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登場人物(悪魔3)



★ペイモン 『欲と思惑』で初登場

 パイモン、バティンなどとも呼ばれる。ソロモン72柱の悪魔。序列は第9位。200の軍団を率い、地獄の西方を治める王でもある。ルシファーに忠実な者と呼ばれ、堕天する前は主天使の階級に属していたと言われている。人間の前に現れるときは、多くの臣下にかしずかれ、ヒトコブラクダに跨り、宝石が散りばめられた冠を被った王の姿をしている。また、ベバルとアバラムという2人の王族を同伴している。女性のように美しい顔をしているが、驚くほど声が大きく、獣が吠えたような声をしているという。ペイモンは科学や芸術などのあらゆる技術や秘密について語る。また、召喚者に名誉をもたらし、良い使い魔を与えるという。

 『悪魔倶楽部』ではペイモン自身の容姿は原典をなぞっているものの、共に現れる臣下や、ベバルとアバラムの存在は省略されている。樹流徒はベルフェゴールとの戦いで瀕死の重傷を負い、オロバスに救われた。そのオロバスの前に現れたのがペイモンだった。ペイモンはキルトの命を奪おうとはせず、むしろ「キルトが生存していたほうが都合が良い」と言った。その裏にどのような思惑が潜んでいるのか、現在のところは不明である。


★ダンタリオン 『ロストテクノロジー』で初登場

 ソロモン72柱の悪魔。序列第71位。36の軍団を率いる偉大な侯爵。召喚されると人間の姿で現れるが、無数の男女の顔を持っており、その顔は常に変化し続けるという。右手に一冊の分厚い本を持っている。ダンタリオンはあらゆる学芸に関する知識を召喚者に教える。また、人間の考えを知り、それを自在に操ることができる。ほかにも召喚者の求めに応じて人間の幻影を作り出し、それを世界のどこにでも送り込める力も持っている。

 『悪魔倶楽部』に登場するダンタリオンの外見は原典と若干異なっており、人間ではなく“円柱に沢山の顔がついた悪魔”となっている。また、顔だけでなく手も沢山ついており、それぞれの手に本を持っているという設定。ちなみに一冊だけ特に分厚い本を持っおり、それが原典のダンタリオンが持っている本を現している。忘却の大樹にいたダンタリオンは、樹流徒の正体を知った上で、これ以上先へ進まないように警告を与えた。


★フンババ 『魔界血管』で初登場

 『ギルガメシュ叙事詩』に登場する巨人。エンリル神により杉の森の番人に任命された。斧で木を切り倒したギルガメシュに激怒したフンババは、その迫力でギルガメシュを恐怖させる。ギルガメシュの友人エンキドゥはフンババのことを「その叫び声は洪水だ。その言葉は火、その息は死だ」と語っている。フンババは、ギルガメシュ、エンキドゥの2人を相手に激しい戦いを繰り広げたが、太陽神シャマシュが巻き起こした嵐によって視界を塞がれ、身動きが取れなくなったところへ、ギルガメシュの攻撃を受けて倒れた。敗れたフンババは命乞いをしたが、それをエンキドゥに聞き入れてもらえず、首を切り落とされた。ちなみに絶命するよりも前、フンババは、エンキドゥに対してギルガメシュよりも長く生きられない呪いの言葉をかけた。後にその言葉は現実のものとなる。

 『悪魔倶楽部』においては、フンババは忘却の大樹内部に登場し、問答無用で樹流徒に襲い掛かる存在として登場する。巨体を生かした力のある攻撃や、口から吐き出される炎や毒息で戦ったが、樹流徒に一撃も与えることなく敗れた。ただし『ギルガメシュ叙事詩』では命乞いを聞き入れられなかったフンババだが、『悪魔倶楽部』ではそれがあっさり樹流徒に受け入れられ、存命を果たすことになる。


★グザファン 『半円の硬貨』で初登場

 『地獄の辞典』に登場する堕天使。地獄の第2階級の悪魔。創意工夫の才に溢れた堕天使としても知られている。また『天使辞典』ではグザファンには“ゼフォン”という別名があるとされている。グザファンは魔王サタン(ルシファー)が神に反旗を翻した時、天国を焼き払おうと提言した。しかしその企てが実行される前にサタンが敗れ、グザファンも地獄に落とされた。地獄に落ちたグザファンは地獄の釜のふいご(風を送る道具)吹きになった。

