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煌天の蒼月 第1部  作者: 天空朱雀
第7章 消えた面影
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第2話

セオがそうぼやいてふと頭上を仰ぎ見た、その刹那。

彼の視界の隅に何かが映り込んだとほぼ同時に、彼の頭の中を警鐘が鳴り響いた。


「皆、気を付けるんだ、魔物が…」


セオが言い終わるより早く、一同の頭上から鳥の鳴き声のようなものが降り注ぐ。

…と同時に、翼が大きく羽ばたくような音がしたかと思えば、周りの空気が一瞬にして狂気の刃へと変貌する。


「……っ!」


鳥型の魔物が羽ばたきによって凄まじい強風を巻き起こし、それは衝撃波となって一同に襲い掛かる。

咄嗟に身構えようとするセオとネクトを尻目に、最初に行動に移したのはキーゼであった。


得物である死神鎌を構えると、鎌にはめ込んだ緑色の魔耀石が妖しい光を放つ。

さらにキーゼが死神鎌を大きく横一線に薙ぎ払えば、魔物の羽ばたきと同じく周りの空気が鋭い刃へと姿を変え、衝撃波となって空気を斬り裂いていく。

魔物が放った衝撃波と激しくぶつかり合うと、最終的には相殺して弾け飛んでいった。

弾け飛んだ際に突風が吹き荒れそれに髪を遊ばれながらも、ホッと胸を撫で下ろすセオ。


「ふぅ、助かった…。キーゼ、ありがとう」


「いやいや、あんな衝撃波食らったら痛そうだからな~、おれ痛いの嫌いだし」


相変わらず緊張感の無い声色で冗談を交えつつも、キーゼの双眸には鋭い光が宿る。

それもその筈、一同の前に姿を現したのは巨大な鳥形の魔物が数匹。

おそらくは、これが今回討伐対象となっている魔物であろう。


「成程、この魔物か…。確かに、我を失っているようにも見える」


険しい表情のネクトが見上げた先には、狂乱めいた妖しい光を放つ双眸が映り込む。

その双眸が一同をきちんと認識しているかさえも危うい程、魔物の様子は常軌を逸していた。


「やっぱり、この魔物も蒼月の日の影響でおかしくなってるみたいだな…」


ぎり、と忌々しげに唇を噛み締めるセオ。

こうなってしまえば、魔物を止める術は一つ──命を奪う、それだけ。


次いで動きだしたのは魔物達。

再び翼を大きく広げて羽ばたけば、衝撃波を放つ。


「何だよバカの一つ覚えみてぇに…めんどいなぁ」


やれやれ、と溜め息を零しながらも再度魔耀石を発動させるキーゼ。

再び生み出された衝撃波は激しくぶつかり合い、先程と同じように相殺された。


武器を構え直して反撃を…などと悠長に構えていたキーゼの背後に、じわじわ忍び寄る危機。

殺気を感じて頭上を仰ぎ見れば、彼の頭を鷲掴みしようと鉤爪を振りかざす魔物の姿。


先程の衝撃波は囮。

別の魔物が攻撃するための目眩ましに過ぎなかったのかと悟ると同時に、すぐさま回避行動に入るキーゼ。


最早反射神経のみに頼って後ろへ跳ぶキーゼとほぼ同時に、魔物の鉤爪が空気を突き抜けた。

キーゼが動かなければ、彼がこの空気と同じ運命を辿っていただろう。


「いや~危なかっ……どわっ!?」


ホッと安堵の息をついたのも束の間、背中に衝撃を覚え思わずよろけそうになるキーゼ。

何事かと背後を顧みれば、そこにはキーゼと同じく驚いたように目を丸くしながら後ろを振り返るネクトの姿。

どうやら、お互い全く背後を気にしないで立ち回っていたせいで、背中をぶつける羽目になってしまったらしい。


「…ちょ、おいあんた邪魔すんなよ」


「それはこちらの台詞だ。戦うのは勝手にすれば良いが、こちらの動きを把握した上で自分の邪魔にならないように動け」


「は? 何言っちゃってんのあんた? どくのはそっちだろ常識で考えて」


命のやり取りをしている戦場だというのに、何時ものような不毛な喧嘩を繰り広げるキーゼとネクト。

ある意味では、肝が座っているとでも言うべきか。


最早、彼らにとって最も早く倒すべき敵は魔物ではなくキーゼかネクトになりつつあるような気がしなくもない。

このままでは本気で殴り合いでもしそうな雰囲気に変貌を遂げようとしているため、魔物の攻撃を捌きつつセオが仲裁に入る。


「だーっもう! こんな時まで喧嘩しないでくれよ!」

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