帰り道
学生といったらやっぱりテスト。そんなテストが今日返却されます。
テストの点数?勿論あまり良くないよ。
「鈴香、何点?………あ。ふーん67点」
平均点は62点なので、凄く悪い点数ではない。が、偏差値が非常に高い大学に行きたいので、これでは完全に落ちる。
ま、わざと点数を落としているんだけれど。
そうじゃなきゃ……この点数はかなりマズいでしょ?
お姉ちゃんのテストの点数は……っと。あら66点。だから今日は嘲笑わなかったんだ。なるほどなるほど。
一点差でも負けたのが悔しかったのか、イラつきを隠すかのようにいつもの倍キラキラと笑っている。いやな予感しかしない。
「ねぇ、今日一緒に帰ろう?」
お姉ちゃんと一緒に帰るということはやはり茅斗も含まれる訳で。
周りの視線は一気に私に向いた。姫花ちゃんの誘いを断るつもりか、と。
私は
「うん」
と答えるしかなかった。
行きたくないけれど、行くしかない。そんなのただの時間の無駄なだけ。だから私は復讐の材料を集めることにした。
あの子を貶める為の。貶めた時のお姉ちゃんの表情を想像するだけてとてもワクワクする。性格が悪い事ぐらい知ってるわ。だってあのお姉ちゃんの双子の妹だよ?良い子なわけがない。
「茅斗、いいよね?一緒に帰っても」
お姉ちゃんは茅斗の腕た抱きつき、上目使い、そして普段より高い声で言った。
当然デレデレと茅斗は鼻の下を伸ばした。だらしない。こんな奴とどうして付き合っていたんだろう?───ああ。告白されたからだ。
「ああ」
お姉ちゃんの頭に愛おしそうにキスをした。
ああ、ダメだ私の存在に気付いていない。そもそも、お姉ちゃんの話をちゃんと聞いていない。
「じゃ、帰ろう。鈴香」
ぴくっ
鈴香という言葉に反応したのか、茅斗はぴくっと震えた。
「す…すず…か……?」
やはり聞いていなかったのか。人の話はちゃんと聞きましょーって小学校で習ったでしょ?
「え?駄目なの…?」
疑問型なのに私には決定のように聞こえる。駄目だなんて許さないと。
「だ、駄目じゃない!!」
慌てて言った。
のに、かかわらずお姉ちゃんに見えないように私を睨みつける。そしてちっ。と舌打ちをした。
お姉ちゃんに気付かないように睨むくせにお姉ちゃんに聞こえちゃう舌打ちをしちゃうなんて馬鹿だね。
舌打ちが聞こえたのか、お姉ちゃんはクスっと笑った。それはもう……楽しそうに。
お姉ちゃんを挟んで歩くのかと思いきや、お姉ちゃんの隣に私。私の隣に茅斗。
「久しぶりに鈴香と帰れて嬉しいな。あ、茅斗ごめんね」
私と帰れて嬉しいという言葉に茅斗は機嫌が悪くなる。吐息は荒くなり、足音はガツガツと煩い。かまってちゃんかよ。
「全く……なんでこんなクソと帰らなきゃいけねぇんだよ。ああ、俺可哀想。」
小さいが、私に充分聞こえるような声で言った。
可哀想なのは私だっての。
そもそもなんで私こんなに嫌われてんの?何もしていないんだけど。
────────嗚呼。お姉ちゃんがいた。何も私はしなくても、お姉ちゃんはするね。私がお姉ちゃんを蹴ったりしていると。私がお姉ちゃんを虐めていると言っているはずだ。
「お前なんか大嫌いだ。
こんな奴と付き合っていたんだろ。信じらんないよ。あ、そうかお前から告られたんだっけ??えーっと貴方のことが好きです。だっけ?うわっ。ありきたり。」
は?私が告った?
そんなわけあるか。
「いや、告白したのは貴方よね?頭大丈夫??
確かに貴方の言った、貴女のことが好きです。という言葉はありきたりね。」
はんっと嘲笑って言ってやった。
家たに着くと、お姉ちゃんは私に向かって言った。
「どお?楽しかった?元彼に罵られて。姫花は見てて超楽しかったよぉ。また見せてねぇ。」
あははははっ!
甲高く、耳が痛くなりそうな声で笑った。これぞ悪役!というような笑い方だ。
お姉ちゃんと茅斗は知らない。この会話を録音していることに。