小さいが、大きな実をつける種。
学校に着いて、授業が始まる。そこで気付いた。筆箱にシャーペンが入っていないことに。
筆箱にはシャーペンが3本入っていて、昨日お姉ちゃんに持ってかれたから、2本入っているはずだ。
それなのにない……?
最後に筆箱を触ったのはお姉ちゃんだから…。お姉ちゃん、シャーペン全部持って行ったわね。
これでは授業が受けられない。
今日の私は機嫌が悪いの。
「ねえ、お姉ちゃん私の返してくれない?」
私から姉を守るかのように男子が私を睨みつける。女子はというと、男子と同じく私を睨みつける子と、恋する乙女は睨んでいる男子が好きなのか、不機嫌な顔で男子を見た。
「え?なんのこと?鈴香のシャーペンなんて持ってないわよ?忘れちゃったの?私の貸そうか?」
差し出したらシャーペンはずっと昔に私が貸したものだ。お姉ちゃんの持っている筆箱の中身は全て過去の私がお姉ちゃんに貸したものなんだけどね。
「お姉ちゃん。私、シャーペン返してなんて言ってないよ。私の返してとしか言ってないもの。なんでシャーペン無いって知っているの?それに今、お姉ちゃんがもっている物も私のだよね。鈴香って名前がキャップの裏に書いてあるはずなんだよね。」
お姉ちゃんの手にあるシャーペンを奪うようにしてとり、キャップを外して見せる。ほら、《鈴香》ってある。
「あっ………。ほ、本当だぁ。姫花、忘れちゃってたみたい。ごめんね?」
男子はうわぁ。ドジっ子な姫花も可愛い!!と口をだらしなくニヤニヤと歪め、メロメロになっていたが、恋する乙女はちょっと不信に思ったらしい。眉に皺が寄っている。
「ねぇ、筆箱の中身全部私の物なんだから返してね」
この言葉をききて、恋する乙女は驚いた表情をした後、思いっきり顔をしかめた。
男子はというと、ドジっ子万歳とか言って恋する乙女とのテンションの差が天と地程の差である。
妹は姉に仕返す為の種をこっそり植えた。
とても小さな種だが、じきに、大きな実をつける種。