覚悟してね?
「とりあえず発表します。」
その言葉に皆はビクッとする。
え?何を発表するんだろうとこちらを見る人と、察したのか机の下に隠れる人がいた。
「男子なのに乙ゲーにはまり、愛読書は恋愛系の少女マンガ。─────最近気になる人がいるみたいね。西丸くんが好き。でしょう?」
にやりと笑いながら話すとひっ、と顔を青くさせた。
私は覚えているよ。私の教科書ビリビリに破いてトイレに捨てたの保守乃くんと西丸くんよね
くくく。ざまぁ
女子。特に腐女子は顔をかがやかせながら顔を真っ青にした人を見る。
私は西丸くんの腕を掴み、保守乃くんのもとをと連れて行く。
気まずそうに互いをみる2人の頭を掴み、押す。
ぶちゅ。
二人は固まり、男子生徒はうおっ。と顔を歪め、腐女子は喜んだ。
「も、もう一度!!」
ある一人の女子がスマホを持ちながら叫ぶ
「ふふふ。じゃあ……」
頭を掴み、ゆっくりと押す。
カシャ
引き離し、もう一度。
カシャッ
カシャカシャ
「保守乃くん、西丸くんとキスできて良かったね?」
くくくくっ。
にやりと笑いながら耳元で小さく囁いた。
そして続ける。
「公開処刑。今の姿は写真で撮られた……ということは分かるよね」
ぶるりと震えると泣き出した。
「もう発表は終わった思っているの?まだまだ終わってないよ?」
次は自分かもしれないと体を小さくした。
「小柳さんは…」
髪を明るい茶色に染めているお姉ちゃんの親友は自分の名前を呼ばれてヒッと悲鳴が口からこぼれた。
「やめて…やめて……!」
「止めるはずがないでしょう?私が止めてって言っても止めてくれなかったのは貴女だよ?くくくっ、忘れちゃった?」
「いや…!」
涙が次から次へととめどなく頬をつたう。
「この写真を見て」
一枚の写真を見せる。そこにはメイクをしている、小柳さんが写っている。
え、誰?と頭にき疑問符を浮かべていたが、止めて!と必死に写真を取り上げようとしている姿からこの写真に写っている人物は姫花の親友である、小柳さんだということが分かった。
「あ。」
小柳さんに奪われ、ビリビリと破かれてしまった。
「死守した!」
勝ち誇ったように笑う小柳さんを再び地の果てへと突き落とす。
「まだあるよー」
左ポケットから束の写真を出した。
それを見て青ざめた小柳さんを横目で見ながら写真をどうするか……
こうする!!!
写真を窓の外へと投げ出した。
ひらりひらりと写真は宙に舞い、ゆっくりと写真は落ちていく。
なんだ?と写真に生徒が群がる。
その写真には“小柳”と書いてある。
その様子を見て、小柳さんは崩れ落ちるようにぺたんと座った。
「最後に……っと」
右ポケットからクレンジングシートを取り出し、小柳さんの化粧を落としてゆく。
綺麗に落とした後の姿は目を疑うほど別人だった。
バサバサと生えていた睫は消え、大きかった目もちょこんと顔についた点になり、二重も一重になった。つまり、地味顔になったのだ。
私は知っている。
今日、メイクポーチを持ってくるのを忘れていること。
つまり
家に帰るまでずっとその顔でいなければならない。
「ふふふふふ……ああ。楽しかった」




