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煌天の蒼月 第1部  作者: 天空朱雀
第4章 魔耀石の力
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第6話

「お、俺にもよく分からない…。けど、何か…身体の何処かで、魔耀石を拒絶してるような、気がした…」


「何だそりゃ? そんな事ってあんのか?」


肩で息をしながら、何とか声を絞り出すセオ。

すると、異変を感じ取ったマディックとセルネも、彼の傍に駆け寄ってきた。


「セオルーク…大丈夫か? 一体何があったんだ? きちんと言われた通りの使い方をしたのか?」


「あ…はい、言われた通り、石を持って強く念じた…つもりです。でも、石の色は全然変わらないし、こんな事になっちゃうし…」


マディックもこんな事が起こるとは想定外だったようで、心配そうに眉根を寄せながらセオに声をかける。

そこまで詳しい知識は持ち合わせていない為、何故セオにだけこういった反応が起こるのか皆目見当がつかず首を捻るばかり。

他の騎士達も異変には気が付いているようで、心配そうにセオを見遣る者、それでも気にせず自らの事に専念する者…様々だ。


「今まで沢山の騎士達が魔耀石を扱うのを見てきたが、こんな事は初めてだな…。そもそも、危険があれば使用許可で出ないであろうし。…セルネ殿、これは一体どういう事なのか…何か思い当たる節はご存じ無いか?」


「ふむ…妾も正直驚いておる。一つの属性に縛られない者は極稀におるが、まさか石が一切反応しない者がおるとは…。これは興味深い」


「否、興味を惹かれている場合ではあるまい。魔術の研究がしたければ、余所でやってくれ。私の部下を危険に晒すような真似だけは、絶対に避けたい。セオルークは本当に大丈夫なのか?」


此処で魔術師としての本能や探求心がふつふつと湧き上がってきたようで、セオの身体の事より反応しなかった魔耀石の研究に興味が惹かれているらしいセルネ。

しかし、そんな彼女の態度に不快感を示したのはマディックだ。


マディックに窘められ、改めてセオの顔と地面に転がる魔耀石を交互に凝視する。

セオは大分落ち着きも取り戻してきたようで、恐縮した様子で手をぶんぶん振れば、


「あ…俺ならもう大丈夫ですから! 何かよく分かんないけど、もしかしたら俺は魔耀石を使えない体質なのかもしれないですし」


「それはそれで、さらなる疑問が生じる所じゃな。…本来、この世界の人間には僅かながらも魔力を所持するものじゃ。勿論、量や質の違いはあるがのう。魔耀石は、それを魔術に似た力として発動させる手助けとなるのじゃ。

それが叶わぬというのなら、お主の体内には魔力が無いという事になるが、そう結論付けるのも早計じゃ。何しろ、お主は石の力を拒絶するように感じたのじゃろう?」


「は、はい。何か、身体の中で何か弾かれるような気がして…」


口元に手を当て、神妙な面持ちであれこれと思案を巡らせるセルネ。

一方、セオはそんな彼女の雰囲気に気圧されそうになるものの、こくこく頷いてみせた。


「そこが一番の疑問点なのじゃ。何故、お主は魔耀石の力を拒絶したのか。お主にも分からぬとなると、意図的に行った事では無かろうて。

…ともかく、今後一切お主は魔耀石に触れぬようにせよ。原因が解明せぬ今、それが一番良かろう」


「はい…分かりました」


確かに、セルネが暫定的に導き出した結論に異論は無かったようで、二つ返事で了承するセオ。

セオの身を案じるマディックもまた、セルネの結論には同意しているのか特に口を挟む事は無かった。


「ともかく…セオルークは医務室に行って、身体を休めておくといい」


「いえ、もう本当に大丈夫ですから! 俺も此処で見てていいですか?」


「そうか? そう言うなら、他の者の邪魔にならないよう、端で待機しているといい。…ただし、もし僅かでも身体に異変を感じたら、すぐに私に伝えるように。…分かったな?」


「ありがとうございます、隊長」


マディックは未だセオの事が心配でならないようだが、何より本人が此処まで残留を要望しているのなら、強制する事は野暮だと感じたのだろう。

自分の謂わば我が侭を受け入れてくれたマディックに感謝の言葉を伝えるセオ。

すると、ややこしい話に全くついていけず、今までずっと黙ったまま事の成り行きをじっと傍観していたユトナが、いきなりセオの肩をばしばしと乱暴に叩いてきた。


「何かよく分かんねーけど、とりあえず元気そうで良かったじゃねーか。そんじゃついでに、オレがババーンと魔耀石使いこなす所も見とけよ」


ユトナは自信満々にそう言い放つと、セオから離れて魔耀石とぎゅっと握りしめる。

そして、ゆっくりと瞼を閉じて精神を静かな海へと沈めてゆく。

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