33.昇格!
魔族と魔物の大群を倒した翌朝、俺はいつものようにギルドに入った。
「おい、あれが…」
「ああ、例の魔族達を倒した奴だ…」
「まだ子供なのに」
ギルドに入るなり、中にいる冒険者達が俺を見てヒソヒソと話し始める。うん、目立ってるな。軽く読心を使ったけど敵意はない。羨望と嫉妬が半々だな。まあ、これなら問題はないか。
他の冒険者を意識しても仕方がないので、まずはギルド受付のミオナさんに挨拶する。
「おはようございます」
「おはようございます。今日も依頼を受けますか?」
「はい。どんな依頼がありますか?できれば討伐系の依頼を受けたいんですけど」
「討伐系ですね。それなら……これらがお勧めです」
そう言ってミオナさんが数枚の依頼書を見せてくれる。
全て討伐依頼で、対象はゴブリン、オーク、か。まだ簡単そうな魔物ばかりだな。でも単体ではなく、集団ばかりだ。
「この依頼は通常、パーティーで挑むものなんですけど、どうしますか?」
「1人でいきます。この程度の依頼なら大丈夫だと思うので」
「分かりました。それでは、どの依頼を受けますか?」
「ゴブリンの集団討伐と、オークの集団討伐、両方を受けます」
目的地はどちらも森だからな。一気に受けた方が手間が省けるだろう。
「ラソマさんの実力なら大丈夫だと思いますが、もし失敗したら違約金が発生しますよ?」
「分かっています。心配してくれてありがとうございます」
「いえ、担当の冒険者の心配をするのも私達の仕事ですから。それでは気をつけてくださいね?」
「はい、行ってきます」
そうして俺は2つの依頼を受けて森に向かった。
森に到着後、千里眼と透視でゴブリンの集団の居場所を見つけると、そのまま念動力で首を捻り倒す。数は36匹だったな。
次にオークの集団を見つけると、同じように倒す。数は20匹という依頼書より少し多い28匹だった。
「やっぱりこの程度の依頼だと簡単だよな」
「何が簡単なの?」
急に聞こえた声に驚き、声のした方を見ると、そこには2人の妖精がいた。以前、会った男女の妖精だ。
「こんな所で何をしてるの?」
「また依頼か?」
「じゃあ薬草採取?」
「いや、今日は討伐依頼だよ。ランクが上がって採取依頼より討伐依頼の方が増えたからね」
「そうなんだ!おめでとう!」
「ありがとう」
「魔族を捕まえれるだけあって本当に強いんだな」
「この前は魔族と魔物の大群を倒してたもんね?」
「知ってるのか?」
「草原に住んでる妖精に聞いたの。圧倒的だったって話してたよ」
草原にいる妖精に見られてたのか。やっぱり妖精はどこにでもいるんだな。
「でも勇者じゃないんだよな?」
「うん、違うよ」
「それが凄いよね!勇者でもない人間が魔族の大群を倒す、それも無傷で倒すなんて」
妖精って人間の世界に詳しいんだな。
「良いスキルに巡り会えたんだよ」
本当に超能力というスキルのお陰だ。万能過ぎて怖いくらいだ。
「そういえば、大会に来ていたのは驚いたよ」
「大会?きみが優勝した、あの大会?」
ギルドが主催する、優勝すればランクが上がる大会だ。それで優勝したから俺は一気にDランクになった。
「妖精も、ああいう大会に興味があるの?」
「そうだな。大会もそうだし、祭りにも行くぞ」
「私達は何も買えないけどね」
「本当は買いたいんだけど、お金がないから買えないんだよ」
「そうなのか。それなら今度、祭りがあった時は俺が何か買ってあげるよ」
「本当か!?」
「約束よ?」
「ああ、約束だ」
何が欲しいのか知らないけど、祭りで売ってる物なら、そんなに高くないだろう。2人は人に見られたら駄目だから、結界で隠して行く。まだ王都の祭りを知らないけど、楽しみになってきたな。
「それじゃあ、そろそろ俺は行くよ」
「うん!また来てね!」
