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25.貴族からの依頼

「ただいま戻りました」

「お帰りなさい!」


 ギルドに戻った俺はミオナさんの元に向かう。


「薬草摘みは無事に終わりましたか?」

「はい。これが摘んできた薬草です」


 俺がマジックバッグ(と見せかけて異空間)からカウンターに出した薬草をミオナさんは調べる。


「はい、確かに全て薬草です。それではこれが報酬です。お金はどうしますか?」

「どういう事ですか?」

「お金はギルドで預かり、冒険者の方が自由に出し入れできるんです」


 銀行みたいなものか。


「それじゃあ俺の口座を作るわけですか」

「そうです。どうしますか?」

「口座を作ります」

「分かりました。それでは全額、ラソマさんの口座に振り込んでおけば良いですか?」

「いえ、少しだけ出してください。生活もあるので」

「そうですね、分かりました」


 そうして俺は受付で貰った報酬の一部を異空間に入れる。


「これから、どうしますか?」

「もう1つ、簡単な依頼をこなしてこようかと思います」

「分かりました。それでは同じ依頼だと楽しくないと思うので、別のものを紹介しますね」


 そう言ってミオナさんはカウンターに3枚の依頼書を出す。


「この中からお好きなものを選んでください。ラソマさんの強さなら物足りないかもしれませんが」


 毒草摘み、ドブさらい、荷物運び、か。俺のスキルで楽にできそうなのは荷物運びかな。


「荷物運びでお願いします」

「分かりました。一番難しいものを選びましたね」

「え?荷物運びが難しいんですか?」

「依頼内容より、依頼主です。この依頼主の方は子爵様ですよ?」

「依頼主は見てなかったです。でも俺のランクで子爵様からの依頼を受ける事が可能なんですか?」

「子爵様ご本人が大丈夫だと仰っていたので大丈夫だと思います」

「そうですか、分かりました。荷物運びは今日でも良いんですよね?」

「はい、いつでも大丈夫との事なので、受けるのであれば今から子爵様の屋敷に向かってもらいます。そこで子爵様に詳しい内容を聞いてください」

「分かりました、行ってきます」

「行ってらっしゃい、気をつけてくださいね」


 まさか冒険者になって2回目に受けた依頼が子爵からのものだとは。別に気後れするわけじゃないけど、今度からは依頼内容だけじゃなくて、依頼主も確認しないといけないな。


 そんな事を考えながら俺は子爵の屋敷に向かった。

 ちなみに魔族と遭遇した事は言わなかった。自分が住んでいる場所の近くに魔族が来ていたなんて不安を煽ってしまうからだ。

 それから妖精の事も言わなかった。妖精に会ったと言っても、世間的にあまり信じてもらえないからだ。ミオナさんなら信じてくれるかもしれないけど、そこまでして言う必要もない気がした。


「お前が俺の依頼を受ける冒険者だな」


 子爵の屋敷に到着した俺は使用人に案内されて、子爵(30代の男)と対面している。


「はい。ラソマです。よろしくお願いします」

「非力そうだが、荷物運びだぞ?大丈夫なのか?」

「ご心配には及びません。スキルもありますし成功させてみせます」

「うむ、そうか。まあ、失敗しても俺には何の問題もないしな」

「荷物は何でしょうか?」

「案内しよう。ついて来い」

「はい」


 子爵と執事の男性に案内された場所、屋敷の一室には1つの大きな箱があった。


「これが荷物だ。中身についての詮索は不要。持って行く場所は伯爵様の屋敷だ」

「分かりました。私が1人で運べば良いんですか?」

「いや、俺の執事を連れて行け。冒険者として何もしないとは思うが、1人で行かせるのは不安だ」

「では持ち上げますね」


 そう断りを入れてから、念動力で荷物の箱を宙に浮かす。その瞬間、子爵と執事が驚きの声を上げる。


「あの重さを一瞬で浮かせるとは!」


 あぁ、これは重たいのか。念動力で持ち上げたら、その物の重さが分からないんだよな。分かったところで何もないけど。


「そのまま浮かせて運ぶのか?」

「はい。このように動かせますから」


 そう言って前後左右に少しずつ動かして見せる。


「若い使用人でも10人がかりだったんだけどなぁ」

「旦那様、そろそろ」

「そうだな。いつまでも驚いているわけにはいかないか。よし、冒険者、執事の後について行け。運び終えたら執事と共に帰って来い」

「分かりました」


 どうやら名前は覚えてもらえていないようだ。まあ一冒険者の名前を貴族がいちいち覚えておく理由もないか。

 それから俺は執事に先導されて荷物を運ぶ。街中を運んでいる時は街を歩いている皆に1度は見られた。でも1度見たら、見向きもしなかった。やっぱり魔法がある世界だから、この程度は普通なんだろうな。元の世界で物を宙に浮かせて歩いていたら大騒ぎになっただろう。いや、撮影だと思ってすぐに騒がなくなるかもしれない。


 しばらくして俺たちは伯爵の屋敷に着いた。そこで伯爵家の執事に無事に荷物を渡す。


「こんなに早く来るとは思わなかったぞ」


 荷物の確認のために外に出てきていた伯爵が驚きの声を上げる。

 一方、荷物を渡された執事は呼び出した使用人に荷物を運ぶように言うが、重さが原因で運ぶ事ができない。


「旦那様」

「どうした?」

「荷物が重過ぎで皆では運べません。いかがいたしましょうか?」

「ふむ…冒険者よ、運んでくれるか?」

「はい」


 伯爵に言われたので念動力で持ち上げ、伯爵の執事に案内されて荷物を置く部屋まで行き、荷物を下ろす。


「ありがとうございます、助かりました」

「いえ、これも仕事の内ですから」


 執事がお礼を言ってくる。これも仕事なんだからお礼なんていらないのに。


「冒険者、名前は?」

「ラソマです」

「ラソマか。覚えておこう。これだけ仕事を早く完了させるのだから、俺もいつかお前を指名して仕事を依頼しよう」

「ありがとうございます!」


 やったね、もしかしたら、伯爵が仕事を依頼してくれるかもしれない。

 その後、依頼した子爵の屋敷に戻り、荷物を無事に届けた事を報告する。何の問題もなかった事を執事が話してくれる。


「そうか、まさかこんなに早く終わらせるとは思わなかった。冒険者よ、名前は?」

「ラソマです」

「ラソマか、覚えておこう。今度は指名依頼をするかもしれない」

「ありがとうございます!」


 子爵も伯爵と同じで、俺を指名依頼してくれる可能性があるようだ。貴族からの依頼があるかもしれないなんて、冒険者として幸先の良いスタートになったんじゃないだろうか。

 その後、俺はギルドに戻った。


「ただいま帰りました」


 ギルド受付のミオナさんに報告する。


「お帰りなさい!依頼は成功しましたか?」

「はい、無事に成功しました。もしかしたら指名依頼をする、というような言葉もいただきました」

「それは凄いですね!この調子でどんどん頑張ってください!」

「ありがとうございます」


 ミオナさんにそう言われると、頑張ろうっていう気持ちが強くなるな。


「この後はどうしますか?」

「今日はこの辺で終わりにしておきます。また明日から大会まで簡単な依頼をこなしていきます」

「分かりました」


 それから俺は宿泊している施設内の自室に戻る。

 さて、大会の対策を考えるか。

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