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31.魔族達の進撃

「どうして魔族が進撃してきてるんですか?」

「分かりません。ただ見張りの兵が言うには、規模は魔族が数千人、それに伴って魔物の大群もいます」

「大規模ですね」


 何かしらの交渉…ってわけじゃなさそうだな。


「皆、聞いてくれ!俺はこのギルドのギルドマスターだ!」


 ギルドの中央に立っている大柄の男が声を上げる。


「知っての通り今、王都に魔族の集団が進撃してきている!そこで自信のある者は撃退に向かってほしい!」


 ギルドマスターの言葉に皆が考え始めている。

 魔族か…前に捕まえた事もあるし…できるかな。


「勇者も行くんですか?」


 ミオナさんに聞いてみる。勇者とは魔王に対抗できる唯一の存在。勇者というのは『勇者』というスキルが発現した人で、各国に1人ずついる。


「いえ、確かに勇者が出陣すれば、魔族には簡単に勝てるかもしれません。ですが、おそらく出ません」

「何故ですか?」

「相手が魔族だからです。勇者は対魔王の最終手段ですから」

「魔王ではない魔族の相手は勇者以外の人がするべきって事ですか」

「そういう事です」


 せっかく勇者がいるのに、相手が魔族という理由で出れないとは…。それで王都が滅びたらどうするんだろう?いや、その時には出陣するのかもしれないか。


「俺も行って良いですか?」

「え?!魔族を倒しにですか?」

「はい」

「えっと…でも魔族は強いですよ?いくらラソマさんが強くても、魔族は別格です」

「大丈夫です。前に捕らえた事もありますから」

「え?その話、聞いてないですけど」

「心配させないように黙っていたんです」


 今は魔族を倒しに行くっていう状況だから言わない方が心配させる事になると思ったから話しておく事にした。倒したわけじゃないけど、捕らえただけでも心配は減ると思う。


「それじゃあ行ってきます」

「待て」

「え?」


 俺はギルドマスターに呼び止められる。


「お前はDランクだろ?足手まといになるだけだ」

「でも自信がある人は行っても良いんですよね?」

「そうだが、Dランクだろ?たいして実績もない。名前を売りたいだけなら止めておけ。それよりも、魔族を撃退した後、魔族との闘いで冒険者達は傷つき、少しの間、依頼が溜まるだろう。それを受ける人間も必要なんだ。ランクの低い者は、魔族を撃退した後に大切な仕事がある。それを待っていてくれ」


 後半の言葉は他の低ランクの冒険者にも聞かせるように声が大きかった。最初は蔑んでるのかと思ったけど、俺達のような低ランクの冒険者を心配してくれてるんだな。

 まあ、反対されても行くんだけどな。正直、負ける気はしないし。


「あの…行かないですよね?」

「え?」

「なんだか行くような顔をしていたので」


 ミオナさんに気付かれてしまう。どんな顔だったんだろうか。


「すみません、行きます。強いのに、その強さを活かさないのは駄目だと思うので。ランクが低いのは俺が冒険者登録をしたのが最近だったせいで、ランクが低い事と俺の実力はイコールではないですから」

「…分かりました。でも気をつけてくださいね?」

「はい、行ってきます」


 そう言って俺はギルドの外に出て、路地裏のような場所に入った。


「えっと…魔族が進撃してきているのは………向こうか。よし、一気に行くか」


 透視と千里眼で魔族達が来ている方向を知ると、その場所に向かって瞬間移動する。緊急事態だし、瞬間移動がある事は知られても良いかな。


「うわー、大群だな」


 場所は広い草原。後ろには王都が見える。前方には沢山の魔族と魔物がこちらに向かって進んできている。

 今のところ、撃退に来たのは俺だけのようだな。まあ、瞬間移動でもしない限り、こんな早く来る事はできないと思うけど。


「誰だ?お前は」


 近くまで来た魔族が話しかけてくる。


「事情によってはお前達を倒す者だ。お前達は何をしに王都に向かってるんだ?」


 まずは話し合いで解決する手段からだな。


「決まってるだろ!人族を根絶やしにする為だ!」

「お前達のような弱者に、あの領地は勿体ない!」

「俺達の奴隷にしてやる!」


 俺の言葉に一斉に返してくる。元気だなぁ。


「話し合いで解決できないか?俺もお前達を倒すのは面倒なんだ」

「無理だな。話し合いなんて時間の無駄だし、そもそもお前如きが俺達に勝てると思ってるのか?」

「思ってる」


 まずは誰も逃げられないように、魔族と魔物、それに俺を含めて結界で囲う。


「喰らえ!」


 魔族は火の玉を放ってくる。1人が魔法を使うと、他の魔族達も一斉に火の玉を俺に向けて放つ。でも無駄だ。俺は結界スーツに加えて、自分を囲うように結界を張っている。火の玉は俺に届く事なく、結界に当たって消えていく。ただし爆風によって、周囲に土煙が巻き上がる。その土煙も結界に阻まれて俺には届かないけどな。

 火の玉が襲ってくる事、十数秒。長いな。俺1人に対して過剰な攻撃だな。やがて火の玉の攻撃が終わったらしく、土煙が晴れてくる。


「終わったか?無駄だっただろ?」

「馬鹿な!?」

「無傷だと!!?」


 魔族達は驚いている。


「防御の魔法を使う兆候は無かった筈だ」


 どうやら結界を張った事に気づいていないようだ。


「さて、土煙があると見えづらくなるから、魔法を封じさせてもらうぞ?」

「なんだと!?」


 …よし、これでもう魔族に魔法は使えない。さっき俺達を囲った結界に『結界内で魔法を使えない』という効果を付け足したからな。

 その効果のお陰で、魔族達は魔法を使えずにいる。魔法を使おうとしている兆候はあるけど、発動する瞬間に魔法が消えている感じだな。


「どういう事だ?!」

「構わん!轢き殺せ!」


 1人の魔族が言うと、魔物の大群が俺に向かって突進してくる。でも結界に当たると、俺とは逆方向に吹き飛んだ。俺とは逆方向、つまり魔族達に向かって吹き飛ぶ。自滅だな。吹き飛んだ魔族は動こうとしない。致命傷を受けたんだろう。結界には『衝撃を数十倍にして返す』効果を付けているからな。


「くそ!どうなってる!?」


 魔族達は混乱している。落ち着いて冷静になられても面倒だから、このまま倒すか。


「結界刃」


 そう呟いて横一筋の大きめの結界刃を魔族と魔物に向けて放つ。その大きさは全ての魔族と魔物を捉える程。結界刃は相手に向かうと、何に当たっても阻まれる事なく、全ての魔族と魔物を両断した。両断された魔族と魔物はその場に崩れ落ちる。俺は更に横一筋の大きな結界刃を放ち、両断した。何故かと言うと、魔族の生命力は強いという噂があるからだ。あくまで噂だから過剰な攻撃になったかもしれない。でもそれで手を抜いて相手が生きていた場合、不意打ちを喰らう可能性がある。結界があるから、どんな攻撃でも防げる自信はあるけど、それでも最初から2回攻撃しておけば、不意打ちをされる可能性がなくなるからな。


「さて、帰るか」

「大丈夫!?…って大丈夫そうね」


 帰ろうとしたら10代後半と思われる少女が走って来た。


「これ…1人でやったの?」

「そうだよ。きみは?」

「普通は自分が先に名乗るものだと思うけどね。良いわ、私はレイラ。Sランク冒険者よ」

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