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1.事故と転生

「はぁ…今日も疲れたな…」


 午後11時、ようやく仕事が終わり、俺は住んでいるアパートに向かって海沿いの道を車で走っている。毎日、とにかく残業が長くて、ヘトヘトになってしまう。ただ、そのぶん給料が良いんだ。仕事は大変だけど、貯金という面で言えば辞めたくない。難しいところだ。


「まあ頑張るか」


 体調は気になるけど、生きるためだ。気にしてもいられない。生きる事を考えるのに体調を気にしないのも矛盾してる気がするけどな。

 今からコンビニで夕飯を買って家で食べて、寝支度を済ませて朝起きて仕事に向かう…休日は日曜日だけだし、ハハハ、何もできないな…はぁ…


「…嘘だろ…」


 もう少しでいつも寄るコンビニに着く、そんな時、右カーブを曲がった先、対向車線から俺の走る道に大型トラックがはみ出して走ってきた。右カーブの先は俺が崖側を走っているから見えなかった。ヘッドライトがガードレールに映っていたから車が来ていたのは分かっていたけど、まさかはみ出してくるとは…。片側1車線だから避ける場所がない。逃げられないと覚悟を決めた俺の運転する車は大型トラックと正面衝突した。


 次の瞬間、俺は真っ白な空間にいた。


「…あれ?ここはどこだ?」

「あの世の一歩手前よ」


 俺の独り言に返事があった。声のした後ろを振り返ると、そこには1人の若い女性が立っていた。


「きみは?」

「私は女神よ」

「女神…」


 状況が全く分からない。女神なんて存在が本当にいるのだろうか。それにしても綺麗だな。


「ふふふ、ありがとう」

「え?!」

「女神だもの。この空間に存在する限りだけど、相手の考えている事が分かるの」

「そうなんですか。それじゃあ、変な事を考えられないですね」


 俺は苦笑いしてしまう。


「大丈夫。そういう女性を相手にした時の男性の考え方は分かっているから。それに私は女神。いちいち人間の男性の考え方を知って動揺なんてしないわ」

「そ、そうなんですか」


 それでも女神様を相手に邪な考え方をしてしまうのも失礼だしな。自重しないと。


「それで、どうして俺は女神様の前に?」

「覚えていない?あなたは死んだのよ」


 …確か俺は車で大型トラックと正面衝突したんだったか…そうか。俺は死んでしまったのか…。25歳で死んでしまうとは…。


「それで、あの世の一歩手前だと仰ったんですね。じゃあ俺は天国か地獄に行くんですか?」

「いいえ、元の世界か異世界に転生するわ」

「え?」

「不幸だった人生や、突然の事故なんかで死んだ場合、転生する事になってるの。それじゃあ、くじ引きを引いて?」


 女神様がそう言うと、俺の前に2本の棒が入った円形の白い筒が現れた。


「どちらか一方を引いて?一方は元の世界、もう一方は異世界よ」


 元の世界か…嫌な思い出しかないな。できたら異世界が良いなぁ。そんな事を思いながら俺は一方の棒を引く。引き出した棒の先端には異世界と書かれていた。


「おめでとう!あなたは異世界に転生する事に決まったわ」

「よかった…異世界に転生したいと思っていたんです!」

「願いが叶ったわね。それじゃあ、新しい人生を楽しんで」

「ありがとうございます!」


 俺がお礼を言って頭を下げた瞬間、視界が真っ白になる。それに立っているような感覚もなくなった。

 生まれ変わったら、この記憶もなくなってるだろうけど、女神様に会えるなんて、辛い人生だったけど、良い経験ができたな。新しい人生が楽しみだ!




「よく頑張ったな。そうか、この子が俺たちの新しい家族なんだな」

「ええ。貴方と私の大切な子」


 2人の男女の声が聞こえる。あれ?俺は異世界に転生したんじゃなかったのか?俺はゆっくりと瞼を開ける。眩しいな。


「おぉ!目を開けたぞ!」

「ええ!」


 さっきの声だ。見てみると、俺の視界に2人の若い男女の顔が映った。


「ああああいあ?(貴方たちは?)」


 な、なんだ!声がおかしいぞ!?


「喋ったわ!」

「ああ、確かに喋ったように聞こえる!語尾が疑問形になっていたのも分かる」

「何を聞いたのかしら?」

「俺たちを見て聞いたんだから…俺たちが誰なのか、ではないか?」

「そうかもしれないわね!」


 あんな言葉になってなくても通じたよ。


「俺はエギルフ・レミラレス伯爵。お前の父親だ」

「私はマース・レミラレス。あなたの母親よ」


 俺の父さんと母さん!?顔立ちは元の世界の西洋人みたいだな。


「僕も!僕も!」


 ん?少年の声が聞こえる。父さんと母さんの他に誰かいるのか?そう思っていると、俺の顔の横に1人の少年が現れた。


「僕はオスエ!」

「あなたのお兄ちゃんよ」


 少年は俺の兄さんか。一人っ子だったから、兄弟がいるのは嬉しいな。


「それじゃあ、次はあなたの名前ね」

「そうだな。お前の名前はラソマ。まあ、まだ分からないだろうけどな」

「でも、もしかしたら分かってるかもしれないわよ?」


 母さんはそう言って優しく微笑む。綺麗な人だな。父さんも凛々しいし、美男美女の夫婦か。

 前の人生では彼女もできなかったから、そんな状況が羨ましい。前世のぶんまで、俺はこの世界で幸せになろう!


 ………あれ?そういえば、どうして前世の記憶があるんだ?転生するなら記憶も消えているはず。前世でテレビなんかでは、たまに前世の記憶をもっている人が紹介されてたけど、俺もそんな感じか?

 まあ…あって損でもないしな。気にしないでおこう。今は転生できた事を喜ぼう。そして本当に転生させてくれた女神様に感謝しよう!

 ありがとう!女神様!!

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