 『悪魔倶楽部』のグザファンはヌトの町(憤怒地獄に存在する魔界唯一にして最大の鍛冶の町)に住む武具店の主として登場する。頭から2本の角を生やし全身真っ赤な毛に覆われた猿人の姿をしており、これは『地獄の辞典』に描かれたグザファンの挿絵が基になっている。ただし『地獄の辞典』のグザファンがふいごを手に持っているのに対し、『悪魔倶楽部』の同悪魔は両手にライフル銃に似た形状の火炎放射器を持っている。グザファンは魔界血管までの道のりを教える代わりに樹流徒に指輪を売りつけた。その際、指輪の値段をどんどん吊り上げる詐欺まがいの行為に出たが、樹流徒がグザファンの目の前で硬貨を折り曲げて力を見せ付けると、途端に低姿勢になった。


★グシオン 『線路は続く』で初登場

 グサイン、グイソンなどとも呼ばれる。ソロモン72柱の悪魔。序列第11位。40の軍団を指揮する地獄の偉大な公爵。グシオンについて『ソロモンの小さき鍵』(ゲーティアもしくはゴエティア)には「Xenopilusに似る」と記され『悪魔の偽王国』には「Xenohilusに似る」と記されている。このXenopilusやXenohilusが何を意味しているのかは不明だが、ゼノには「異国」という意味、フィルスには「愛する」という意味がそれぞれあり、その二つを合わせたXenopilusという言葉には「異国を愛するもの」という意味があるようである。グシオンの姿は不明だが人面の猿という説があり、そのため創作作品の中ではヒヒの姿で描かれることが多い。また、大魔術師アレイスター・クロウリーは『ソロモンの小さき鍵』の解説書の中でグシオンのことを「奇妙な青い頭の生物」としている。グシオンは現在・過去・未来に関するあらゆる質問に答え、召喚者に名誉と地位を授ける力を持つ。また不和な友人との仲を取り持つ力も持っている。

 『悪魔倶楽部』のグシオンはヒヒの姿ではなくアライグマの姿で登場する。体の大きさは中型犬以上、大型犬未満。水玉模様の大きな蝶ネクタイを首に巻きタキシードを着ている。厳重に警備された憤怒地獄の造幣所を自由に出入りできる身分だが、普段何をしているのかは不明。鉱山の中で偶然にも樹流徒と出会ったグシオンは、紫硬貨2枚と引き換えに樹流徒をトロッコに乗せて造幣所まで案内した。愛らしい見た目に寄らず結構がめつい性格をしており、グシオン自身が物語の中で「ボクは守銭奴」と言い切っている。そのような性格になったのは憤怒地獄が現金な世の中に変わってきたことと関係しているようだ。


★モロク 『線路は続く』で初登場

 モレクとも呼ばれる。ソロモン72柱の悪魔で序列は第21位。地獄の議長にして大伯爵。30の軍団を指揮する。その名にはヘブライ語で「王」の意味がある。本来はヨルダン東部に住んでいたアモン人が崇拝する神である。「涙の国の君主」「母親の涙と子供のたちの血にまみれた魔王」などと呼ばれており、その残忍な性格に加えて異国の神ということから一般的にユダヤ人やキリスト教から非難の対象とされる悪魔である。モロクは牛頭人身の青銅の像という姿で知られており、体内の炉で生贄を焼く。コラン・ド・プランシーによれば像の内部は7段に分かれており、ひとつ目に小麦粉、二つ目に雉鳩、三つ目に牝羊、四つ目に牝山羊、五つ目に子牛、六つ目に牡牛、そして七つ目に子供を入れたという。モロクは召喚者に対して解剖学の知識を与える。宝石や薬草についても詳しく、さらには使い魔を与えてくれる。

