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17.自分の将来

「父様、母様、話があります」


 ある日、朝食を食べ終えた時に俺は話しかける。


「なんだ?」

「僕も13歳です。そろそろ自分の将来を考えないといけないと思うんです」

「そうだな。伯爵を継ぐわけでもないからな」

「はい。今まで考えていたんですけど、僕は冒険者になりたいです」

「…なに?」


 う…急に父さんが真剣な顔で俺を見る。普段はそこまで怖くないけど、真剣な顔をしている父さんは迫力があるな。いやいや、気圧されてはいけない。


「僕のスキルなら冒険者が向いていると思うんです。攻撃もできるし、防御もできます。索敵もできます」

「だが冒険者は危険も伴う仕事だ。自分の力量に見合わない魔物に遭遇してしまったらどうする?逃げる事ができれば良いが、できなければ死を覚悟しないといけない。その覚悟はあるか?」

「それはありません。そもそも僕には結界がありますから不意打ちを受けても1度なら防げる筈です。防ぐ事ができれば瞬間移動で安全な場所に移動できます」

「それはそうだが…」


 俺の言葉を受けて父さんは黙ってしまう。


「よし、冒険者を雇おう」

「…え?」


 父さんの唐突な言葉の意味が分からない。


「雇った冒険者をラソマの先生にする。そしてラソマが冒険者として生きていけるかどうかを判断してもらおう」

「なるほど」

「もし無理だと判断されたら諦めるんだぞ?」

「分かりました」


 諦めたくはないから、絶対に認めてもらえるように頑張ろう!いったい、どんな冒険者が先生として来てくれるのかな?楽しみだ。


 数日後。屋敷に3人の若い男女が訪れた。俺は今、父さんとその3人と同じ部屋にいる。


「初めまして。私は冒険者のセイチ。剣士をしています」

「私はレイビス。武器は弓矢」

「ちょっと!敬語を使いなさい!私はウィース、魔法使いです」


 3人の男女はそれぞれ自己紹介する。この3人が、俺が冒険者として生きていけるかどうかを判断してくれる先生だ。


「僕はラソマ。よろしくお願いします」


 冒険者は平民だから、あまり敬語を使うのは良くないけど、この3人は先生だからな。兄さんやスィスルも先生には敬語を使っている。


「こ、こちらこそよろしくお願いします!」


 先生は俺という貴族に敬語を使われたから恐縮してしまった。まあ、その気持ちは分かるけどね。


「依頼の通り、3人にはラソマが冒険者として生きていけるかどうかの判断をしてもらう」

「どのような基準で判断すれば良いですか?」

「任せる。3人の経歴を見たが、判断を任せても問題がない人物だと思っている。ラソマ、彼らは若いが実力は確かだ。ランクもBだからな」

「それはすごいですね!」


 冒険者のランクは上がS、下はGまである。3人の年齢はセイチが28歳、レイビスとウィースが25歳でまだ若い。それなのにBランクまで上がれるなんて、実力があると同時に努力もしてきたんだろうな。


