16.今度は空間まで
時間操作ができるようになってから1年近くの時が経った。どれだけの時間を止めていられるかを知る為に実験している土は一向に落ちる気配を見せない。やっぱり他の超能力と同じで、制限がないのかもしれない。
『新しいスキルを解放します』
今年もあるのか。もう13歳なんだけどな。
今度の超能力は空間操作か。文字通り、空間を操作できるようだ。時間の次は空間か。また検証する事が多そうだ。
朝。朝食の席で新たなスキルが解放された事を家族に報告する。
「今度は空間操作か」
「そのような魔法はありますか?」
「ある。ただ、時間魔法と同じで誰でも使えるわけではない」
空間を操る魔法なんて、大規模なものになりそうだもんな。そんなホイホイ誰でも使えるものではないか。
その後、いつものようにアミスと共に屋敷の庭に来た。
「今度は空間操作ですか。何ができるんですか?」
「異空間に行けるらしい」
「異空間、ですか?」
「うん。この空間とは別の空間だね。どういう場所なのかは分からないけど、具体的なやり方も分かってるからやってみるよ」
「ちょ、ちょっと待ってください!その異空間に行っても大丈夫なんですか?」
「大丈夫だと思うよ。僕のスキルなんだし、それこそ使いこなせるようにならないといけないからね」
「そうですけど…心配です」
「大丈夫。僕を信じて。まず、異空間への入り口を開けるよ」
アミスは納得していなかったけど、俺を信じて、という言葉で反論はしなくなった。まあ疑われているわけじゃなくて心配されてるだけだからな。でも自分のスキルだから安全だという自信だけはあるんだよな。
さて、目の前に集中して異空間への入り口を作る事を念じる。すると目の前に扉が現れた。
「…扉?」
「これが異空間への入り口ですか?」
「その筈だけど…」
もっと異質なものを想像していたんだけど、まさか普通の扉とは。
扉を開けようと思ったけど、その前に扉と俺たちを中心に結界を張っておく。予想していない事が起きる可能性があるからだ。
「開けるよ」
俺はそう言って扉を開ける。開けた先は真っ白な空間だった。本当に真っ白で、先が見えない。なんとなく女神様のいた世界に似てるな。まあ違うだろうけど。
さて、入ってみるか。まず一歩、足を踏み入れる。すると足は着地した。どうやら地面はあるみたいだ。さらに俺は体を進め、全身が異空間に入った。
「ラソマ様、大丈夫ですか?」
「うん、大丈夫だよ。でも真っ白すぎて目が疲れてくるな。どうせなら景色が自然なものの方が良いな」
「確かに真っ白はキツいですね」
「うん。地面が見えないのも微妙だ。どうせなら草原が良いな」
そう呟いた直後、足下に草原ができた。足下だけじゃない。遠くまで草原ができている。異空間だから言い方が分からないけど、例えるなら地平線まで草原だ。
「どうなってるんですか?!」
俺も驚いてたけど、アミスも驚いている。
「分からないけど、僕が口にした直後に変化したから、僕の意思に反応したのかな。それなら…上は青空が良いな。真っ白な雲が浮かんでいると、なお良い」
そう言った直後、思った通り、見上げると、そこには青空ができていた。白い雲もある。面白いのが、太陽がない事だ。それなのに明るい。面白いな。
「どうやら、この空間は僕の自由にできるみたいだ」
試しに前方に湖を作る事を想像したら、実際に湖ができた。
「すごいです!」
「それじゃあ次は中に入って扉を閉めてみるね」
「無事に帰ってきてくださいね?」
「勿論だよ」
危ない場所だとは思わないしね。
中に完全に入って扉を閉める。扉は消えずに、そこにある。…うん、別になんの変化もしないな。あまり長くいるとアミスが心配するだろうから、帰るか。
俺は扉を開ける。すると外からアミスが勢いよく入ってきて俺に抱きついた。
「ど、どうしたの?」
「不安だったんです!ラソマ様がいなくなってしまったと思って…」
「そんなに長い時間じゃないよね?」
「はい。でも閉まったと同時に扉が消えてしまったので」
「え?消えた?」
「はい。それでどうしようか迷っている時に扉が現れて、勝手に開いたらその中にラソマ様が見えたんです」
「それで、この状況になる、と」
「も、申し訳ありません!」
アミスは俺から離れて謝ってくる。
中に入ってドアを閉めると、外からはドアが見えなくなるのか。いざという時の避難場所にうってつけだな。
「ごめんよ、アミス。まさか外から見えなくなるとは思わなかったんだ。それで次の実験をしたいんだけど、良い?」
「はい。でもあまり心配させないでくださいね?」
「う、うん」
今の言い方がすごく可愛かったから、つい返事が遅れてしまった。
「次の実験はまず、僕だけ異空間に入ってドアを閉める。そして、あそこの辺りにドアを開けてみるよ」
そう言ってドアの外に見えている塀の方を指差す。
「入る場所と出る場所を変えてみるんですね?」
「そう。うまくいけば面白いと思わない?」
「思います!瞬間移動を使わなくても私の部屋に入れますね」
「…入らないよ。それじゃあ、ここから出てくれるかな?」
「はい」
アミスが異空間から出たので俺はドアを閉める。そして出る場所を念じながらドアを開ける。向こうにアミスが見える。外に出て後ろを見ると塀があった。成功だ。
「アミス、成功したよ」
「ラソマ様、無事で良かったです!」
危ない実験はしていないからね。俺はアミスの傍に瞬間移動する。
「これで実験は終わりですか?」
「いや、この異空間をマジックバッグの代わりにできないかと思うんだ」
この世界にはマジックバッグと呼ばれるアイテムがある。外見はただの小さい袋だけど、中には沢山の物を入れる事ができる。しかも、例えば水と泥水を入れても袋の中で混ざる事がない、不思議な物だ。入れられる量はマジックバッグの値段で変わり、高ければ多くの物が、安ければ少ない物が入る。
「異空間の時を止めてしまえば、中に入れた生の物でも腐る事がないよね。熱いものも冷たいものも、それぞれ熱い異空間、寒い異空間みたいに分ければ、なんでも入れる事ができる。異空間内の環境は僕の自由にできるはずだからね」
「すごいです!ラソマ様だからこそ、できる事ですね!」
「空間魔法使いでも作れるんじゃないの?」
「マジックバッグが空間魔法使いの製作品ですからね。でも他にできる人はいません」
「そうか…そうだろうね。それじゃあ、マジックバッグを、異空間を使って再現してみようかな」
「成功する事を楽しみにしています!」
「うん」
アミスにここまで期待されたんだから成功させないとな!
その日から俺はマジックバッグを、異空間を使って再現する実験を始めた。
正直、拍子抜けするほど簡単にできてしまった。それに収納する物は瞬間移動で異空間に転送する事ができるため、異空間のドアを開けずに物を収納する事ができる。逆に異空間から瞬間移動で出す事もできる。
「本当に実現できるなんて、やっぱりラソマ様はすごいです!」
実験に成功した事をアミスに伝えると、称賛してくれた。頑張った甲斐があった!…いや、簡単にできてしまったから、そんなに頑張ってないんだけどな。
何はともあれ、俺にできる事は段々と増えている。これだけできれば、俺の夢も叶えられるはずだ。俺の夢、それは冒険者になる事!
父さんと母さんは賛成してくれるだろうか。それが不安だ。できれば賛成してほしいな。反対された状況で冒険者になるのは嫌だ。
よし、明日、話してみるか。




