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第2話 冒険の始まり? 強制執行付き

 さて、と声を出し彼は食事を済まして下宿先を出る。

 今日の仕事を探しに冒険者ギルドへと足を向けた。

 冒険者ギルドは冒険者の便利を図るために存在する、よって町の外へと繰り出す冒険者達が帰って来て直ぐに利用できるように外周部にあった、つまり下宿先から目と鼻の先の位置にあったのである。

 外観は宿屋兼酒場といった雰囲気で、る意味オーソドックスな感じであった。

 扉を開けて中に入ると左手に手続きカウンター、右手に食堂兼酒場の机などが並んでいる。

 目的の依頼票は左手奥の掲示板に下げられているのでそのまま奥へと足を踏み入れる。

 依頼票の大半は、西の森の灰色グレーウルフ退治だの銀色熊シルバーベアー退治だの、東の草原の蹴りウサギ退治だの北の水海みずうみ周辺の畑に出没する淡水クラーケン退治だの、物騒な依頼がほとんどで、薬草採取等もそこそこあるがモンスター生息地が大半なのであった。

 よって何の戦闘力も持たない陽介がのこのこ出て行ったら、あっという間に野生動物の餌となってしまうのは明白である。

 ほとんど人気のない隅っこに陽介は向かう。

 そこは街の中の清掃作業や畑の収穫作業手伝い等々、冒険者に人気のない依頼の掲示板となっている。

 人気がない理由は依頼料が安いというのもある。

 彼がこの仕事を始めた頃は手持ちの金もなく、常時腹が音を立てていたものだが、先程述べた馬車馬具を始めとする元世界の知識を売って糊口を凌いでいた。

 その知識を活かして自分で元の世界の物を売りにした商店を経営すれば良いではないかと思われる方もいるかも知れないが、料理のセンスは低く、手先も器用とは云えず、特許法があるわけでもないこの世界で独自の技術を売りにした物を作っても直ぐに真似されて売り上げが落ちるのがオチであるのは明白であった。

 それならば元の世界の中小企業が特許を取る時のように、強権発動が可能な強力なパートナーに売り込んだ方が安全安心である。

 その相手として冒険者ギルドそのものを選んだ訳だ。

 今までに異世界転移物では定番の「マヨネーズ」や「ハンバーグ」&「ハンバーガー」「柔らかいパン」等を提供していた。

 勿論自分で作れないのでノートPCで調べて、レシピを書いて下宿先で試作して失敗して、材料を変えて試作して失敗して、試行錯誤、トライアンドエラーの連続である。

 お陰で普通の冒険者から莫迦にされる事が多い非冒険一般職にも関わらず、変わった奴と云われているが莫迦にはされていなかった。


「♪今~日の仕~事はな~んしょっかな~っと♪」


 掲示板を覗いてみると今日に限って街中の清掃作業や荷物の運搬等の雑務も外壁直ぐ側の畑仕事も何にもなかった。


「ありゃ、こりゃ困ったな。今日は下宿で馬具の改良作業位かな。それか鍛冶屋に行って鉱石のサンプルを貰ってくるとか」

「あれ、ヨースケ。今日の仕事は決まったの?」


 陽介が掲示板の前で唸っていると、家事手伝いを追えたゾハラが後ろに立っていた。

 恐らくは今日の仕事を受けに来たのであろうが、先ほど陽介が確認した通り運搬の仕事もなかった。

 陽介は肩を竦めながら愚痴を云うようにゾハラに告げる。


「残念ながら運搬の仕事も、その他の仕事も今日はないですね。仕方がないから今日は仕事を休もうかと」

「ほほう、そうなんだ。実はさっきね、今日から街から近くの採取ならOKって父さんから許可が出たんだ」

「へぇ、おお、そう云えば革製のコートとか着てますね」

「うん、母さんのお古を貰っちゃった。荷物用の鞍も着けたからお弁当も沢山持って行けるんだ」


 ゾハラが実に嬉しそうに笑い、それに釣られて陽介も笑い顔を浮かべる。


「それは良かった、セントール族は多食ですからね。腹が減っては戦は出来ぬと言いますし、でも街の外にはモンスターこそいないでしょうけど危ない野生動物は結構居ると聞いてます。気をつけてくださいね」