 『悪魔倶楽部』に登場するモロクも青銅の(ような)肉体を持つ牛頭人身の悪魔として登場する。腹には大きな口がついており、その奥では絶えず炎が燃え盛っている。性格については魔界で一、ニを争うほど残忍であることに加えて、悪魔としてのプライドが異様に高いという設定になっている。そのためモロクは人間である樹流徒が何体もの悪魔を倒していることに腹を立て、悪魔という種族の誇りを守るため樹流徒を襲った。硬くて力強い肉体と、体内から吐き出す炎、それから岩の塊を召喚して飛ばすなど多彩な能力で樹流徒を苦しめたが、首から下を全て樹流徒に凍らされて降参した。ただしそれは演技であり、樹流徒の背後から騙し打ちを仕掛ける。結果的にそれが失敗してトドメを刺された。上記の通り『線路は続く』の話で初登場したが末尾での登場であり、実質的な初登場は次話の『牛頭悪魔』である。


★ディオニュソス 『魔動機関車』で初登場。

 ギリシャ神話に登場する酒と豊穣の神。オリュンポス12神の一柱として数えられることもある。ローマ神話では“バッカス”と呼ばれる。父はオリュンポス12神の長ゼウス。母は人間のセレメ。ディオニュソスの名には「若い神」の意味がある。まだディオニュソスが胎児のとき、母セレメは、父ゼウスの正妻であるヘラに嫉妬され謀殺される。ディオニュソスはセレメの体内から取り上げられ、ゼウスの太腿の内側に縫い込まれて臨月まで育てられた。こうしてディオニュオスは改めてゼウスから誕生し、人の子でありながら神としての性質を得たのだと思われる。その後、ディオニュソスはセレメの姉妹であるイノとその夫であるボイオティアの王アタマスに預けられる。しかしその2人がヘラによって発狂させられたため、ディオニュソスはニンフ(妖精)に育てられることになった。成長したディオニュソスはあるとき葡萄の栽培法と酒の製造法を知った。ヘラから逃れギリシャ、エジプト、シリア、インドなどを放浪しながら葡萄酒を広めることで多くの信徒を得る。ディオニュソスの神秘性を認めず彼を迫害しようとした者たちはことごとく発狂し、八つ裂きにされ、また動物に姿を変えられた。長い旅の終わりにディオニュソスは冥界で見つけた母(彼女はテュオネと名付けられた)をオリュンポスに連れ帰り、正式に神々の仲間入りを果たした。

 黒アールヴの項でも説明されている通り、『悪魔倶楽部』では神であろうと妖精であろうと魔界の住人たちは全て悪魔として扱われている。そのため神ディオニュソスも『悪魔倶楽部』では悪魔の一員である。ディオニュソスは葡萄の葉をあしらった冠とネックレスを身につけた美男の姿で、憤怒地獄に存在するとある町の酒場のマスターとして登場した。気前の良い性格をしているという設定で、樹流徒やクロセルに飲み物を奢る場面がある。戦闘シーンは無いためその実力は未知数であるが、並の悪魔では到底太刀打ちできない力の持ち主なのは間違いないだろう。


★クロセル 『魔動機関車』で初登場

 クロケル、プロケル、プケル、ポケルなど多数の別名を持つ。ソロモン72柱の悪魔で序列は第49位。地獄の大伯爵であり48の軍団を率いる。堕天する前は能天使だったとされるが、権天使、座天使であったという説もある。召喚されると天使の姿で現れるという、悪魔の中では珍しい外見の持ち主である。教養学と数学(特に幾何学)に精通している。悪天候の幻影を生み出す力を持ち、何も無い場所に大洪水のような音を起こす。また温泉を発見したり、水を温める力も持っている。

 『悪魔倶楽部』のクロセルは“現世かぶれの発明家”として憤怒地獄に登場する。原典と同じく天使の姿をしているが、さらに白衣を着ており『悪魔倶楽部』の世界においてはより一層他の悪魔たちとは一線を画した外見になっている。クロセルは過去に現世に召喚され、そのとき偶然にも汽車を目撃し、その魅力の虜となった。以来、憤怒地獄でひとり魔動機関車(魔力で動く機関車)の実験を続けていた。しかしすでに9回の失敗を経験しており、樹流徒の目の前で丁度10回目の失敗を喫した。


