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煌天の蒼月 第1部  作者: 天空朱雀
第4章 魔耀石の力
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第5話

「ね、念じるって…どう念じればいいんだろ…?」


「セオはいちいち考えすぎなんだよ。多分、こーゆうのは目閉じて色変われ変われ~って念じてりゃ何とかなるもんだろ」


「いや、それはそれでアバウトすぎるだろ…」


どうにも要領を得ていないようで訝しげな表情を浮かべるセオに対し、ユトナは特に深く考えていないのか早速順応している様子。

すると、セルネが手にした麻袋を翳してみせれば、


「まぁ、こういうものは実際に試してみるのが一番じゃ。ほら、皆に配るからこちらへ来るが良い」


そう言い放ってから空いている方の手をひらひらさせて手招きしてみせる。

騎士達は素直にセルネの言葉に従うと、1人1人魔耀石を手渡されていった。


そして、次はユトナが受け取る番。

わくわく胸躍らせながら手を差し出せば、セルネが改めてユトナの顔をまじまじと眺めた。


「……? お主は…」


「へっ? オレがどうかしたか? ああ、オレはシノアってんだ」


「ほう、シノアかえ…。ふむふむ、これは興味深いのう」


「……? 何がそんなに興味深いんだよ?」


「いや…こちらの話じゃ、気にするでない」


セルネの中でバラバラだったジグソーパズルがぴたりと組み合わさるようで。

ようやく合点がいったようにニヤリと口角を吊り上げるセルネ。

しかも、セルネの顔には何処か良からぬ事でも企むような、腹黒い笑みさえ浮かべているように見えて。

しかし、ユトナに彼女の真意を察する術など持たなかった。


「…よし、皆に行き渡ったようじゃな。では、早速始めるぞ。先程妾が説明したように、精神を統一させて強く念じるが良い」


セルネの言葉を皮切りに、騎士達はそれぞれ手にした石に念を送り始める。

勿論、セオやユトナも同じ事。


「なぁ、折角だからそれぞれどんな色に変わるかお互い見てみようぜ。セオがどの属性に属してるか気になるしさ。そんじゃ、セオが先にやってみろよ」


「へ? それはいいけど…何か見られてるっていうのも照れ臭いなぁ。まぁいいや、確か精神を統一させればいいんだよな?」


ユトナの提案に若干照れ臭そうに頬をポリポリ掻くも、提案に乗る事にして石をぎゅっと握りしめたままゆっくり瞼を閉じるセオ。

ゆっくりと邪念を振り払い、一点の揺らぎも無い水面のように精神を統一させる。


そうしてから、一体どれくらいの時が流れたのだろう。

セオと同時期に始めた騎士達はとっくに石の色に変化が生まれたというのに、セオが手にした魔耀石は最初の色のままで、一向に変化を見せようとはしない。

傍らで様子を傍観しているユトナも、流石にこれには不信感を募らせているようだ。


「なぁセオ、まだ変化無しかよ? 幾ら何でも遅すぎねーか?」


「……、うん…。でも、個人差があるのかもしれないし…」


ユトナの言葉に応えながらも、精神は手にした魔耀石へと注がれる。

自身を流れる魔力の渦…それがゆっくりと石へと注がれていくような、そんな不思議な感覚。

ようやくそれを僅かながらも感じた時、それは起こった。


「……っ!? ぐぁっ!」


「セオ…? おい、どうかしたのかよ?」


刹那、セオの全身を稲妻が突き抜けていくような感覚。

それは激しい痛みとなって、セオに襲い掛かった。


思わず苦痛の悲鳴を上げるセオ、彼の呻き声に驚いて目を丸くするユトナ。

しかし、あまりの激痛にユトナを気遣う余裕さえ無いようだ。


まるで、魔耀石を身体が拒絶するかのよう。

…むしろ、自分の体内の中の何かが、魔耀石の力を拒んでいるかのような、弾き飛ばしているような…それは確かな拒絶反応であった。


セオは堪らず、手にしていた魔耀石を地面に叩きつける。

相変わらず、石は最初と全く変わらず同じ色を放ち続けていた。


「……っく、う…はぁっ、はぁ…」


「セオ、本当しっかりしろって! 何があったんだよ? 大丈夫か?」


ぐったりとして膝をつくセオに、慌てて彼の傍に駆け寄るユトナ。

すると、セオは覇気の無い顔をユトナに向け、必死に作り笑いを浮かべてみせた。

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