「うん、頑張ろうね」

「……頑張って下さいね」

「一緒に頑張ろうね」

「自分は弱っちいからダメです」

「駄目だよ、始める前から諦めちゃ。頑張れば出来る、気合いを入れて行こう」

「いや、武器も防具も無いので危険が危ないし」

「大丈夫、行くのはユーミン谷だから」

「大昔トロールが出た場所ですか。今はハイキングコースになっているんでしたっけ」


 陽介は聞いた情報を思いだして口に出してみる。


 --確か変わった岩石が採れるという話だったっけ。サンプル採取には良いかも--


「そうそう。子供の頃自治会の子供会で行った事もあるから大丈夫。散歩みたいな距離だから直ぐ帰って来られるし」

「セントール族にとってはでしょう、ただの人間には遠すぎます。ゾハラさんに乗る訳には行かないんですから」


 ゾハラの自分視点での話に陽介は苦笑する。

 セントール族の背中は神聖視されているので特に女性の背中に跨がる訳には行かないのだった。


「あれ、馬には乗れなかったけ?」

「僕が乗れるのは自転車と自動車位ですよ。自動車は無いですし」

「うん、そのジテンシャで行こうよ。直ったんだよね。早いって聞いてるよ」

「あー、ええ。鍛冶屋のギム親方にバラバラにされてしまいましたが、何とか元に戻りましたよ。何故かスポークが何本かオリハルコン製になってましたけどね」


 以前ギム親方からギルド経由の依頼で『携帯しているマルチツール以外に何か技術の参考になる物があったら見せてくれ』と請われた事があった。

 正直、電気機器の説明は出来ないし、理解させるのも難しいので手持ちの荷物の中から純粋な機械の塊を探してみた。

 そして精巧な機械であり、統一規格の塊である折り畳み自転車をギルドと提携している鍛冶屋に持って行った。

 その結果、ギルドの錬金術師を巻き込んで解体作業を行ったのだが、アルミニウムに驚かれ、ノーパンクタイヤのゴムの車輪に驚愕され、歯車とチェーンと軸受けに腰を抜かされた事がある。

 その際に自転車に使用されているプラスネジや統一規格のボルトとナットをレザーマンのマルチツールとレンチだけで壊さずにバラバラにして行った訳だが、調子に乗って全部バラしてしまったので元に戻すのに非常に手間取ったのだ。

 特にアルミ製のスポークは何本も錬金術師に持って行かれてしまったので、仕方なくより強度のあるオリハルコンで包んだ鉄の棒で代用していた。

 その様な事があったにも関わらず陽介は、相手が驚いたのは元の世界の技術であって自分はただ持って来ただけだ、と云う自覚があったので自慢する気もなかった様だが。


「ギム親方だから仕方ないよ、ドワーフ族だし、犬に噛まれたと思って諦めなさい」

「…犬に噛まれた事があるんですか?」

「小さい頃追いかけられてお尻を噛まれた」


 ゾハラの悔しそうな声に陽介も釣られて下半身の方の馬尻に視線をやる。途端に非難の声が投げかけられたが。


「えっち」

「それはないデス。で、今でも犬に噛まれたら諦められると」

「ふん、噛まれる前に返り討ちよ」

「おお、流石リアルじゃじゃ馬、凄いですねぇ、怖いですねぇ。うんうん、じゃあそう言うことで」


 陽介がワザとらしく逃げだそうとするのを見てゾハラはニヤリと口を歪める。


「あ、ジテンシャだったら持って来ているから直ぐに行けるよ」

「何ですと!」


 その言葉に陽介は驚き、ゾハラの背中の鞍に括り付けてある見覚えのある化繊のバッグを見詰めた。


「通りで見た鞄があるなと思ったら。で、ハイキングに行くわけじゃないんでしょ。依頼は何なんですか」

「敢えて言うならユーミン谷のほこらにある札を取ってくる事かな。あと薬草の採取と」

「ハイキングじゃなくてオリエンテーションか。それって、依頼なんですか?」

「うぅん? 冒険者ギルドの訓練だよ」

「依頼料は?」

「ほとんど無い」

「帰らせて頂きます」

「ええ!? 一緒に行こうよぉ。他にヒマなヒト居ないんだモン」


 陽介は精神ポイントに100のダメージを食らった。


「うぐふぁっ、確かにヒマですがね、ふふ」

「それにヨースケの訓練にもなるし、いざという時が来るかも知れないし。人生何が起こるか分からないって、ヨースケの良く言う言葉でしょ」

「あー、まあ確かにそうなんですが。まさか、こんな事になるとは、って言うか何の装備もしていないんだけど」

「大丈夫任せてっ! ハイ、布の服と檜の棒」


 ぬっと突き出されたそれを陽介は思わず受け取ってしまう。

 確かに、定番のファンタジーRPGでの初期装備はそれだが、本物のファンタジーでそれをやって貰っては堪らないのだ。


「だが断る」

「それじゃあレッツゴー」

「聞いてくれ」


 ゾハラに腕を掴まれ陽介はズルズルとギルドの外へと連れ出されて行く。

 陽介は必死に抵抗するが、どう頑張っても二本の足では四つ足の馬力には適わないのであった。

 取り敢えずストック分はこれまでで。

 続きは暇を見て書いて置きます。

 一週間以内に掲載出来れば良いな。

 予定は未定。

 ではでは。

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