「待ってるからな」
「ああ」
この2人の妖精はフレンドリーで話していると楽しい。他の妖精も同じなんだろうか。もしそうなら会ってみたいな。人間に対して嫌悪感を持っている妖精とは会いたくない。
「お帰りなさい。少し遅かったですか?」
ギルドに帰り、ミオナさんに依頼達成の報告をすると、そんな事を言われた。
「はい、依頼が終わってから妖精と話していたので」
「よ、妖精ですか?」
妖精の事が他の人に聞こえないように小声で言うと、ミオナさんも小声で応対してくれる。
「はい。初めて会った妖精と同じ妖精でした。会話が楽しくて、つい遅くなってしまったんです」
「はぁ…妖精と会話だなんて、とても珍しい事ですよ。私も話してみたいです」
「それなら今度、一緒に森に行きますか?もしかしたら妖精が話しかけてきてくれるかもしれないですし」
「良いですね!それじゃあ仕事がお休みの日に一緒に行ってもらえますか?」
「喜んで」
2人きりで森か。楽しくなりそうだ。でも森には魔物もいるし、ミオナさんをきちんと守らないとな。
「おう、ラソマ、ちょうど良かった」
俺とミオナさんが話していると、ギルマスが声をかけてくる。
「俺に何か用ですか?」
「ああ。部屋まで来てくれ」
「分かりました。それではミオナさん、また後で」
「はい」
ミオナさんと別れてギルマスの後をついて行く。連れて行かれたのはギルマスの執務室だった。ギルマスが椅子に座り、その前の椅子にテーブルを挟んで俺が座る。するとすぐにギルド職員の女性が入ってきて、ギルマスと俺の前に飲み物を置くと、部屋を出て行った。
「さて、話すか。お前のランクは正式に上がる事になった」
「決定が早いですね」
「昨日の内に政府の人間と話し合ったからな。昨日、お前がした事はDランクにはできない事だ。それをお前は簡単にこなし、その翌日には平気な顔でギルドに来た。これはとてつもない事だぞ。ただ、Dランクなのに無茶をし過ぎだ。万が一の事があったら、どうするつもりだったんだ?」
「倒せる自信があるのに行かないのは駄目だと思ったんです。まあSランクのレイラが来るなら、俺は行かなくても良かったかもしれないですけど」
「いや、いくらSランクでも1人では大変だっただろう。そんな事を1人でしたんだから、お前はSランクでも良いと思う。だが一気にそこまで上げると、周囲から何を言われるか分からん。そこで、だ。Aランクで妥協する。これは決定事項だから、お前が嫌でもAランクに昇格だからな」
「はい、嬉しいです。全然文句なんてないですよ」
DからAに一気に昇格できたのは嬉しいな。これなら多少、他の超能力を使っても何も言われないだろう。
「そうか。じゃあ話は終わりだ。ペンダントはミオナに渡してくれ」
「はい」
そうして俺はギルマスの部屋を出てミオナさんの元に向かう。
「お話は終わったんですね?」
「はい。ミオナさんは知ってたんですか?」
「勿論です。私はギルド職員であり、ラソマさんの担当なんですから」
「それじゃあ、お願いします」
「はい」
俺がミオナさんにDと刻印されたペンダントを渡すと、魔法道具を使ってAと刻印されたペンダントにして手渡してくれる。これが俺の新しいペンダントか。
「ありがとうございます!」
「おい、あいつ、もうAランクになったみたいだぞ?」
「本当かよ?まだDランクだったんじゃないのか?」
「この前、魔族と魔物の大群を1人で倒した奴だろ。その功績じゃないのか?」
周囲の冒険者達の話し声が聞こえる。Aランクに上がった事は隠す必要がないから、普通の声量で話しているから聞こえたんだろうな。
「今日はどうしますか?」
「そうですね…せっかくだからAランク相当の討伐依頼を受けてみます」
Aランクになって最初の討伐依頼だ。どんな強敵が現れるかな。




