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脳力  作者: トマティ
9/9

8 Before Queen


高松刑事が、サイレンを鳴らす。

全力疾走で走り出した。


「一体ジョーカーはどこにいるんですか?」


「ああ、港中央研究所って知ってるか?」


「ああ、一度ネットで見たことがあります。確か、ある難病を治す薬を開発したとか。」


「そうだ。実は、その港中央研究所の地下には別の研究所がある事を突き止めた。」


「それって。」


「ああ、多分君が監禁された場所だ。ジョーカーはそこで研究を行っている。

今、その研究所には既に多くの警察が向かっている。何せ、指名手配犯が隠れているんだからな。」


走ること数分。

そして俺たちは、港中央研究所についた。

既に騒がしく多くの人が行き渡っている。


「人質はいるんですか?」


「まだわからない。とにかく今は、研究所内の人を外に逃がさなければ。」


そういって、高松刑事は、研究所内へ入っていった。


俺も、後を追いかけて研究所内へ入ろうとした。


「あれ?」


一瞬アリスの姿が見えた気がした。

なんでこんなところに?


「おい、アリス!」

大声で呼びかけるが、人が多すぎて聞こえないのだろうか。

追いかけるが、見失ってしまった。

辺りは一面、人だらけで混乱状態になっていた。


とにかく俺は、研究所内へ向かった。


一先ず、研究所内に人はいなくなったようだ。



「高松くん!」


「どうも。山本警部補。」


「一般の方はこの建物から出すよう指示をしたはずだ。」


「いえ、健人くんは協力者です。彼がいないと、この事件は解決出来ません。」


「しかしね、君。一般人を巻き込めるわけないだろ。」


「あの、俺からもお願いします。ジョーカーは俺に会いたがっているはずです。

何か危険があれば、すぐに逃げますから。」


「万が一何かがあってからでは遅いんだ。」


「そんなことを言っている間に、ジョーカーに逃げられてしまいます。

それに、直接ジョーカーと繋がりがあるのは俺だけです。」


「しかしねぇ・・・」

ちょうどその時、山本警部補の携帯が鳴った。


「ちょっと、君たち。ここで待ってなさい。」


「健人君、今の内だ。」


そういって、高松刑事がエレベーターへ向かう。


俺も後を追った。


「ちょっと、君たち!」


後ろの方で、山本警部補の声が聞こえた。



俺らはエレベーターに乗り込み、地下へ向かった。

この扉が開かれる時、俺はジョーカーと対面する。

今度こそ、絶対にあいつを捕まえてやる。



ドアが開いた。


なんだここは。真っ白い部屋。確かに以前、俺が誘拐された時に監禁された部屋に似ている。

しかしそこには、机が並べられ、たくさんのコンピューターが無数にあり、紙も散らばっていた。

人はいない。もちろん、ジョーカーも。


くそ、逃げられたか。


俺と高松さんは、何か手がかりとなるものを探した。



ウィーン

急に大きな機械音がなった。


何もない真っ白な壁が、開いた。

ドアだったのか。


「あらあら、北川様。ここで何をしているのですか?」


「ジョーカー!」


「隣の方は刑事さん。」


「お前がジョーカーか。」


「はい。初めまして。以後、お見知り置きを」


高松刑事が銃を取り出し、ジョーカーへ向ける。

同時に、ジョーカーが俺に銃口を向けてきた。


「危ない危ない。刑事さん落ち着いてくださいよ。」



緊迫した空気が走る。



「刑事さんが撃っちゃったら、びっくりして私も撃っちゃうかも。」


「今すぐ銃を降ろせ。ここはもう完全に包囲されている。」


くそ・・・足が震えてる。

前に銃口を向けられた時も俺は、何もできなかった。


「包囲されちゃったのかー。俺ももうここまでってわけね。」


「分かったらさっさと銃を降ろせ。」


「ねぇ、北川様。私は君に力を与えた。そして、今あなたは生きてる。その上、自分で自分の脳をコントロールすることにさえ成功している。今やあなたの脳は他の人の3倍。つまり、30%以上が使われていることになる。」


「3、30%・・・」


「すごいと思いませんか。私の予想が正しければ、今後もまだ進化を続けるはずです。この研究はいずれ世界を変える。さらに人類は進化し、いずれは脳の全てを・・・100%使うことも夢ではなくなる。世紀の大発見だ!!!」


「それと引き換えにお前は、多くに犠牲者を出した。この研究はお前がするべきでは無い。日本にはもっと優秀な科学者がたくさんいる。きっと彼らが、もっと正しい方法で、この研究を成し遂げてくれる。」


「ははは。優秀な科学者ですか。北川様。あなたはまだわかっていない。この世の醜さを、この世の恐ろしさを。」


頬に汗が流れ、垂れ落ちる。


「なぜ私がジョーカーと呼ばれているかわかりますか。所詮私は捕らわれの身。」


「ど、どういう意味だ。」


エレベーターの開く音がした。

機動隊が乗り込んでくると同時に、ジョーカーを囲む。


「諦めろ、ジョーカー!」


「私もここまでですね。十分楽しませてもらいましたよ。私の実験体は、私が処分しなければ。でなければ、あの醜い研究者共に利用されてしまう。」


「やめろ、ジョーカー!!!」


え?


