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煌天の蒼月 第1部  作者: 天空朱雀
第6章 深淵の少女と絶望の青年
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第4話

「…お主が引き受けるのは…贖罪の為かえ?」


「ええ、私があんな愚かな事に手を貸さなければ、こんな事にはなりませんでしたから…。私に課せられた罰なのですよ…他に何があるのです?」


──そう、贖罪以外の感情は何も無い。

もし、自分が関わっていなければ…自分のせいでこんな事にならなければ、自分にはまるで関係無い事なのだし、わざわざユトナの為に自らを危機に晒す事も無い。

彼女とは所詮主と従者という関係…それ以上も、それ以下も無い。

只、淡々とした繋がりがそこに横たわるだけ。


そう…それ以上の感情など、ある筈も無いのだ。

だから、彼女がどうなろうが…自分には関係の無い事。

自分の気持ちが揺らぐ事など決して有り得ぬ事、そうでなければ、自分は──…


「…おい、聞いておるのかえ? お主がそう言うのならば、妾がとやかく口を挟める問題でも無さそうじゃな。では、早速始めるぞ」


「──! ええ…聞いておりますよ。始めて下さって構いません」


どうやら、自分はいつの間にか思考の渦に飲み込まれてしまったようだ…ロゼルタは心の中でそう呟きつつ、力強い光を宿した双眸を携えてコクリと頷く。

それから先はセルネしか出来ない事なので、セオ達3人は彼女がてきぱきと魔術の準備を進めるのを固唾を飲んで見守るだけ。


「…よし、これで準備は整ったぞ」


暫くして、額に浮かんだ汗を拭いながら満足げに口角を吊り上げるセルネ。

次いで、ロゼルタへと視線をずらした。


「…良いか、お主の手の甲に描かれた魔法陣、ユトナの手の甲にも同じものを描いたが…それがお主とユトナと繋ぐものじゃ。もしそれが消えれば、お主の精神は元へ戻れなくなる危険性がある。くれぐれも気を付けるようにな」


「成程、分かりました。それでは早速、魔術を始めて下さい」


「そうじゃな…では、ユトナの手を握るのじゃ。直接繋がりがあった方が、術も完成しやすい」


セルネの指示に従い、ユトナが寝かされているベッドの傍に歩み寄るとその場に跪き彼女の手をぎゅっと握りしめる。

緊迫した空気が辺りを支配し、息をするだけでも息苦しくなるくらい。


「本当は、僕が助けに行こうと思ったんですけど…若様に託しました。必ず、ユトナを呼び起こして下さい。そうじゃなかったら…僕、本当に貴方の事許しませんから」


「勿論ですよ。手ぶらで帰るつもりはありません」


「若様…どうかお気をつけて」


「ええ、術の途中にもし何かあれば、援護頼みましたよ」


セオとシノアが不安に押し潰されそうな眼差しを向けつつ、それでもロゼルタにエールを送る。

特にシノアの瞳には相も変わらず彼に対する怒りの感情も孕んでいたが、それより何よりユトナと…ロゼルタの身を案じているようだ。


「では…始めるぞ」


凛としたセルネの声が、辺りの空気を震わせる。

詠唱を始めるとベッドを中心として魔法陣が浮かび上がり、複雑な模様の魔法陣から淡い光が放たれる。

そして、ユトナとロゼルタの手の甲に描かかれ魔法陣もまた、然り。


視界がだんだんとあやふやに、白で埋め尽くされてゆき、ゆっくりと瞼を閉じるロゼルタ。

ぐるぐると頭の中が掻き回されていくのを感じつつ、先程まではしっかりと踏みしめていた地面さえも、だんだんとあやふやになってゆく。

次第にふわふわと空間を漂っているような感覚に襲われ、身体が軽く、意識が遠のいていくのを感じた──…


何も聞こえず、シンと静まり返った空間は静寂が支配するばかり。

先程まで感じていたセオ達の気配すらも、いつの間にか消え失せているのに今更ながら気づく。

あやふやになっていた感覚や意識も次第にはっきりし始め、ゆっくりと瞼を開けるロゼルタ。

するとそこには、予想だにしなかった光景が広がっていた。

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