32.Sランク冒険者と知り合う
「Sランク!?まだ若そうなのに」
「まあ、まだ18だからね」
18歳でSランクか。凄いな。
「っと、自己紹介がまだだったね。俺はラソマ。Dランク冒険者だよ。ちなみに15歳だ」
「Dランク!?冗談でしょう?!Dランクが1人で魔族と魔物の大軍を殲滅できるわけないじゃない!」
「まあ…普通はそうだよね。俺は強いけど、冒険者登録をしたのは最近なんだ」
「…成程。実力とランクが釣り合っていないのね」
「そういう事。まあ、これからどんどんランクを上げていくから、実力とランクが釣り合うようになると思うよ」
「…そう。それにしても私が来た事の意味はなかったわね」
レイラは安堵した顔で言う。
「さて、帰ろうとしてたんだけど、この魔族と魔物の死体、どうしたら良いんだろう。このまま放っておいても良いのかな?」
今更ながら疑問に思ってしまった。目の前の光景は…いや、あまり表現したくないな。
「それは大丈夫。たぶんギルドが冒険者を派遣して、魔物の死骸から使えそうな素材を取りに来るんじゃないかな。魔族の死体は普通に焼却処理されると思うわ」
「そうなのか。それなら安心だな。じゃあ帰ろうかな」
「疑問なんだけど、どうやってここまで来たの?あの時、私もギルドにいたけど、きみがギルマスと話しているのも見たわ。気付いたらきみはギルドからいなくなってたけど」
「瞬間移動してきたんだ」
瞬間移動なら隠す必要はなくなったな。いずれSランクになれば他の超能力も隠す必要がなくなる。俺が超能力の大半を隠す理由は、知った人間が俺のスキルを悪用しようと考える恐れがあるからだ。特に家族を人質に取られた場合、結界を張っているとはいえ、精神的な攻撃をされたら防ぐ事はできない。特にスィスルは子供だから狙われやすいだろう。
でもSランクは別格だ。そんな人間を相手に人質を取ろうなんて考える愚か者はいない。自分の身が危険に晒されるだけだからだ。
「瞬間移動?」
「そう。文字通り、一瞬でギルドからここまで来たんだよ」
「そんなスキルもあるのね。…でも魔族達の死体はどうやったの?切断されてるように見えるけど」
「それは秘密かな。俺も冒険者だし、全ての手の内を明かすわけにはいかないよ」
「…それもそうね。私だってスキルを言うわけないし」
「それじゃあ帰ろうか。一緒にギルドに帰るかい?送るよ?」
「私も一緒に瞬間移動ができるの?」
「うん」
「そうなの…それなら送ってもらえる?ギルドの外までで良いから」
「分かった。それじゃあ行くよ」
次の瞬間、俺はレイラと共にギルドの出入口の外側に瞬間移動した。周りにいた人達が驚いている。急に人が現れたんだから驚いて当然だよな。レイラも驚いていた。
それから俺とレイラはギルドに入った。
「お、レイラ、もう討伐してきたのか?」
レイラを見つけたギルマスが声をかける。
「いいえ、私が着いたらもう終わっていたわ」
「何?どういう事だ?」
「急いで現場に向かった私が見たのは、魔族と魔物の死体、それと近くに立っていた彼よ」
そう言ってレイラは俺を見る。レイラが俺を見たので、ギルマスも驚いている。
「馬鹿な!?Dランクだぞ?!」
俺がDランクだと覚えているのか。
「おいおい、本当かよ!?」
「冗談じゃないのか?」
「この状況で冗談なんて言わないだろ!それにレイラだぞ。そんな嘘は言わないだろ」
集まっている冒険者達が驚いている。
「彼に関してはランクで判断しない方が良いという事ね。このまま時間が経てば、実力相応のランクになるんじゃない?」
「そうか。それにしてもこれは大事になりそうだぞ。Dランクの冒険者が1人で魔族と魔物の大群を倒してきたんだからな」
「ラソマ、覚悟しておかないとね」
「う、うん」
自分でも大群を1人で倒すのは凄いと思うけど、そこまで大事になるのかな。ランクを上げてくれたらそれだけで良いんだけど。
「それじゃあ、ちょっと報告してくるよ」
「誰に?」
「担当の受付の人に。心配させてしまったと思うから」
そう言ってミオナさんの方を見る。今はギルマスやレイラがいるから一職員としては来ないけど、心配そうな顔をしている。
「ふうん」
「いや、どうしてニヤニヤしてるんだい?!」
「別に。それじゃあ私はこれで。AがSランクになったら一緒に依頼でも受けましょう」
「うん!その時を楽しみにしてるよ」
レイラはそう言って立ち去った。Sランクと一緒に依頼か…それだけ強い人と一緒にいたら、良い影響を沢山受けそうだな。楽しみだ。
と、その前にまずはミオナさんに報告だな。
そう考えて俺はミオナさんの前に行く。
「ただいま帰りました」
「お帰りなさい。怪我は…してなさそうですね」
「はい、無傷です」
「無傷だと?」
「魔族の大群を相手にしてか?」
俺の言葉を聞いた他の冒険者が驚きの声をあげる。
「魔族は強かったですか?」
「いや、えっと…大して強さは感じませんでした」
「え?」
「攻撃はしてきたけど無効化したし、苦労せずに倒してしまったので」
「そ、そうなんですね。本当に強いんですね」
「はい。これならミオナさんも安心してくれますよね?」
「ふふ、そうですね。それではこれからどうしますか?」
「宿に帰ります。まだギルドも忙しそうだし。今日は宿でのんびりします」
「分かりました。明日、お待ちしてますね」
そうして俺は宿に帰ろうとしたら、ギルマスに呼び止められた。
「どういう状況だったのか聞かせてもらえないか?」
「分かりました」
今日は休みたかったんだけどな。でもギルマスに報告するというのは大切だ。疎かにはできない。俺はギルマスと共にギルマスの執務室に向かった。
俺とギルマスはテーブルを挟んで対面するように椅子に座る。
「さて、何があったか説明してもらえるか?そもそも、あの短時間でどうやって魔族の大群のいる場所に移動したんだ?」
瞬間移動は隠しても仕方がないので、瞬間移動を使った事を説明する。瞬間移動は珍しい技能だから案の定、ギルマスは驚いた。
「それが使えるなら素早い移動の問題は解決するな」
それから魔族と魔物の大群を倒した経緯を説明する。しかし結界などについては話さない。これはまだ隠しておきたいからだ。ギルマスも個人のスキルについて詮索してくる事はなく、全て倒したという結果だけで満足してくれた。
「生き残りがいると復讐を考えてきて後々、面倒になるからな」
そのギルマスの言葉に納得する。ただ、完膚なきまでに倒されたんだから諦めて欲しいところだ。
その後はレイラが来た事や諸事情を話して終わりとなった。意外に簡単な説明で済んだな。
「この件を機に、お前のランクは所定の条件を無視して上がるかもしれないな」
「それは嬉しいですね。ランクは一刻も早く上げたいですから」
「そうか。まあ冒険者としては当然だろうな。だが急ぎ過ぎるなよ?無理して高難度の依頼を受けると早死にするからな」
「分かりました。ありがとうございます」
そうしてギルマスへの報告が終わり、俺は宿泊している宿に向かった。