★アミー 『炎海に架かる橋』で初登場

 アヴナスとも呼ばれる。ソロモン72柱の悪魔。序列第58位。36の軍団を率いる地獄の大総裁。堕天前は天使と能天使の位に属していた。15世紀のグリモワール『ミュンヘン降霊術手引書』にはハンニという名前で登場しており30の軍団を率いる大総裁だという。冥界に住んでおり、召喚されると最初は炎に包まれているか炎そのものの姿で現れるが、しばらくすると端正な人間の姿になる。人間の生命力と引き換えに天文学や占星術の知識を与える。また精霊が守っている秘法をもたらしてくれたり、よき使い魔を与えてくれる。

 『悪魔倶楽部』のアミーはベルゼブブの一味として憤怒地獄に登場し、炎の海に架かる巨大な橋の上で樹流徒と遭遇した。端正な男の形をしているが体は炎そのものである(ただしアミーの本体が隠れている両手だけは他の部分と違う)。両腕が伸縮自在なほか、自由に宙を浮いたり、全身から炎の弾丸を放つ能力、さらには魔法壁や使い魔のカラスを呼び出すなど、多くの能力を使用できる。アミーは炎海から飛び出した巨大な怪魚に飲み込まれ一度は絶命したかに思われたがまだ生きており『炎の悪魔再び』の話で再登場を果たす。火山内部での激闘の末、本体の目玉が隠れた手を氷の鎌で突かれて今度こそ魔魂と化した。


★ヴィヌ 『謎の襲撃者』で初登場

 ヴィネ、ヴィネアとも呼ばれる(むしろヴィヌよりもヴィネと呼ばれることのほうが多いようである)。ソロモン72柱の悪魔。序列第45位。36の軍団を率いる地獄の伯爵。黒馬にまたがりクサリヘビを手に持った獅子(もしくは獅子の顔をした男の姿)で現れる。怪物の姿に変身するとされているが詳細は不明。また召喚者の求めに応じて人間の姿を取るというが、そのときどのような格好をしているかも不明である。ヴィヌは過去、現在、未来の秘密を知り、魔法使いの正体を暴く能力もある。ほかにも召喚者の求めに応じて頑強な塔を建て、逆に敵の砦の壁を破壊したり、嵐で海を荒れさせるなど、多くの能力を持つ。

 『悪魔倶楽部』のヴィヌはほぼ原典に従った外見をしており、獅子面と人間の胴体を持つ悪魔として登場する。灰色の毛皮に全身を覆われているが、それは小説用の創作である。また、細かい相違点だが、蛇は手に持っているのではなく、腕に巻きつけているという設定になっている。憤怒地獄の山頂に現れたヴィヌは「力を試させてもらう」と言って樹流徒を襲撃した。嵐を起こしたり、手に巻きつけた蛇を槍に変身させるなどして戦い、樹流徒と互角に渡り合ったことからかなり戦闘能力が高いと思われる。戦闘後には「(樹流徒の)敵でも味方でもない」と言って去っていた。彼がどのような目的で動いているのかは不明で、それは貪欲地獄に現れたペイモン(『それぞれの思惑』参照)と通じるところがある。


★ベリアル 『魔王ベリアル』で初登場

 別名ベリオール。ベリアルという名前はヘブライ語の「beliya'al」(無価値な者)に由来している。ソロモン72柱の悪魔。序列第68位。80の軍団を率いる。堕天する前は力天使の階級に属し、ルシファーの次に作られた天使とも言われている。また『死海文書』において「闇の子の軍勢を率いる者」とされているベリアルは、サタンと関連付けられることもある。ベリアルは嘘偽りで他者を欺く事を喜びとしており、その弁舌の才を振るってソドムとゴモラの町に乱れた性を蔓延させ、町が滅びるきっかけを作った。またイエスを訴えたという逸話もある。ジョン・ミルトンは『失楽園』の第一章の中で「天界から堕落した聖霊の中で、最後にやって来たベリアルほど淫らで、悪徳のための悪徳それ自体を愛する下劣な者はいなかった」と記している。ただ、そのような性格とは裏腹に、ベリアルは人間の前に姿を現すときは炎の戦車に乗った美しい天使の姿をし、優雅な声で喋るという。そして召喚者の地位を向上させ、友情を強め、さらに良き使い魔を与えるという。

