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21.馬車の中の人の正体

「皆様、今から体を浮かせます」


 王族の人と兵士たち、それに馬車を結界で囲み、宙に浮かせる。浮かせると言っても、そこまで高くは浮かせていない。30センチほどだ。


「うおっ!?」


 それでも何人かの兵士は驚いている。でも馬車の中から声は聞こえなかった。王族としてプライドがあるんだろうな。


「では進みます」

「おっと…ふむ、なかなか面白いスキルですね」


 兵士長が驚きながら言う。さすが兵士長はあまり驚かないな。


「ん?前方に何かいないか?」

「魔物です!」


 馬車の中の男性が気づき、兵士長が魔物だと断定して剣を構える。


「止めてください!」

「大丈夫です。結界を張っているので、このまま進みます」

「何を言ってるんですか!?」


 兵士たちは驚いているけど、結界の効果を知らないからだろう。驚く兵士をそのままにして、俺は3匹の犬型の魔物に突き進む。魔物は俺たちに気づいて吠えたり、突進してくるものもいる。でも俺の結界の前には無力だ。魔物たちは真っ直ぐ突き進んでくる俺の結界に当たって弾き飛ばされる。殺す必要はないから、弾き飛ばすだけだ。それでも結構な勢いで地面に衝突するから、その衝撃で気絶していく。俺はそんな事を気にせず、そのまま道を進む。


「い、今のは?」

「私の作っている結界に弾き飛ばされたんです。結界は…相手の攻撃を防げる部屋だと思ってください。魔物が吹き飛んだのは、その結界の効果です」

「そんな事もできるんですね」

「はい。ですから安心してください」


 それからも数回、魔物に遭遇したけど、どの魔物も結界に弾き飛ばされて、気絶するか戦意喪失していった。


「これはかなり有用な移動手段ですね」

「そうですね。移動手段のスキルではないですけど、使い方でこのように安全な移動ができるようになります」

「どのようなスキルかは…教えてもらえないですよね?」

「はい。隠す必要もないんですが、これから冒険者を目指す者としては、自分の能力を隠しておきたいというのが本音です」


 結界や念動力は言ったけど、超能力というスキルについては言わない。正直、説明するのが面倒だからな。でも聞かれて、どうしても言わなければいけない時のための理由は考えてある。

 それは大魔法と同じようなもの、だ。大魔法はスキルの名前は大魔法と1つだけだけど、スキルの内容は様々な魔法を使えるというもの。俺のスキルも名前は超能力と1つだけど、内容は様々な超能力を使える。大魔法と似ているから、これで通じると考えている。


 そうしているうちに俺たちは王都の門に到着した。時刻は既に夕方になっていた。

 兵士長が門の兵士に近づき、小声で事情を話している。聞いた門兵は驚いて仲間の門兵に何かを伝える。しばらくして王家の紋章が付いている馬車が到着した。


「それでは殿下、こちらにどうぞ」

「ああ」


 俺が運んできた馬車の中から男が下りてくるので、俺はすぐに片膝を地面につける。っていうか、殿下って呼ばれなかったか?


「ラソマよ、今回は助かった。感謝するぞ」

「勿体ないお言葉です」

「これは俺や兵を助けてくれた礼だ」

「ありがとうございます」


 殿下と呼ばれた男は俺に小袋を渡す。受け取った感触からするとお金かな。正直、お金は自分で稼ぐつもりだから要らないんだけど、王族の方が渡してくれる物を断るわけにはいかない。

 そして殿下と呼ばれた男は用意された新しい馬車に乗り込み、馬車は出発した。


「あの、今のお方は殿下と呼ばれていましたが?」


 気になって兵士長に聞く。


「そうです。第二王子殿下です」

「そ、そうだったんですか」


 驚きだ。王族だとは思っていたけど、王子だとは思わなかった。そんな人が城の外に出ているなんて想像できない。何の用事があって城の外に出たんだろうな。とはいえ、それは聞いても教えてもらえないだろうな。逆に怪しまれるかもしれない。


