第11話
「そういう訳で…居候、させてくれるよね?」
にっこり。
大人の女の妖艶な笑み…もとい悪魔の微笑み。
セオに、断る術など存在しなかった。
「わ…分かったよ、部屋貸してあげればいいんだろあげればっ! 言っておくけど、寄宿舎って結構狭いからな!」
「ありがとう~! 君って本当に優しいよね。あ、別に狭くても何でも、雨風が凌げれば何でもいいよ。そんな贅沢言ってられないし」
待ってましたと言わんばかりに目をキラキラと輝かせるレネード。
その一方で、上手い具合に彼女の思惑に乗せられてしまった事に後悔しつつ、仕方ない…と盛大に溜め息をつくのはセオであった。
すると、レネードは椅子から立ち上がると、ゆっくりとセオの前まで歩み寄る。
一体何事かと見上げてくるセオを見つめ返しながら、こう話を切り出した。
「そういえば…君の名前、聞いて無かったよね? 君の名前、何ていうの?」
「あ…そういえば、自己紹介すらしてなかったっけ。俺の名前はセオルーク=リゼンベルテ。セオでいいよ」
レネードはセオの名前を心の中で復唱すると、自分の人差し指を口元に当て、その指をおもむろにセオの唇に押し当てると、
「セオ君か…うん、これから宜しくね」
「……っ!? へっ? あ、う…」
唇に押し当てられた指に一気に気が動転すると、顔を真っ赤にしながらロクに挨拶も出来ずにうろたえるセオ。
そんなセオを見つめながら、レネードはにっこりと微笑むのであった。
──この2人の出会いが、後に何をもたらす事になるのか。
それは、今の2人が知る由も無かった…。