27.トーナメント決着
ついにトーナメントの決勝戦になった。俺の相手は剣士の青年。さて、相手の攻撃を予知して、一気に終わらせるか。
予知通りに相手は俺に向かって剣を振ってくる。その攻撃を避けて、腹に殴ろうとしたけど、俺は咄嗟に後ろに下がる。予知で青年が素早く剣を振ったからだ。その予知通り、青年は剣を振る。しかしそこに俺はいない。青年は動きを止めて俺を観察している。
今までの相手と違うな。剣術関係のスキルか………なるほど、動作速度強化のスキルか。なぜ分かったのか。それは読心を使ったからだ。卑怯とは思わない。勝つにしても負けるにしても無様な試合だけはしたくないからな。
問題は相手の速度が速いのに、俺の速度が普通だという事だ。結界で防御は完璧だけど、せっかく今までカウンターでの勝ち方をしてきたんだから、それを貫き通したい。
「おっと!」
青年は素早く俺の前方に移動して、剣で切ってきた。でも俺の身体能力で避ける事はできない。そこで念動力で自分の体を動かして剣を避けた。
「何!?」
不思議な動きで避けたからか、青年は驚いて動きを止める。
俺の動きは足を動かさずに体が移動する動きだったからだ。
「ど、どうなってるんだ?!」
青年は驚きを言葉にしているけど、闘いの最中に真面目に答える人はいないだろう。俺は念動力を使った動きのまま、青年との距離を詰める。青年は剣を振ってくるけど、それは予知していたので避ける。そうして青年との距離を詰めると、腹を殴った。今までの相手と同じように青年は吹き飛び、地面に倒れる。起き上がってこないから、気絶してるんだろう。
「そこまで。優勝者はラソマ。よって、冒険者ラソマをEランクにする」
司会がそう宣言してくれて俺はEランクになった。大会は終わったけど、歓声はない。前世の世界だと格闘技の試合があれば、歓声があったものだけど、これはそういうものではないからかな。冒険者のランクを上げるためだけの大会だし。
そう思いながら客席を見回していると、伯爵と子爵が俺を見て何かを話している。良い話だと良いんだけど。
ん?あそこにいるのって…この前、森で会った妖精か。ここに来て大丈夫なのか?2人は俺を見て手を振っている。たぶん誰もその存在に気づいていないから、誰もいない場所に手を振り返したらおかしいと思われるかもしれない。だから微笑んでおいた。これなら、そこまで不思議ではない…はずだ。
ミオナさんだけ俺が誰もいない空間に微笑んだから、そちらを見ている。でも既に妖精は消えている。ミオナさんは首を傾げてこっちを見た。
大会が終わった後、俺はギルドの受付に向かう。そこで正式にEランク冒険者として認定されるからだ。
「おめでとうございます!」
「ありがとうございます」
ミオナさんが笑顔で、俺にEと刻印された新しいペンダントを手渡してくれる。
「やっぱり優勝しましたね!」
「俺の優勝を予想してたんですか?」
「はい。以前、ここで冒険者の方を無効化させた時、強いなと思ったので」
あの時か。確かに簡単に無効化したな。
「これからの活躍に期待してますね」
「はい」
「ところで、試合が終わった後、どうして誰もいない場所に向けて微笑んだんですか?」
「ああ、やっぱり気づきましたか。あそこに妖精が来てくれてたんです」
「よ、妖精ですか!?」
「はい。以前、依頼で森に行った際、妖精に出会ったんです」
「そうだったんですか。妖精に出会えるなんて運が良いですね」
「自分でもそう思います」
妖精と出会える確率は低いからな。本当に運が良かった。
それから少し雑談をして。
「今日はこれからどうしますか?」
「のんびりします。Eランク冒険者としての活動は明日からにします」
「分かりました。明日、お待ちしてますね」
「はい」
それから俺は宿に帰った。特にすることがないからだ。
翌朝、俺はギルドに行き、Eランクの依頼を受ける事にした。
「初めてのEランクの依頼だと、これが良いと思います」
そう言ってミオナさんが提示してくれたのはゴブリンの討伐依頼。ゴブリンか…。