 対して『悪魔倶楽部』におけるベリアルの外見は原典と少し違う。6枚の翼を持った人の姿という天使的な部分は残しつつ、額から2本の角を生やしていたり、赤を基調とした肌をしていたり、低くドスの利いた声をしていたりと、悪魔らしく禍々しい部分を付け加えてある。ただ、それでもベリアルが美しい姿をしていることには変わりない(小説の中ではそう明記されていないが)。憤怒地獄の魔王として登場するベリアルは、魔王に相応しく攻防共に強力な能力をいつも備えており、その強さで樹流徒を圧倒した。一度は機転を利かせて反撃に出た樹流徒にトドメを刺されかけたが、得意の嘘を使って偽の取引を持ちかけ樹流徒を騙し立場を逆転させた。しかし『悪魔倶楽部』のベリアルはこの上ない負けず嫌いな性格をしているという設定になっており、その性格ゆえに純粋な実力で樹流徒を倒さなければ気が済まず、ほぼ勝利を手中にしていたにもかかわらず樹流徒を見逃した。余談だが、初登場時にベリアルが周りに女性をはべらせていたのは、ソドムとゴモラの町に乱れた性を蔓延させた逸話を元に考え出された描写である。


★メフィストフェレス 『旅人たち(前編)』で初登場

 メフォストフィレスと表記される場合もある。16世紀に実在したといわれる魔術師ヨハン・(ゲオルク・)ファウストの伝説や、彼を題材とした作品に登場する悪魔。地獄の七大支配者の一人とも、サタンの代役を務める者とも言われている。またサタンと同一視されることもあるようだ。メフィストフェレスの名前の由来は不明だが「光を愛さない者」(me phos【否定語】photos【光】philos【愛する者】)という解釈がされている。ゲーテの戯曲『ファウスト』において、メフィストは、人生に悲観していた老学者のファウストと出会い「広い世界の全てを経験させてやる。その代わりファウストが人生に満足したとき魂を貰い、あの世で服従してもらいたい」という内容の賭けをする。メフィストの力により若返ったファウストは、マルガレーテ(愛称グレートヒェン)との恋、ワルプルギスの夜、マルガレーテの死、アルプス山での長い冬眠、兌換(だかん)紙幣発行の提案(ローマ皇帝はそれを実行)、美の象徴へレナとの結婚と彼女の消滅などを経験し、最後は干拓事業に乗り出す。ファウストは事業に邪魔な老夫婦を殺してしまい、それがきっかけとなって憂いの霊に息を吹きかけられ盲目となる。メフィストは死霊を集めファウストの墓を掘らせた。その音をファウストは仲間のために人間たちが土地開拓している音だと勘違いし「時よ止まれ。お前は美しい」と死の言葉を唱えた。こうしてファウストとの賭けに勝ったメフィストだが、ファウストの魂を持ち去ろうとする彼の前に天使が現れる。マルガレーテの祈りによって救われたファウストの魂は天使に導かれ天に昇って行くのだった。

 『悪魔倶楽部』のメフィストフェレスは異端地獄に登場する。30くらいとも50くらいともつかぬ痩せた男の姿をしており、顔には白髭が生えている。また格好は全身赤ずくめ。異端地獄の海で遭難した樹流徒と偶然出会ったメフィストフェレスは「樹流徒をムウまで送ってあげよう」と申し出た。数年前から詩人となり魔界を旅しているという設定になっており、これは小説用の創作である。


★フォカロル 『旅人たち(中編)』で初登場

 フォルカロル、フルカロルとも呼ばれる。ソロモン72柱の悪魔。序列第41位。30の軍団を指揮する地獄の偉大な公爵。堕天する前は第七天の住人だったとされる。フォカロルの名前は、『レ・グラン・グリモワール』に登場する(ルキフゲ・)ロフォカレのアナグラムだと言われている。フォカロルはグリフォンの翼を持つ人間ないしはグリフォンに(またが)った人間の姿で登場する。風と海を支配する力を持ち、人を溺れさせたり時化(しけ)を起こして船を沈めたりする残忍さを持つが『ソロモンの小さきゴエティアあるいはゲーティア』には「魔術師から命じられれば、いかなるものや人を傷つけることもしない」と記されている。ちなみに海に関する能力を持つフォカロルだが、この悪魔自身は海には潜らないらしい。

