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信用

姫花信者はクラスのは8割である。しかし、残りの1割はもう信者ではない。



たかが1割。されど1割。


忘れてはいけないこの1割は菌のように繁殖して広がることを─────。

馬鹿なお姉ちゃんはこの1割を軽く見過ぎている。

ほら。もうこの1割の菌に汚染されているものがいる。

けれど、お姉ちゃんは気付かない。










「おはよー!」


教室に元気良く挨拶してから入るお姉ちゃん。


「あ、おはよー」


「おはよー姫花ちゃん」

 

「おはー」


「はよござます」


相変わらず人気者のお姉ちゃん。


満足気に笑い、手を小さく振る。

にっこりと赤い唇をあげ。誰もがその笑顔を天使が微笑んだ。といって褒め称える。内心はどす黒いものが渦巻いているというのに。


まだ、この笑顔に皆は騙されている。

頬を紅くして俯くもの、可愛いと褒め称える者、天使が舞い降りたと呟くもの……………。


お姉ちゃんはそれだけの人しかいないと思っている。


挨拶している人は皆が貴女を純粋に好いている?


ほら、よく見て。みんなの目を。皆の一つ一つのこ声を。


もやもやとした迷った声色の人がいるでしょう?お姉ちゃんの何かを探そうとしている人がいるでしょう?


お姉ちゃんの微笑みに疑問を持っている人が現れたということだよ。

お姉ちゃんの女王様という位置は確実に崩れていっている。


あ。顔をしかめた。

ふふふふ。鋭いこの子は気付いたのね。お姉ちゃんの笑顔に。天使なんかじゃない。そんな美しいものではない。

人を見下した濁った目を持っているとこに気付いたのだろう。


天使と呼ばれているこの女は邪悪な悪魔ということに気付いた人が一人。1人気付けば、どんどんそれは広がる──────。


え?私?

私は挨拶なんてしても返してくれるはずがない。良ければ無視。悪ければ罵声を浴びさせられる。それが私のクラスメートとの関係である。


だからこそ、お姉ちゃんはなめている。いつまでも女王様でいられると。

私という影があるから、いつまでも光でいられると思っている。私がいつまでも影であると信じている。もうお姉ちゃんの信者ではない人だっているし、喋れる賢いハスキーのレオもいる。

それに比べてお姉ちゃんの信者はまだたくさんいるけれど、確実に減っている。まだ女子しか減っていないが、その内男子も減るであろう。




退屈な学校から早く帰ってレオとお喋りしよう。そして、もふもふ癒されよう。ああ。もふもふもふもふもふもふもふもふ……

触りたい…


授業中はレオのもふもふ気持ち良い毛の事を考えていたら、いつの間にか一時間目は終わっていたと思って、ぼーっとしていたらいつの間にかお昼休みのチャイムが鳴っていた。


「あの……さ。私、見ちゃったの。」


真っ黒の髪を横で2つに結い、赤い眼鏡をかけた地味めの女の子が私に声をかけた。


隣に座っている男子も前の女子もお喋りしながらこちらに耳を傾けている。


「ん?なに?」


「鈴香ちゃんの机に落書きをしている所を。あの……その……姫花ちゃんが書いていたの」


おどおどしながら目線を下にしながら言った。とても緊張していることが、仕草からわかる。


「あっ。それは俺も見た。朝練の時間を間違えて早く行っちゃった時に…さ。」


この言葉を聞いてシーンと教室が静まる。


「私は、知ってたんだ。ずっと、ずぅぅと前から。でも皆は信じてくれないと思って言えなかった。」


くすん。くすん。と鼻を吸いながら言う。

これは同情を誘う為の行為だ。


「そんな事、私してない!皆、信じてよ!私がそんな事するはずないでしょ。」


お姉ちゃんは急いで言った。焦りを感じる。


「こらっ。鈴香、嘘ついてごめんなさいと謝りなさい。」


口調は優しいが眼力は凄まじい。さらに、お姉ちゃんの足は私の足を踏んで自分に従わせようとした。


さらに、泥沼のように底知れない禍々しい渦のうかんだ瞳────。



それを見てしまった生徒は勿論お姉ちゃんを信じることなどできない。



あーあ。こんな姿見せちゃ駄目じゃん。お姉ちゃん、優しいお姉ちゃんは演じているものなんだって皆にバレちゃったよ?