「何か問題があるんですか?」
「え?」
「顔が不満そうだったので」
顔に出ていたのか。
「すみません。ゴブリン程度なら簡単そうだなと思ってしまったので」
「そうですね。ラソマさんの強さなら簡単かもしれません。でも油断は禁物ですよ?ゴブリンだってボスがいたり集団になれば策を練りますから」
「…分かりました。その依頼を受けます」
駄々をこねても仕方ないしな。さくっと終わらせてもっとやり甲斐のある依頼を受ける事にしよう。
その後、俺はゴブリンがいるという草原に来た。草原にゴブリンなんて見つけやすい場所にいるんだな。案の定、ゴブリンはすぐに見つけることができた。数は5匹だ。依頼書にも5匹のゴブリン討伐と書いてあったから、あれを討伐すれば終わりだろう。俺は念動力を使ってゴブリンの首を捻り殺して、ギルドに戻った。
「ただいま帰りました」
「ラソマさん、早いですね!もう依頼を達成したんですか?」
「はい」
俺が言うと、ミオナさんは受付の台に置かれている水晶のような球体を見る。
「それは何ですか?」
「これは嘘が分かる魔道具です。採取系の依頼は採取した物があるので嘘をつかれても判明しますが、討伐系の依頼は嘘を言われても確認のしようがありません」
「そこでその魔道具ですか」
「はい。これがあれば嘘をつかれても分かります。ラソマさんが嘘をついていない事も分かったので、依頼は達成です!」
まあ、その魔道具の事は知ってたけどね。でも実際に使っている人と、俺の知識と違う部分があるかもしれないから聞いておいた。結果は俺の知識と一緒だった。
「それにしても初めてのEランク討伐は、やっぱり簡単でしたか?」
「そうですね。簡単でした。次はもっと難しい依頼はないですか?」
「ラソマさんに仲間がいれば紹介できる依頼があるんですけど」
「どういうものですか?」
「オークの討伐です。おそらく集団でいます」
「分かりました。その依頼を受けます」
「え?!あの…仲間がいるんですか?」
「いないですけど…1人なら受けられないですか?」
「受ける事はできますけど…」
ミオナさんは不安そうな顔をする。俺の闘いを見ても不安になってしまうほどにオークは強いんだろうか。
「大丈夫ですよ。あの試合で見せた力が俺の全てではないですから」
「…分かりました。でも無理はしないでくださいね?無理そうならすぐに帰って来てください」
「分かりました。行ってきます」
次はオークの集団か。依頼書にあった場所は洞窟。透視で確認したら確かにオークが集団でいた。
さて、仲間がいないと大変だと言われたけど、この方法なら簡単だ。中に入らずに念動力でオークの頭を捻っていく。数が多かったから、数分かかってしまった。同時に全ての標的を倒す事ができれば良いんだけど…そこは要改善点だな。
「念の為に確認しておくかな」
一応、洞窟に入ってオークの死骸を確認しておこう。ただの洞窟かどうか分からないから、浮いていこう。これなら地面の仕掛けを踏まずに済む。動くものを感知して反応する罠はないだろうな。あれば、それでオークがやられるだろうし。
そんな事を考えながらオークの死骸を確認する。洞窟の中は曲がりくねっていたけど、ほぼ一本道。迷う事はないな。
「よし、洞窟の中に生き残っているオークはいないな。帰るか」
オークの殲滅を確認した俺はギルドに戻った。
「戻りました」
「お帰りなさい。え?もしかして達成したんですか?!」
「はい。洞窟内にいるオークを全て倒してきました」
その後、数も併せて報告する。俺の言葉に嘘を感知する魔道具は反応しなかった。
「本当みたいですね。たった1人でクリアしてしまうなんて凄いです!」
「やっぱりもっと難しそうな討伐依頼を受けたいですね」
「そうだろうな。ラソマ君ならもっと難しい依頼も達成できるだろう」
俺とミオナさんが喋っていると、後ろから男の人の声がした。聞き覚えのある声だ。振り向いて確認すると、思っていた通りの人だった。
「お久し振りです」




