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忘れちゃいけないもの  作者: 冴あき
第一章 ー鶴見編ー
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準備と挨拶

 ご令嬢が現れなくなって1週間が経った。月も変わり7月だと言うのに、まだ雨は続きジメジメとした暑さ。夏がもうすぐそこなのに梅雨明けもまだ先だ。今日も朝から小雨が降り、電車を降りると傘の花が開く。今日は朝早く起きてしまい、時間が余ったので店近くの早く開く喫茶店で軽く朝食を採ろうと傘を折りたたみ、店内に入る。


 すると少し大きめのテレビからニュースが流れていた。昨日の株価とあるニュースが目に止まった。アナウンサー曰く、全国展開しているチェーン店が閉店に追い込まれていると言うニュースだった。それを見て少し驚いた。聞き覚えのある名前の会社だったからだ。アナウンサーが言うには、モントロンダの取締役が代わり、あるカフェチェーングループに合併されると言うニュースだった。


 モントロンダとはあの先日まで店に来ていたご令嬢の会社のはず。その会社が今窮地に起たされていると報道されていた。何食わぬ表情でテレビを見ていたが、それには食べていたサンドウィッチのトマトを落とすほどの衝動があった。

「大変なんだなぁ・・・」と一人平然と呟く俺だったが内心は少しドギマギしていた。


 そんな朝食を済ませ、いつもより早い時間帯に店に顔を出すと、アルバイトの菊池さんが早々に着替えを終えて店内の清掃を行っていた。店は8時開店。今の時間はいつもなら森さんが準備をしているはずだが、本日は代休をとっていたため菊池さんが一人精を出していた。


「おはようございます!」

「あれ?河野くんは?」

「いえ、まだですけど、あと10分ぐらいで来ますよ。それより今日はかなり早いですよね?」

「あぁ、うん。ちょっと寝付けなくてね」

「へぇ、副店長もそんなことあるんだ」

「何それ?バカにしてるん?」

「いえいえ・・・さぁ?副店長も準備!」


 そう促されてドリンカーの清掃とキッチン周りの準備に取り掛かっていた。するとこの朝早くから来たことがない勝田店長が元気よく店に入ってきた。


「あれ?店長珍しいですね?」

「おいおいそれは無いだろう・・・今日は初出勤の子を迎えにちょっとね」

「初出勤?またアルバイトの子取ったんですか?」

「おいおい・・・シフト表ちゃんと見てるか?」


 いつもならそんなの見なくても朝入るメンバー一緒だからと言う勝田店長が今日に限って少し機嫌斜めだ。ご機嫌が麗しく無いと言うよりも少し緊張されているのかとも思えた。


「新しい子のユニフォームMだから取って来てよ?」と店長室に呼ばれて慌てて準備も中途半端に物置へと入り、ユニフォームを取り店長室へ入る。


「遅い!何をしとるんだ!」と勝田店長のお怒りの言葉を受けた。が・・・。そんなことはどうでも良かった。


「おはようございます。今日からお世話になります三隅と申します!」


 そうだ。このロングヘアーのちょっといい香りが漂う女性。そこには6月23日に神戸で出会い、助けたその女性・・・。三隅百合みすみゆりがいたからだ。


 さも俺の事はもう初めて会う人の様な口ぶりでその女性は俺に挨拶をした。

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