオーガがBランクだから、それより強いのかな。
「オーガキングはオーガの上位種です」
「強そうですね」
何せキングだからな。強そうだ。
「それじゃあ行ってきます」
「大丈夫だとは思いますけど、気をつけてくださいね?」
「はい」
オーガキングがいるというのは王都から少し離れた砂漠地帯。普通なら馬車で移動しないと時間がかかるような場所だけど、瞬間移動があるから楽だ。
まずは透視と千里眼で砂漠地帯がある方向を見る。そして砂漠地帯が見えたところで、瞬間移動だ。俺の瞬間移動は、見た事がある場所にしか行けない、というデメリットはあるけど、千里眼と透視の併用でデメリットは無くなった。
「ここが砂漠か」
瞬間移動した俺の目の前には砂漠地帯が広がっている。
「暑いんだろうなぁ」
暑過ぎるのは嫌だから結界を使って温度調整をしている。俺の周囲だけ、温度は王都と同じで快適だ。
「さて、オーガキングは…向こうか」
オーガキングの居場所を千里眼てで確認した俺は、その場所に向かう。
見えてきたのは身長5メートルはありそうな魔物。見た目はオーガと同じで鬼だ。筋骨隆々、絶対に肉体を駆使した接近戦タイプだなと分かる。
「グオオオオッ!」
俺に気づいたオーガキングが叫びながら突進してくる。武器は持っていないけど、突進力だけで吹き飛ばされそうだ。でもそうはならない。俺に当たる直前に結界に当たり、オーガキングは吹き飛んで、地面に倒れた。威力をそのまま返したんだ。
オーガキングは立ち上がり、俺に向かって走り出す。でもさっきの事があったからだろうか。途中で立ち止まり、威嚇しながら結界を軽く何度か殴ってくる。そのたびに衝撃を返している。
「グルルルルッ…」
殴る事を止めたオーガキングは唸ると、俺から距離を取る。そうして口を開けた。
おっ!火の玉でも放つのか?オーガキングの口内に赤い玉ができあがっている。燃えているような感じだから、火の玉だろう。直後、予想通り火の玉が俺に向かって放たれる。でも結界で防げる威力だな。火の玉が消えても平気な俺を見て、オーガはイライラしてきている…ような気がする。
…弄んでいるようで悪いな。もう良いか。
そう考えて結界刃でオーガの首を切って倒すと、瞬間移動でギルドに帰った。
「ただいま帰りました」
「お帰りなさい!やっぱり簡単でしたか?」
「そうですね」
俺の答えにミオナさんは苦笑いする。
「オーガキングでも簡単となると、Aランクで受ける事ができる討伐系の依頼も限定されますね」
「オーガキングは強い方なんですか?」
「単独で討伐できる人は稀です。普通は複数人で受けますから」
「そうなんですか」
全然余裕だったけどな。やっぱりSランク相当の依頼を受けたい。とはいえ俺はAランク。許可されないだろうな。
「お、ラソマくんじゃないか」
「昨日の今日で、もう依頼を受けに来たの?」
俺に声をかけてきたのはセイチさん達だ。
「そうなんです。オーガキングの討伐に行ったんですけど」
「オーガキング!?あれはAランクだろ?!」
「はい。昨日の件でAランクになりました」
そう言ってペンダントを見せる。
「本当だ…」
「セイチ、疑ってたの?」
「私達はラソマ君が嘘をつくわけないって信じたのに」
「いや!俺だって信じてたぞ!?でも、いきなりAランクになるなんて一瞬疑うだろ!」
セイチさんが焦ったように声を出す。疑われても当然だから気にしない。
「それにしても、もうAランクか…冒険者になってあっという間だな」
「そうですね」
「まあ、それだけの実力を示したからな。あんな大勢の魔族と魔物を1人で倒すなんて俺には無理だ」
「私達が3人で行っても無理よ」
「やっぱりラソマ君はすごい。Sランクも夢じゃないかも」
「ここまできたらSランクを目指します!」
「うん!ラソマくんならできると思う!」
「普通は目標にできる領域じゃないんだけどな」
セイチさんはそう言って苦笑いする。
「それで、今日はどうするんだ?」
「オーガキング討伐が簡単だったので、もっと難しい討伐依頼を受けようと思ってます」
「うーん、それは数が少なそうだ……いや、この時期なら、あの依頼が良いんじゃないか?」
「あの依頼って…あの?」
「ああ。受付さん、ドラゴン監視の依頼は残ってるか?」
「はい、残ってますけど、あれはパーティー専門の依頼ですよ?」
「ちょうど、ここにパーティーになれるメンバーがいるだろ?ラソマ君、討伐系の依頼じゃないけど、行ってみるかい?」
「ドラゴンの監視をするんですか?」
「そう。討伐じゃなくて、あくまでも監視。絶対に戦闘はしない事。何せ、相手はSランク相当のモンスターだから」
「どういう依頼なんですか?そもそもSランクのモンスターを相手に、Aランクの俺達が行っても良いんですか?」
「それについては私から説明します」
依頼内容をミオナさんが説明してくれるらしい。
内容は山に棲むドラゴンの監視。この時期、山を縄張りにしているドラゴンの活動が活発になるらしい。そこで定期的に監視に行って、王都や近くの街に被害が及びそうならギルドに報告する、といったものらしい。
そのドラゴンは普通なら穏やかで討伐すべき脅威ではない。だからSランク相当の強さでも、さほど危険ではない。ただ、この時期だけ危険になるというだけで討伐はしないようだ。
無闇に殺してしまったら種族が絶滅するからな。
「今まで被害があった事はあるんですか?」
「数百年前に1度、近くにあった村が滅ぼされました。ただ文献によると、村人が数人でドラゴンを見に行き、結果的にドラゴンを煽ってしまったようです」
「それは…」
巻き込まれた他の村人が可愛そうだな。もしかしたら、その村は滅びなかったかもしれない。
「でも、数百年前に1度なら大丈夫そうですね」
「ラソマ君なら、ドラゴンも討伐してしまいそうだけど…」
「いやいや、まさか………討伐できたとしても駄目だからね?近くの街からすれば、守り神扱いされてるから」
「何かあっても逃げてギルドに報告するのが1番」
「分かりました。その依頼を受けます」
「分かりました。今から行きますか?」
「はい」
「え?山は遠いよ?」
「大丈夫です。俺には特殊な移動方法がありますから」
「あの移動方法?」
ウィースさんが言うのは、結界を使った移動方法だろう。
「いえ、あれよりもっと良い移動方法です」
俺はそれだけ言って依頼を受けると、ギルドから外に出た。セイチさん、レイビスさん、ウィースさんも一緒だ。
「それでどうするの?」
「その前に、目的の山はどの方向ですか?」
「向こうだけど」
セイチさんが指差す方向を千里眼と透視で確認する。そこには大きな山があった。ただ、岩肌が見えており、木々はあまり無い。その特徴を伝えると、その山だと言われた。
「それじゃあ行きます。驚かないでくださいね」
「いや、どういう移動を?」
「瞬間移動です」
「「「え?」」」
見事に3人の声が重なった。
「では行きます」
そう言って俺はセイチさん達を連れて目的の山に瞬間移動した。一瞬で場所が変わった事にセイチさん達は驚いている。Aランクでも驚くんだな。
「…ラソマ君には、まだまだ驚かされるね」
そう言ってセイチさんは苦笑いした。




