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お姉ちゃんの顔

これからの作戦を話しながら歩く。手は繋いでいるものの、全く甘い雰囲気が無いため、私達とすれちがう人は皆、首を傾げながら歩く。


しばらくすると学校が見えてきた。


「そろそろ……」


「ああ。」


無表情だった顔をはにかんだ表情に変える。

それにより初々しい初デート感を出す。


お姉ちゃんの横を通った時、お姉ちゃんの顔をちらっと見た。

お姉ちゃんの顔には『この女は誰?』って書いてあった。


レオは私の耳元でこそこそと話す。そしてそれを聞いて私は恥ずかしそうにうん。と頷いた。

そして顔を少しずつ近ずけてキスをした───────────ように見せる。

まさか、本当にはキスをしないよ!

お姉ちゃんからはキスをしているように見える。お姉ちゃんの目からは涙が一筋流れ、地面にしみを作った。


お姉ちゃんはまるで魂が抜けた様にふらふらと歩き出した。勿論私達が歩く方向とは逆に。

つまり、家に向かっているということだ。きっと家に着いたら自室へ行き、ベッドの上で枕を濡らしながら泣くのであろう。


お姉ちゃんの背中を見送った後私はトイレに向かう。

そこでメイクを落とし、前髪をとめていたピンも外した。

鏡を見るとそこにはいつもの暗い私がいた。


レオを犬の姿にしてリードをつける。まるで犬の散歩をするため、出かけたように見えるはずだ。


家に入るとおろおろした両親がいた。ちらちらと心配そうにお姉ちゃんの部屋の方を見ている姿から私の推測は外れていないことが分かる。


私の部屋へ行くと隣のお姉ちゃんの部屋からくぐもった泣き声が聞こえる。 


『うっ…ひっく……レオのこと……こんなに好きなのに……!!ううっ…うっ……キス…してた……あの女は彼女…なの?私、勇気を出して…告白しようと思ってたのにぃ!それなのにぃ!!うわぁぁぁああっ!!』

 

心が壊れていく悲痛な叫びが聞こえる。


好きな人が目の前でキスしていれば心壊れるだろう。誰だってそうだ。だからこそそれをした。

ま、本当にはキスはしてないけれども。私の親友だったもの、大好きだった初めての彼氏……皆、姫花に奪われた。そのお返しだよ。まだまだ仕返しは終わってないからね。

お姫様の幸せを奪うだなんて本当に悪役みたい?だって私はどう足掻いたって悪役。勉強を頑張ってテストで良い点を採ったって、毎日ランニングして徒競走で一番採ったって、困っている子に手を差し伸べたって………親はいつでもお姉ちゃんしか見ていない。クラスメートはお姉ちゃんを好いて私を嫌う。今思えばそれは嫉妬だったのだろう。しかし、小学生だった私には辛かった。悲しかった。

もう分かったんだ。

もう諦めたんだ。


お姉ちゃんのような誰からも好かれるお姫様になることは叶わないということを。

だから私は決めた。

それは逃げというのかもしれない。

頑張ればお姉ちゃんのようになれたかもしれない。

でも、私の精神はボロボロで壊れそうだった。


私は悪になることを決めた。

少しずつ少しずつ悪に染まる私。 


今日、お姉ちゃんが壊れる姿を見て、これ以上ないくらい楽しくて甘美な感情が私を支配した。

いつのまにか、私は壊れていたらしい。

壊れない為に悪になることを決めたのに。

それでもいい。

今更後戻りは出来ないもの。

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