お姉ちゃん、待っててね!
最近、お姉ちゃんの様子はおかしい。心ここなにあらずである。ポーとどこかを見ていると思ったら顔を赤くしたり……お顔が忙しい。
まるで恋する乙女のようだ。
つまりレオはなかなか上手くやったらしい。お姉ちゃんが本当に恋をするだなんて驚き!「私が恋をするわけないじゃない。恋されることは沢山あるけど」とか言ってたのにね。これからのことを思うと笑いが止まらないわ!テンションがおかしくなっている。
「また、あそこに行けばレオに会えるかなぁ……今日は休日だから、ずっと待ってようかな。あ、コンビニでおにぎりと飲み物買わなきゃ!」
うきうきそわそわした様子でこの間誕生プレゼントに親に買って貰ったサバンサタバ◯の鞄にお財布を入れ、お姉ちゃんお気に入りのピンクの花柄のワンピースに着替えた。そして、髪の毛をゆるりといつもより丁寧にヘアアイロンで巻いた。
全身が写る大きな鏡の前に何度も立ち、チェックする。満足したのか鏡をあとにした。
「お母さん、行ってきます!!」
「あら。いってらっしゃい。どこへ行くの?」
「学校の裏にあるコンビニの近く!!」
「そう、気を付けてね」
お姉ちゃん、お父さん、お母さんの食べた朝食のお皿を流しで洗いながら目線だけお姉ちゃんに向けて言った。
朝食をそろそろ食べねば。もう少しで9時になる時計を見て、思った。
朝ご飯は……面倒くさからフレンチトーストでいいや。あとはサラダ、フルーツ入りヨーグルトを作ろう。
器に卵、牛乳を入れて混ぜる。そこにパンを浸す。
フライパンにバターをたっぷりと入れ、溶かす。毎度カロリーが凄いな、とは思うもののバターをたっぷりといれてしまう。
フライパンにパンを入れ、焼く。その間にほうれん草を洗ってお皿に盛り付ける。
パンをひっくり返す。
お皿にヨーグルトを入れ、その上に切ったフルーツを盛り付ける。
最後にお皿にフレンチトーストをのせて、出来上がり。
「頂きます。」
小さく手を合わせて小声で言った。お母さんは私の朝食を見て言った。
「何そんな豪華なもの食べてんのよ!フルーツだって、乳製品だって高いんだから!!食費を圧迫しないで頂戴!!」
「食費を圧迫?この材料は全部自分のお金で買ったものだよ?お母さんが言ったんだよね?この冷蔵庫はお母さん、お父さん、姫花しか使ったらいけないって言っていたよね?」
昔、お姉ちゃんの為に買った誕生ケーキを私は食べてしまった。私だって誕生なのだから食べでも良いと思ったが、違って凄く怒られた。それ以来冷蔵庫に触るなと言われている。それは今も継続しているのである。
「食費はどうしているのよ。」
疑わし気な目でこちらをみる。
「バイト」
スーパーでバイトしているからお給料だけでなく、残り物も貰える。
「……」
そろそろ朝ご飯が冷めてしまう。早く食べねば!
あったかい。
このフレンチトーストの温度がまだあまり冷めていないことを教えてくれた。
うん。美味しい。今回もなかなか美味しく出来たな。
サラダにはお馬さんの村の柚のドレッシングをかけて頂きます。
お馬さんの村の柚のポン酢をお豆腐にかけて食べた時、あまりの美味しさに絶句しましたよ!!
ドレッシングも発売されていて…普通のより少し値段が高いけれど、買っちゃいました!
サラダを口に運ぶと、ドレッシングの柚の爽やかな香りが鼻を通り抜ける。
ほうれん草はレタスより青臭さが小さくて、私のお気に入りである。
んんー!美味しい。
最後にヨーグルトを食べて食器を洗った。
部屋に戻るとぐたーんと、寝っ転がっているレオがいる。なんてだらしない。私は勉強をする。お姉ちゃんは余裕ぶっこいて会えるかさえ分からないひとを待っているのだが、私は一応受験生なので勉強をする。難しい大学へ行くのだから油断は禁物である。
夕方に出かけるからその分頑張らなくてはならやい。
さぁ、集中集中
カーンカーンカーン
時計から聞こえる12時を知らせるチャイム。
もうお昼ご飯の時間か。
でもさっき食べたばかりだからお腹がいっぱい。いつまでも部屋着のままはあまり良くないだろう。洋服に着替えよう。
クローゼットを開けてさっと眺める。黒の生地に赤に近いピンク色をした花柄のワンピースが目に映る。それをとりだして今度はそれに合うバッグを探す。
これでいいや。
その辺に置いてあった黒いバッグにした。
バッグにケータイ、お財布などの最低限の物をつめる。
とりあえず勉強をしますか。
*******
時計の針を見ると短い針は3を指していた。
前髪を上ておでこを出す為にピンでとめ、ヘアアイロンで髪を真っ直ぐにした。
そして軽く化粧をする。お姉ちゃんの様な派手な化粧ではなくて、ナチュラルメイクだ。
準備完了。そろそろ出掛けようかな。
「レオ。デート、しよ?早く人間の姿になって?」
手を繋いで家を出た。
勿論手の指を絡ませた恋人繋ぎだ。そしてお姉ちゃんがレオを待つ場所へと向かう。その足取りは大変軽いものであった。