「ラソマ様は冒険者のランクをご存知なんですか?」

「はい、冒険者になりたいと思ってからは、冒険者やギルドについて調べてきましたから」

「そうでしたか」

「…さて、顔合わせも済んで落ち着いたところで、3人に約束してもらいたい事がある。ラソマのスキルは特殊でな。そのスキルの内容を誰にも言わないでもらいたい」

「勿論です。人のスキルについて、誰かに吹聴するなど絶対に致しません」


 セイチが真面目な表情で言う。


「絶対か?」

「はい。約束を守れないようでは冒険者としての信用を失い、その結果、仕事がまわってこなくなりますから」


 ウィースの言葉に納得する。冒険者、ましてや高ランク冒険者なら信用はとても大切なものだろう。


「…追加料金による」


 レイビスが親指と人差し指で輪っかを作りながらそんなことを言う。その瞬間、ウィースがレイビスの頭を軽くはたいた。


「冗談でも止めて!?不敬罪で殺されちゃうよ?!」

「すみません!こいつはこういう冗談が好きで…少し状況を読まないんですが…勿論、追加料金など要りません!口外しない事を約束させます!」

「フ…ハハハハハッ!」


 父さんが急に笑いだした。


「大丈夫だ、気にしていない。情報通りの3人だな」

「情報、ですか?」

「うむ。多少、場を弁えない冗談を言うが、仕事はきちんとこなす信頼できる冒険者だとな」

「そ、そこまで褒められると恐縮です」

「それでは息子を頼んだぞ」

「「「はい」」」


 その後、俺と先生たちは庭に来た。


「さて、それではラソマ様、冒険者になりたいと言う事ですが、どのような事ができますか?」

「セイチさん、僕のことはラソマで良いですよ」

「いえ、そのような事はできません」

「良いんです。3人は僕の先生であり、僕は生徒なんですから」

「うーん…分かりました。しかし呼び捨ては流石にできないので、ラソマくんで良いですか?」

「分かりました。それでは今日からよろしくお願いします」

「よろしくね、ラソマくん」

「レイビス…」


 敬語なしで普通に喋りかけたレイビスさんにウィースさんは呆れている。でも、そのくらいフレンドリーな方が俺は嬉しい。もし俺が冒険者になれば、冒険者として先輩になるわけだしな。


「それじゃあ、早速だけど、ラソマくんは何ができるんですか?」

「スキルの内容ではなく、どのような事ができるのかで良いですよ?例えば、俺…いえ、私は」

「俺で良いですよ。僕は伯爵の息子でも次男なので、そこまで改まらなくても気にしないです」

「そ、そうですか?ありがとうございます。実は言いなれていなくて…では改めて…例えば俺なら剣士だから剣技を使った攻撃ができます。レイビスの武器は弓矢で、遠距離からの攻撃ができます。ウィースは魔法を使い、攻撃魔法と補助魔法が使えます」

「えっと僕は攻撃と防御、それから索敵ができます。攻撃は遠距離が得意です」

「…え?攻撃も防御も索敵もできるんですか?」

「そうですね」


 念動力で攻撃、結界で防御、透視や千里眼、それに読心で索敵。なんでもできるな。


「スキルは魔法なの?」

「いえ、違います。超能力というスキルです」

「超能力、ですか?聞いた事がないですね」

「神父様も初めて聞いたらしいです」


 それから俺は超能力スキルについて大まかに説明する。読心や透視は言えないけどな。


「本当に俺たちに話しても大丈夫なんですか?」

「だってセイチさんたちは秘密にしてくれるんでしょう?それが冒険者の信頼に繋がるんですから」


 正直、そこまで秘密にする必要がないと考えている。勿論、結界に色々な効果をつける事ができるとか、複数の超能力を同時に使えるとか、そういう事は言わないけど。


「そこまで信用して頂けるとは…感激です!」

「そ、そう?」

「はい!」


 …感激してくれて良かった。そんな感激されるような事は言ってないけど。


「ラソマくんは魔物を倒した事はある?」

「前にBランクの熊の魔物を倒しました」

「1人で?」

「はい」

「そう…Bランクの魔物を倒すなんて、超能力というのは強力なスキルなんですね」

「それだけの魔物が倒せるなら冒険者としてやっていけそう」

「でも実際に倒すところを見てみたいな。ラソマくん、倒すところを見せてもらっても良いですか?」

「勿論です!」


 それから結界を利用した移動方法で森に行く事になった。本当は瞬間移動でも行けるんだけど、瞬間移動は珍しいものだから話さないでおいた。目立ち過ぎるのも良くないからな。


「前はこの辺りで魔物に遭遇しました」

「そ、そうなんですか」

「ウィースさん、大丈夫ですか?」

「はい…少し慣れない動きだったので」

「ごめんなさい」

「いえ!ラソマくんが悪いわけではないですから!」


 やっぱり結界を使った移動方法を最初に経験した人は気分が悪くなるのか。歩くより早く移動できるから便利なんだけどな。


「でも屋敷から近い場所でBランクの魔物に遭遇するなんて…」

「珍しいですよね?」

「そうですね。いてもDランク程度だと思いますし…」


 何か原因があるんだろうな。でも今の俺には何もできない。冒険者になれば異変の調査なんていう依頼もあるかもしれないから、その時に調べられるな。


「それでは魔物が出たら倒してください」

「はい」


 とは言っても魔物が出るまで散策するのは面倒だな。千里眼と透視で魔物を探すか。

 …あっちの方向に前に遭遇した熊の魔物(Bランク相当)が2匹いるな。


「あっちの方向にBランクの熊の魔物がいます」

「分かるんですか?」

「はい。行きましょう。2匹もいるし、ちょうど良いです」

「に、2匹…」


 ウィースさんが不安そうな声を出す。心配しなくても、あの魔物は俺の結界を壊す事はできないから大丈夫だよ。

 さて、久し振りの戦闘だ!

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