30.次は護衛依頼
「帰りました」
「早いですね。途中で帰って来たわけじゃないんですよね?」
「はい。盗賊を15人、討伐して来ました」
俺の言葉にミオナさんは苦笑いする。
「本当のようですね。すごいです!次は護衛の依頼を受けますか?」
「はい」
という事で今度は護衛の依頼。護衛対象は馬車に乗ってる人と馬車。乗ってる人が誰かは教えてもらえないらしいけど、教えないって事は貴族だろうな。まあ、護衛対象が誰であっても関係ないんだけどな。王都から隣の街まで送り、そして街から王都に帰ってくる往復だ。
護衛の人数は俺を含めて5人。俺以外の4人は剣士が男女で2人、弓使いの女が1人、魔法使いの男が1人。
今度は盗賊を討伐した森とは別方向の森を抜けて、その先にある街に行く。
俺は許可を得て馬車に結界を張る。
「ラソマは防御系のスキルなのか?」
「いや、攻撃もできる。スキルの応用だよ」
道中、護衛の剣士が声をかけてくる。
「私、知ってるわ。この子は前のGランクだけの大会で優勝したの」
「そうなのか!?それでもEランクのはず…もうDランクになったのか」
魔法使いの人は俺を知ってるのか。いや、それよりも15歳なのに『子』って言われるのはなぁ。年齢は少ししか違わないと思うんだけど。
こんな風に喋りながらも、皆、周囲を警戒している。ちなみに俺も透視と千里眼で確認したけど、近くに敵となるような人も魔物もいない。ただ、このまま歩くと、盗賊がいるな。この世界は盗賊が多いんだろうな。人数は30人。さっきより規模が大きい。
「この先に盗賊が待ち構えてるね。人数は分からないけど」
一応、報せておく。情報の共有は大切だ。
「本当か?この距離で分かるのか?」
「うん、ぼやっとだから人数までは分からないけど。この調子で進めば20〜30分後には遭遇するんじゃないかな」
「すぐだな!」
人数は分かってるけど言わない。情報が正確すぎると、俺のランクだと、盗賊の仲間だと疑われる可能性がある。もっと高ランクになれば正確な情報を伝えても疑われる事はないと思う。それだけ高ランクの信頼度は高い。
進む事約20分。俺達は盗賊に取り囲まれた。人数は30人。
「おい!馬車と金、それに女を置いて去れ!」
「頭、殺した方が早いんじゃないですか?」
「それもそうだな。お前ら!野朗共は殺せ!」
「おう!」
盗賊達は剣を構える。
「さて、行くか!」
そう言って2人の剣士が盗賊達に斬りかかる。1人は身体能力強化系のスキルを持っているのか、動きが明らかに常人とは違う。もう1人は剣術系のスキルだろうか。俺の目では捉えられない動きで相手を翻弄して倒していく。
「私達も!」
「ああ」
弓使いと魔法使いは距離を取り、弓矢と魔法で攻撃する。
「気をつけろ!」
攻撃の手は緩んでなかったけど、数人の盗賊が馬車に向かって来る。でも俺の結界に寄って馬車の近くまで来る事はできない。それで盗賊が戸惑っているところを俺が結界刃で攻撃して倒した。
そんな感じで俺達が不利になる事はなく、30人の盗賊を全員倒す事ができた。盗賊の人数が多くても、こちらの人数も多かったから楽勝だったな。とにかく護衛対象が無事で良かった。怪我でもされたら俺達の評価が下がるし、それに伴ってギルドにも迷惑をかけてしまう。
その後、出発の準備ができたので、街に向けて出発した。
「ラソマの結界だったか?防御力は凄いな。護衛の依頼にはうってつけのスキルだ」
「でも盗賊を切ってもいたでしょ?防御だけのスキルじゃないと思うんだけど」
「それは秘密です」
俺は笑って誤魔化す。元々、皆も俺のスキルを暴きたいわけじゃないだろう。その考え通り、俺の言葉を聞いて皆も便利だとは言ったが、それ以上に突っ込んでくる事はなかった。
王都を出発して約2時間後、俺達は目的地の街に到着した。
それから約1時間の自由時間を経て、護衛対象者が用事を済ませた報告を聞いて、俺達は王都に向かった。