パン


パパパパパン


一発の銃声の後、無数の銃声が白い空間を響き渡る。


訳がわからなかった。


ただ一つ、わかったことは。

俺の腹部から血が出ているということ。


「健人くん!大丈夫か!健人くん!!!」

高松刑事が俺を抱きかかえ、叫んでいる。



だんだん意識が朦朧としてきた。




気づいた時、俺は担架で運ばれていた。


なぜか視界は、はっきりしてきた。

隣で、高松刑事が俺を心配そうに見ている。


「健人くん。大丈夫か?」


俺は起き上がった。


「はい。なんともないです。」


救急隊員が驚いている。


「そんなはずはない。」

そういって、高松刑事が俺の腹部を見るが、傷一つ付いてない。


やっぱりそうか。

第二段階。

治癒能力だ。

まさかあいつの薬に助けられるとは。

しかし、撃たれても治るって、一体どれほど恐ろしい薬なんだよ。


とにかく俺は病院に運ばれた。特に、けがはなかったが。


その後色々と検査をしてわかった事がある。

体内にまだ銃弾があるそうだ。

あくまで傷口が、治るだけなんだな。

結局俺は手術を受けることになった。

ただ、銃弾を取り除くだけだったので、すぐ終わった。


家族には連絡を入れなかった。


心配されるのが嫌だった。


手術が終わるのを、高松刑事が待ってくれていた。


「もう大丈夫か?」


「はい、傷もすぐ治りました。」


「そうか。家まで送るよ。」


「ありがとうございます。」


車に乗りながら考えていた。


「手術をしてくれた先生が驚きながら言ってたよ。

「君の体、メスを入れてもすぐにくっつくんだ。」って。」


「ですよね。」


それもそうだ。カラクリは俺もわからない。

わかるのはジョーカーだけだ。


ジョーカーは俺が撃たれた後、多くの弾を受け、死んだそうだ。


結局、謎だらけだった。

その後の調べでも、ジョーカーの身元を把握する事は出来なかった。


さらに、あの時ジョーカーが出てきた白い扉だが、例の公園近くの下水に繋がっていたそうだ。

それで、よくあそこに現れていたのかもしれない。


さらに、ジョーカーが死ぬ間際に行った「俺は捕らわれの身だ」という言葉。

まだずっと気になっている。

どういうことだろう。


「ジョーカーが死ぬ間際に行っていたこと覚えてます?」


「ああ、捕らわれてるって話だろ。」


「はい。結局あれはどういう意味だったんですかね?」


「さぁな」



まだ、明らかにされていないことが多すぎる。

それにジョーカーが死んでしまい、俺の体で何が起きているのか、迷宮入りになってしまった。


「まぁいいじゃないか。これでもうジョーカーはいなくなった。犠牲者が出ることもない。」


「そうですね。」


確かに、これで一安心だ。

きっとまた、平穏な毎日が戻ってくるはず。


「この後どうするんですか?」


「これから俺は、署に帰って始末書だ。一般人を怪我させちまったからな。」


「でももう怪我してないですよ。」


「それもそうだな。でも俺は、山本警部補にカンカンに怒られるんだろな。」


「大変そうですね。」


「ああ。もう慣れちまったけどな。」


「そういえば、北川君は今なにやってんの?」


「レンタルビデオ屋でアルバイトしてます。」


「そうか、もったいねぇな」


「え?何がですか?」


「警察官、向いてると思うけどな。死なないし。」


「なんですかそれ、おちょくってます?」


「違うよ。本当に思ってるって。」


でも嬉しかった。


警察官か。


悪くないな。


俺は家に着き、高松刑事にあいさつをして、家に入る。


「ケンちゃん、おかえり。」


母が朝ごはんを作っていた。


「こんな時間になってごめん。」


母は、何も言わなかった。

怒られると思っていたが、全て知っているかのようだった。



そして、父さんも起きてきた。


「おはよう、健人。朝帰りなんて、若いな。ほどほどにしろよ。」



「ああ、父さん。それより、話がある。」


「どうした。」


「俺警察官になりたいんだ。」


「警察官?そんな簡単な職業じゃないぞ。それに経営を学んで、会社を起こす事が夢だって言ってたじゃないか。」


「確かに、そうだった。でも、最近色々学んだんだ。それで、人助けの喜びに気づいた。病院で患者を助けることもそうだし、警察官として市民の命を守ることも。だから、これから必死で勉強する。警察官になれるのは、まだまだ先の事かもしれない。でも、絶対に諦めないから。」