 対して『悪魔倶楽部』に登場するフォカロルは異端地獄の住人として登場し、思い切り海に潜っている。潜っているどころか海に住んでいるという設定になっている。姿は概ね原典に忠実で、グリフォンの羽が生えた人間という容姿が採用されている。耳にピアスをしているのは小説オリジナル設定。フォカロルは、樹流徒の釣り針に食べチキンを釣り上げられて憤慨するというちょっとした役どころでの登場だったが、結果的にはその出来事が、メフィストフェレスが樹流徒の正体に気付くきっかけとなったので、全く無意味な登場ではなかった。今のところフォカロルに戦闘シーンは無いのでその実力は未知数である。


★ダゴン 『旅人たち(後編)』で初登場

 人間の上半身と魚の下半身を持つ魚人。元々はペリシテ人(カナンの地に住み着いた海洋民族と言われている)が信仰していた漁業と農業の神であったが、ペリシテ人がユダヤの民に敗れたことで悪魔へと転落した。ダゴンの名前の由来はヘブライ語のdag(魚)とaon(偶像)だと言われているが、ウガリット語のdgn(穀物)に由来するという説もある。余談だがクトゥルフ神話にもダゴンと呼ばれる半人半魚の海神が登場する。

 『悪魔倶楽部』のダゴンは異端地獄の海で樹流徒を襲う悪魔として現れる。『悪魔倶楽部』では魔界に一体しか存在しない稀少な悪魔と、同じ名前と姿を持つ者が何体もいる夥多(かた)な悪魔が存在するが、ダゴンの場合は後者であり、樹流徒を襲ったときも4体同時に出現した。4体のダゴンは水中という地形と数的優位を利用して樹流徒を苦しめたが、メフィストフェレスの怒りを買って味方の一体が倒されたことをきっかけに形勢を逆転される。樹流徒にもう一体の仲間が倒され、最後はバロールの影に怯えて逃げ出した。ダゴンと樹流徒との間に会話シーンは無く、そのためダゴンが樹流徒を襲った理由は不明である。


★バロール 『旅人たち(後編)』で初登場

 ケルト神話に登場する巨人族、フォモールの王。彼が持つ邪眼(魔眼とも呼ばれる)には見た者を殺す力がある。邪眼は普段銀の瞼に覆われており、それを持ち上げるには男四人の力が必要だったという。バロールの目の数に関しては諸説あり、元々単眼であるという説、目は二つあったが幼い頃に片目がつぶれたという説、そして額に第三の目があるという説などが知られている。女神ダヌーの一族を従属させていたバロールはあるとき「自らの孫に殺される」というお告げを受けた。そのためバロールは娘エスリンに子供を産ませないよう彼女を塔に幽閉する。しかし塔に忍び込んだダヌーの戦士キアンとエリスンの間に光の神ルーが生まれ、最終的にバロールはルーが放った魔槍ブリューナクに邪眼を貫かれ、お告げの通り通り絶命してしまうのだった。

 『悪魔倶楽部』に登場するバロールは、ひたすら魔界を彷徨い続けるどこか悲しげな雰囲気の巨人として異端地獄の海に登場する。目の数については単眼説が採用されており、顔の真ん中に巨大な瞳がある。その邪眼は7日の内1日だけ開かれ、目を合わせた者はたとえ魔王ですら死ぬ、という設定になっている。また体の大きさは山の如く大きく、樹流徒は最初場ロールのことを巨大な岩と勘違いした。バロールは視線を向けられたり、指をされたり、目の前で戦闘行為を行う者を敵と見なす。そのためバロールの接近に気付いたダゴンは樹流徒と戦闘行為を中断して退却した。それだけバロールの力が凄まじいことの証明と言えるだろう。




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