表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
煌天の蒼月 第1部  作者: 天空朱雀
第7章 消えた面影
101/134

第8話

その場に残されたのは、ユトナとロゼルタばかり。

今まで騒がしいくらいに賑やかだった空気は一気に静寂へと色を変え、何となく気まずい雰囲気が流れる。


元来、こういう堅苦しい空気が苦手なユトナは居心地悪そうにポリポリ頭を掻いていたが、無理矢理何か話題でも持ち出そうか…そんな刹那。


「……身体の具合は如何ですか? 何処か痛むとか、身体が重いとか、そういった事は?」


「へ? え、あー…平気平気。全然元気だよ。まぁ…最近ずっと寝かされてたから、身体鈍っちまったけどな」


そう返答して、へらりと笑い飛ばすユトナ。

何とか場の空気を和ませたかったのもあるだろうが、そんなユトナの視線の先に映り込んだのは、何時になく神妙な顔つきのロゼルタ。


「……、ずっと、貴方に言いたかった事があるのです…私は、大きな過ちを犯してしまった。決して償いきれない罪を背負わなくてはならない。そのせいで、貴方にも迷惑をかけてしまいましたし…謝ってもどうにもならない事は分かっていますが、それでも謝らせて下さい。私はきっと、オブセシオンを止めなくてはならなかったのに…」


まるでそれは、教会の神父に懺悔でもするかのような口ぶりで。

ユトナに告白するというよりは、只単に心の奥底に凝り固まった様々な思いや感情を穿き散らしたかっただけなのだろう。


当然、ロゼルタが何をしたのかさえ全く知らないユトナにしてみれば、彼の言葉はさっぱり理解が出来ずむしろ宇宙語でも話しているのではないかと思うくらいで。

不可解そうに眉をしかめつつ、こう返答した。


「はぁ? オマエの言ってる事、さっぱり分かんねーんだけど…。でも、今オレに謝ったんだよな? 何で謝られんのか分かんねーけど、オマエにしちゃ随分しおらしいっつーか…どうかしたんか? 何か変なもんでも食ったんじゃねーの?」


「私は至って平常ですよ。全く、人を拾い食いでもするような言い方をしないで下さい。貴方とは違うんですから」


「ちょ、おい! オレだって拾い食いなんかしねーよ!」


しおらしい態度は何処へやら、あっという間にいつもの殊勝で嫌味な態度に戻ってしまったらしい。

思わぬ所で反撃を食らってしまったユトナは不満そうに頬を膨らませていたが、次いで放たれるロゼルタの言葉でその表情は一変する羽目となる。


「お詫びの印に…何でも一つ、貴方の言う事を聞いて差し上げますよ。何が宜しいですか?」


「……へ?」


予想だにしなかったロゼルタの発言に、鳩が豆鉄砲食らったような顔をぶら下げるユトナ。

だが、彼の事を信用していない──というよりは、何時ものようにからかわれていると思っているのだろう──ユトナは、訝しげにロゼルタを睨み付けるばかり。


「いやいや、何が宜しいとか言われても…つーかオマエ、本当何なんだよ? オレの事からかって面白いか?」


「ええ、貴方をからかうのは心底面白いですが…それとこれとは別です。先程も申し上げたでしょう、貴方を危険な目に遭わせてしまった、と。その償いの一つのつもりですよ」


「だから、それがよく分かんねーんだよな……あ、そーだ」


からかうのが面白いのは否定しないのかよ、と内心悪態をつきつつ何か閃いたらしいユトナが心底意地悪そうな笑みを口元に浮かべた。


「よーしじゃあ今までの恨みつらみを晴らさせろーって事で一発殴らせろ、いいよな?」


「……はい? それ、本気で仰っているのですか?」


「当たり前だろ? いやーオマエ一発殴ったらスカッとするだろーなー」


頭を叩いた時の光景を思い浮かべて、思わず満面の笑みを浮かべて清々しそうにするユトナ。

その一方で、そんな返答が来るとは微塵も思っていなかったらしいロゼルタといえば、珍しく顔に動揺の色を映し出していた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