レオの騙し
主人公は姫花です
「どうしてよ…!!私はお姫様なはずでしょ?誰からも好かれている存在のはずでしょ?それなのにどうして……!何で皆に罵られなきゃいけないわけ?」
これ以上ないくらいの機嫌の悪さで歩く美少女。しかし、愛くるしい顔は憎悪で歪んでまるで悪魔のようだ。決して小悪魔なんていう可愛らしいものではない。禍々しい誰もが恐れる悪魔だ。
「あぁ!もう腹立たしい!!あの女…私とは違って可愛くないくせに調子乗りやがって!」
頭をガシガシと掻いた。綺麗に整えられたさらさらの髪はそのせいでグシャグシャになり、絡まっている。
「大丈夫か?」
うっざいなぁ何なのよ?私、今機嫌は最悪なのよ!話しかけないでよ!
憎しみをぶつけるように睨みを効かせて声のする方に顔を向ける。
そこには姫花好みの男が立っていた。
慌てて睨みを解き、とっておきの笑顔を向ける。
「うん……大丈夫…よ…」
姫花の頭に浮かんだ言葉。それはこの男を自分のものにしたいということ。
とっておきの笑顔…泣きそうな顔だけれど、それを隠すように笑うこと。それによってか弱い女の子を演じる。
ほらこうすれば……
「無理に笑うな」
私の頭に大きな手のひらを置かれた。大きくて、硬くて…暖かい、男の人の手。
もっと触って欲しい───。
あれ?今私は何を考えた?まさかこの私が惚れるだなんてことは……ないはず。
「無理になんて笑ってないわ」
この人が欲しい。とってもとっても。
今までは鈴香の嫌な顔を見たくて、鈴香の男を欲しいなどと思っていたが、鈴香抜きでこの人が欲しい。
ああ。私はこの男に惚れちゃったんだな。
「本当…に?」
じっとこちらを見る。心配をしているように見えるが、内心は桃花のことを嘲笑っていた。桃花の泣き笑いは嘘だということに気付いていた。なぜならあの女の本性を知っているから。
「う…ん。ねぇ、貴方のお名前は何?」
貴方の全てが知りたい。
色々なことを教えてほしい。まずは名前から。
「俺はレオ」
低く心地良い声。
レオ?ハーフなのかな?
「レオ。本当は辛いの。悲しいの。だからお願い…私を慰めて。」
甘ぁぁい声を出し、レオの胸にしなだれかかった。
レオは目を見開き、頬が紅潮した。
手で口元を隠し、目線は私の目線と交わらない斜め下になった。
ふふふっ。照れてる!
こうでなくっちゃ。私の美貌でならこの男を手に入れられる。好き。
こんな事を想うだなんて思わなかったけど。相手を惚れさせる前に自分が惚れちゃうなんてね。らしくないわね。