王都まで盗賊には遭遇しなかったけど、魔物には遭遇した。でも弱い魔物ばかりだから楽勝だった。
「ただいま戻りました」
「お帰りなさい。無事に達成できたみたいですね」
「はい。盗賊にも遭遇したけど、仲間もいたので危なげなく終わりました」
「それなら良かったです。やっぱり仲間が欲しくなりましたか?」
「こういう依頼の時は欲しいですね」
ただの討伐系ならともかく、護衛という誰かを守りながら依頼をこなすのは大変だと思う。結界があるから簡単なんだけど、それでも仲間がいた方が俺1人にかかる負担が少なくなる。
「仲間を集めてみますか?募集をかければ、一時的ではなく、ずっと組める仲間が見つかるかもしれないですよ?」
「いえ、俺はまだ1人で良いです。仲間がいた方が楽だし、楽しそうだとは思うんですけどね。でも今のところ、1人で依頼を達成できてますから」
「そうですか。でも気が向いたら言ってくださいね。募集をかけるので」
「その時はお願いします」
「はい。それでは、これからどうしますか?」
「まだ時間があるので、もう少し討伐系の依頼を受けます」
この日、それから俺は討伐系の依頼ばかりを数件受け、全てを無事に成功させた。
沢山依頼を成功させて、早く冒険者ランクを上げたいからな。
そんなことを考えていたけど、次の日は王都を散策する事にした。気づいたけど、俺は王都に来てからギルドと宿の往復、依頼の為に森、そういう場所にしか行ってなかった!せっかく異世界に転生したんだから、もっと異世界を楽しまないと勿体ない。すでに勿体ない時間を過ごしてしまったけど、今からでも大丈夫だろう。
という事で俺は王都を当てもなく、ぶらぶら歩いている。建物はほぼ一色で統一されていて綺麗だし、道は石で舗装されている。王都の中心には城がある。あそこにこの国の王族が住んでるんだろう。王都の外観も中世ヨーロッパ風で、城も綺麗だ。前世では海外旅行に行きたかったけど行けずに終わってしまったから、これは嬉しい!
でもあの城の中には、いくら伯爵家の次男でも入れないだろうなぁ。城の中も見てみたいけど…透視と千里眼を使えば見れると思うけど…我慢だな。
そういえば、俺が初めて王都に来た時に助けた王子もあそこに住んでるんだろうな。うーん、異世界物と言えばお姫様に出会う筈だったんだけどな…どうして俺は王子に出会ってしまったんだ…。
しばらく歩いて腹が減ってきたから、食堂に入る。異世界の食事は前の世界のものと似てるから、料理の内容で困った事はない。それも救いだな。
次に向かったのはスィスルが入学する予定の学校。生徒は全員貴族で、固そうなイメージがある。優秀な生徒が多く、俺なら入れないかもしれない。
「スィスルが上手く学生生活を送れるように、できる事はしないとな」
とりあえず王都で冒険者としてA、できればSランクになって有名になる。SランクはAランクとは格別に違い、そういう人が兄だと知られていれば、スィスルに手を出そうなんて思わないだろう。
それから公園で休憩をして、宿に帰った。
「なんだか、のんびり散策は柄に合わないな。散策する暇があるなら依頼を受けてランクを上げないと。明日からは、またいつも通りの生活に戻すか」
せっかく異世界に来ても、異世界の景色を満喫するよりも冒険者として冒険がしたいとは…。
そんな事を自分で考えて苦笑いしてしまう。
翌朝、俺はギルドに行った。
「おはようございます…って、なんだ?この雰囲気…」
ギルドに入るなり、ギルド職員達と冒険者達が集まって話をしている。全員が真剣な顔をしていて、何かあったような雰囲気だ。
「おはようございます。何があったんですか?」
まずは状況を確認しないとな。受付にいるミオナさんに話しかける。
「おはようございます。実は大変な事が起きてしまって…魔族の集団がここに向かって進撃しているんです」
「魔族がですか!?」
なんだか大変な事になってるようだ。