ふふふ。馬鹿なお姉ちゃん。




「嘘なんてついてないよ…」


弱々しい声を出す。

姉を怖がっているように見せるため。


はははは。

笑っちゃいそう。だって昨日まで私を睨んでいた人は今日はお姉ちゃんを睨んでいるんだもん。

昨日まではあんなに私に悪口を言っていたのにね。

これだから友達なんていらない。

だってすぐに裏切るんだもの。 



ぢりりりりりりっ


今日は防災訓練


ということを思い出させた。


お、じゃあ今日の授業は5時間で終わりか。やった!早く帰れる。


お姉ちゃんは教室を飛び出した。


決して避難訓練のために外に出た訳ではない。

なぜならまだ指示がでていないから。つまりお姉ちゃんは多分家に帰ったのであろう。

一応双子だから分かる。なんとなくだが。


〖火事です調理室から火災が発生しました。中央階段は使えません。〗


皆はお喋りをしながら歩く。

校庭に着くと校長先生が待っていた。到着するまで遅いとか、避難訓練の大切さなどを話して終了した。


学活は先生が面倒だと言い、ここで解散となった。 


よし、帰れる!

もふもふが待っている!








家に着くとそこには傷だらけのお姉ちゃんが立っていた。

引っ掻いた痕のようなものや服が引っ張られビリビリと破けていることからこれはレオがやったとわかる。


「お姉ちゃん、私の部屋に何かしようとしたの?」


レオがお姉ちゃんに攻撃する理由はこれしか思い浮かばない。

 


「お姉ちゃん、前も同じ事があったよね。」


はぁ。と溜め息をつき続けた。


「いい加減学習しなよ」


お姉ちゃんはパンッと私の頬を叩いた。

口の中に血の味が広がった。 


「暴力で解決なんて、なんて幼稚なんだろう。くくくっ」


お姉ちゃんは顔を赤くして走り、自分の部屋に入った。私も自分の部屋に行こう。


駆け足で部屋へ向かう。


「ただいまーレオ!」


レオに抱きつきモフモフを堪能する。

んー至福のこの時間。

気持ち良いもふもふもふ。


「おかえり。」


「ただいま」


もふもふもふもふもふもふもふもふもふもふもふもふもふもふもふもふもふもふもふもふもふもふもふもふもふもふもふも


「そろそろ離してくれないか」


渋々離す。


「いまさらなんだけど、なんでレオって犬なのに喋れるの?」


「知らねー。」


「え?」


「いや、だから知らねーって」


「あ、はい…ねぇ、レオって喋る以外に何か出来るの?」


喋る事が出来るのだから他にも何か出来るだろうとドキドキしながら聴く。





「人間っぽくなれる。」


予想を超える回答。

なんとなくこう…超早く走れるとかかと思っていた。


「人間っぽく?どんな感じ?」


こんな感じ。と言い、くるっと回るとそこには犬ではなく青年がいた。

 人間っぽく?

人間にしか見えないんですけど。


「見て、この歯」


犬歯が異様に大きくて鋭い。まさしく犬の歯。

確かに人間ではないようだ。


「それにしてもなか好みイケメンだねぇ」


吊り目だけれど、大きな目に、すっと筋の通った鼻。

少し意地悪そうな顔だが、雰囲気が優しい。


これはお姉ちゃんの好みドンピシャである。お姉ちゃんが好きなアイドルは皆こんな感じの人だったから。


ドSだけど優しい所が好きっ♡って言っていたな。


「ねぇ、レオはお姉ちゃんのことどう思う?」


面白い事思いついたとばかりにニヤリと歪む口。


「分かってんだろ。そんな事ぐらい。鈴香の敵は俺の敵。それに香水臭いし、表裏が激しい女は嫌いだ」


「良くできました」


わしゃわしゃと頭を撫でる。するとレオは気持ちよさそうに私の手に頭を擦り寄せた。




「ねぇ、レオお願いがあるんだけど──────。」

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