「それでは私はこれで」

「今からどこに行くんですか?」

「冒険者ギルドに行って、冒険者登録を済ませてきます」

「そうですか。ラソマ様ほどの実力があれば冒険者としても生活していけますね。頑張ってください」

「ありがとうございます」


 お礼を言って門兵に近づき、通行料を払おうとする。しかし断られた。


「必要ない。第二王子殿下が礼にと、お前のぶんを払ってくださっている」

「そうだったんですか」


 俺は門兵に頭を下げて王都に入った。ちなみに門兵が俺をお前と呼んだのは、俺のことを知らないからだ。ただの少年なんだから、お前と呼ばれても当然だな。


「ここが王都か」


 父さんの領地の街とは全く違い、大きな建物が沢山ある。勿論、父さんの領地の街が悪いわけではない。あそこは良い意味で田舎風で、前世の実家を思い出す。

 でもここは大都会だな。歩いている人も老若男女、様々な種族がいる。

 …さて、いつまでも王都に感動しているわけにはいかないな。ギルドに行って冒険者登録をしないと。

 街の人に聞きギルドの場所を知った俺は、すぐにギルドに向かう。


「ここがギルドか…大きいな」


 父さんの領地のギルドは3階建てだったけど、流石、王都のギルドは5階建てだ。まあ2階しか違わないけど。それでも木造の建造物が多い中で5階建ての建物を造るのは凄いと思う。


「…よし、入るか」


 覚悟を決めてギルドに入る。

 中は前に見たギルドが広くなった感じで、特筆する事はない。でも人は多い。ギルド職員がいる受付に行こうとしたけど人が多かったので、列に並ぶ。しばらくして、俺の番になった。


「ようこそ。御用は何ですか?」


 受付の若い女性職員が笑顔で応対してくれる。


「冒険者登録をしに来ました」

「分かりました。それでは、この紙に必要事項を記入してください」


 そう言って職員が俺に紙を手渡してくれる。そこには名前や性別、年齢などを書く項目がある。


「文字は書けますか?」

「大丈夫です」


 この世界には文字があるけど、何らかの理由で書けない人もいる、というより書けない人の方が多い。

 名前は…


「あの、嘘を書いてはいけないんですよね?」

「駄目ではないですけど、なるべく本当の事を書いた方が良いですね。あとで嘘が発覚した時に冒険者としての信用を失う可能性があります」


 それは嫌だな。信用を無くすという事は仕事が減るという事だ。それは避けたい。仕方ない、名前は本当の事を書くか。名前は、ラソマ・レミラレス、と。貴族として扱われたくないけど、大丈夫かな?


「この書類は誰が見る事ができるんですか?」

「個人情報なので担当した私とギルドマスターしか見る事ができません。ただ犯罪に関わるような事だと、他の職員でも見る事はできます」

「なるほど」


 まあ、それなら安心かな。

 その後は普通に書いていき、特技のところでペンを止めた。


「この特技というのは何ですか?」

「自分のできる事です。簡単で良いですよ。攻撃が得意なら攻撃、防御が得意なら防御でも構いません。これは冒険者が受けた依頼を1人でこなせないと思った時に臨時でパーティを組む際、どういう人を求めているかの指標になるんです」


 自分には荷が重い依頼を受ける人もいるんだな。そういう事をすると、その冒険者の信用が落ちそうだ。俺はあまりしたくないな。

 そして記入し終えた俺は書類を職員に手渡す。確認のためか書類を見ていた職員は驚いた表情をしたけど、すぐに普通の笑顔に戻った。


「大変、失礼しました。まさか伯爵様のーー」

「気にしないでください。俺は冒険者として活動したいだけで、貴族の権利を振りかざしたくないので」

「では秘密にしておいた方がよろしいですか?」

「そうですね。普通の冒険者と同じように接して頂けると有り難いです」

「分かりました」


 さすがプロ。貴族を前にしても落ち着きを取り戻すのが早いな。ちなみに俺たちの会話は誰にも聞こえていない。他の人が後ろに並んでいるけど、距離があるから書類も見える事はない。

 職員は確認し終えた書類を受付の机の引き出しに入れると、代わりに金属製のペンダントを渡してきた。ペンダントには小さなプレートが付いていて、そこに俺の名前、ラソマと、Gという文字が刻印されている。Gというのはおそらく冒険者のランクだろう。ランクは最高のSから最低のGまであるからな。


「これは?」

「冒険者の証です。最初は無料ですが、無くすと再発行にお金が必要なので注意してくださいね」

「分かりました。それにしてもプレートができるのが早いですね」

「そういう魔道具がありますから」


 成る程。魔法がかかった道具、魔道具か。

 そして冒険者としての説明が始まった。

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