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煌天の蒼月 第1部  作者: 天空朱雀
第5章 蒼月の日
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第13話

「は…?」


今、2人の目の前にいるこの胡散臭い男は、一体何と言った?

あまりに突拍子も無い青天の霹靂に、目を見開いたまま唖然とするばかり。

暫く思考停止に陥る2人であったが、最初に我に返ったのはセルネであった。


「…そんな話、おいそれと信用できると思うか? それに、何故お主がそれを知っておるのじゃ…?」


「信用するしないは、貴方達の自由です。ですが、これだけは断言出来る。私は、貴方達が求めている手掛かりを手にしていると思いますよ?」


ロゼルタが口を開く度、彼に対する不信感は増すばかり。

何故、彼がシノアの所在を知っている? 何故、それをわざわざ2人に伝えようとする?

何より…一体彼は、何を企んでいるというのか。


セルネは彼の口車に乗ってはいけないと答えを渋る中、そんな彼女を押しのけるようにして会話に割り込んでいたのは、今までロゼルタに正体を知られまいと俯き極力話さないようにと口を噤んでいたユトナであった。


「…本当に知ってんだな? なら教えてくれよ。どうしてもアイツを探さなきゃなんねーんだよ…!」


「なっ…戯け、奴の言葉を真に受けるでない! どう考えても胡散臭いじゃろうが。間違いなく罠じゃろうて」


「そうだとしても、確かめる価値はあるだろ!? 騙されようが何だろうが、アイツを助ける為ならオレは何だってやるぜ」


ロゼルタの言葉を完全に罠だと決めつけているらしいセルネは、ユトナに頭を冷やせとばかりに警鐘を鳴らす。

しかし、藁にも縋りたいユトナにとって、彼女の警告は届かない。


「全く…とんだ単細胞な上に頑固な奴じゃ。…まぁ、罠だとして…どうして罠を張る必要があるのか、色々と聞き出す事も可能じゃしな。…若君、お主が知っておる事を教えて貰おうか」


「…ええ、構いませんよ。私の後について来て下さい。騎士が居る所まで、私が案内しますよ」


ロゼルタの眼鏡の奥に潜む眼光が、妖しい色を放つ。

満足そうに口元の両端を吊り上げるなり、2人の返事も待たずにさっさと踵を返して歩き出すロゼルタ。

警戒は相変わらず怠らぬようにして、2人は頷き合うと彼の背中を追った。


(あ、そういやさっき思いっきり素でアイツに話しちまったけど、アイツにオレの正体ばれてねーかな…?)


黙々と廊下を歩くのも飽きたのか、ユトナはあれこれと思案を巡らせる事にしたらしい。


彼女の脳裏を過ぎるのは、ロゼルタの真意。

おそらく、抜け目無い彼の事だ、あれだけ本性を曝け出せばユトナの正体に気付かない筈も無い。

流石にユトナが双子の片割れと入れ替わっているという事情は知らないであろうが、それにしても多少なりとも疑っても可笑しくないであろうに。


しかし、ロゼルタはユトナを疑うどころか、全く持って興味を示す事すら無い。

その、あまりに淡白さが逆に不自然さを感じるのはユトナの自意識過剰なのであろうか。


おそらく、セルネとは別の種類の不信感をロゼルタに抱く中。

ふと我に帰れば、いつの間にか一同は地下へと足を踏み入れていたようであった。


「…おい、本当にこんな所に居るのかえ?」


流石のセルネも痺れを切らしたのか、ロゼルタに対する不信感は募る一方。

その一方で、先頭を歩くロゼルタは2人に背を向けたまま、口を言開こうとはしない。


「なぁ、やっぱオレ達の事騙してたのかよ!? だったら何でこんな真似…」


「……知っては、いますよ。けれど、貴方達に教える訳には参りません。…貴方達には、此処で朽ち果てて貰いましょう」


感情を一切排除したような、冷え切った声色。

一瞬怯んだのか肩を震わせるユトナをよそに、振り返ったロゼルタの表情はまるで人形のように何の感情も感じられず、仄暗く光る双眸だけが何処か不気味に映る。


ロゼルタは2人の返答を待たぬまま、首に掛けたペンダントに手を添える。

すると、ペンダントの宝石から眩いばかりの閃光が放たれたかと思えば、宝石が瞬時に姿を変え巨大な槍へと姿を変えた。

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