必死に自分の思いをぶつけた。

父さんもまた、真剣な表情で俺のことを見てくれている。


「健人、大きくなったな。お前の口からそんな熱いことを聞いたのは初めてだ。」


「じゃあ、目指してもいいの?」


「自分が何をするべきか。決めるのは自分自身だ。」


「ありがとう。父さん。」


「ケンちゃん、よかったわね」


「ああ。」


「ふぁ〜。おはよ〜」

梨花があくびをしながら降りてきた。

「あら、みなさんおそろいで。」


「梨花、お兄ちゃんね、警察官になるんだって。」


「ちょ、母さん。わざわざ言うことないだろ。」


「へぇ〜、健人が警察官!無理でしょー。」


「なんだよ、うるせーな。」


よかった。

こうやって家族といつまでも幸せに暮らしていきたい。


そして俺はバイトに向かう。

昨夜あんなことが起きたし、一睡もしていないからさすがに疲れた。

治癒能力があっても、疲れは消えないんだな。


「先輩、おはーっす。」


「おう、竹盛おはよう。」


「なんか先輩筋肉つきました?」


「え、そうか?別に鍛えてはないけど。」


「前よりなんか、たくましくなりましたね。」


いろいろあったからな。肉体的にはわからないが、

精神的には少し、強くなっただろう。



バイト終わり、竹盛と別れ、家に向かって歩いていた。


「健人さん。」


後ろの方から声がした。セイラがだった。


「セイラ、どうしたの?こんな時間に。」


「たまたま近く通ったので、もしかしたら健人さん、ちょうどバイト終わるかなと思って。」

待ってくれてたんだ。


「一緒帰ろっか。」


「はい。」


二人で並んで歩き始める。


「そういや昨夜、港中央研究所の近く歩いてなかった?声かけたんだけど、人混みがすごくって」


「え?昨日の夜はずっと家にいましたよ。港中央研究所?なんですかそれ?」


あれ、見間違いだったのかな?

まぁいっか。


「いや、なんでもない。それより今日はバイトだったの?」


「はい。今度また病院に来て下さいね。健人さんに会いたいって人沢山いるので。」


「そっか。俺も人気者になってきたな。」


「はい。今ではすっかり有名な霊能者です。」


「霊能者か。なんか胡散臭いな。」


フフフ。と笑うアリス。

「そうですね。」


「それと俺、警察官目指すことにした。」


「いいじゃないですか。健人さんにぴったりだと思います。」


「ありがとう。俺もアリスを見習って、人の役に立ちたいって思ったんだ。」


「そっか。さすが健人さん。健人さんは、そういう道の方がいいって思ってました。

だって、経営の才能なさそうだし。」

そう言って、再び笑った。


「なんだよそれ、ひどいなー。」

可愛い顔して、たまにすごい毒吐くよなー。


でも、この笑顔に何度癒されたことか。




ずっと気持ちを伝えたかった。

ちょうど、二人っきりだ。

今しかない・・・男だろ!勇気出せ!!!



「なぁ、アリス。」


「え?どうしたんですか急に真剣な顔して。」


「実は、」


「もしかして告白ですか?」


ちょ、まじかよ。前もそれ言われた気がする。


「ああ。その・・・」


静まり返る二人。

心臓の音がすごい。こんな感情は久しぶりだな。


「好きだ。」



その3文字をしゃべるだけで、なぜか体が軽くなった。

ついに言えた。


「私もです。」


飛び跳ねたいくらい嬉しかった。

正直、住む世界が違うと思っていたし、一生かかっても、両思いになんかなれないと思っていた。


「ほんとに?俺でいいの?」


「もちろんです。健人さんがいいんです。」


「あ・・・ありがとう」


「いえ、こちらこそ」



そう言って、再び歩き出した。


「でも実は、」

唐突にアリスが喋り始める。


「健人さん、私に告白したの初めてじゃないんですよ。」


「え、そうだっけ?」


「そうですよ。忘れちゃったんですか?」


えーっと。思い出せない。普通そんな大事なこと忘れないんだが。


「健人さんの部屋で。」


「あっ、やっぱりあれ伝わってたんじゃん。」


「へへへ。嬉しくてつい」


「なんだよそれー。うわーはずかしー」



そして、2人の若いカップルは暗い夜道へ吸い込まれていった。





筆者からのコメント。

いやー。ここまで読んでくれた方々。本当にありがとうございます。

誤字脱字、内容の矛盾、ストーリーへの提案や感想。なんでも、お気付きの点がありましたら、メールをいただけると幸いです。「脳力」ですが、まだまだ謎が隠されていますね。第2章も続けて書いていきたいと思います!



ご覧いただき、誠に、誠にありがとうございました。



                                     作:Tomaty


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