第39話 停戦そして五年。
ほぼ説明回です。
変な所満載なので、突っ込んでやって下さいませ。
近代化改装がなされた戦艦ミズーリの甲板上で国連PKF、都市国家パレードとアクアマンデ王国の降伏文書調印式が行われた。
国王が捕虜となっている為に代表者は法衣貴族のダラパニ卿が老体を推して調印式に望んだ。
その後にアクアマンデ王国とパレード国の停戦に於ける交渉が始まったのである。
停戦に至る決定的戦力は国連のPKF部隊であったが、パレード国も地理地形、そして画期的な銃器砲弾の使用を制限する魔法を活用してアクアマンデ国兵士を大量に捕虜とし敵国国王を捕縛した事、そして国連に多大なる技術供与を行うと確約している事から国際裁判所の判官贔屓も確約していた。
とかく利に聡い国際社会に於いて相手に利益供与を確約し大義名分を持つ組織は、相手側もこそこそせずに正々堂々と支援を行える事から非常に立場が強く、その発言力は誰も無視し得ない。
無論、誰もがそうなる様に立ち回るのだが上手く行く者は少ないのだ。
となると戦争に負けて降伏し、多量の捕虜まで発生したアクアマンデ側は戦争勃発の大義名分が言い掛かりに近い物だと云う事が確定した今、非常に悪い立場にあった。
さすれば正攻法ではない方法にて挽回を試みるのは当然の成り行きである。
今回パレード側は洋士の悩殺お色気攻撃を警戒して女性陣は姫とチキンハート、そしてエマとゾハラの四人に止めていた。
その他は執事や役人、ギルド職員、馬丁など全員が男性で固められていた。
だが洋士に代表される悩殺は男性陣だけなのかと云うと、洋士と母親達の血を引いた娘達も歳に似合わぬ成熟した妖艶さから小悪魔的な清純さまで取り揃えた美少女集団であった。
国際法廷は裁判官、検事は厳重に隔離されて接触を禁止されていたので順調に進んだ。
当然の事ながら事後法に基づく戦勝国側に有利な裁定が為された訳ではなく、客観的な視点で淡々と処理された。
・起訴、今回の場合はアクアマンデ王国による一方的な戦闘行為の開始と相手国との政治的交渉を持たなかった点が特に問題視されている。
・冒頭手続・被告人が起訴された人物であるかの人定質問や起訴状朗読、被告人に対しての権利告知、陳述機会付与などの四点が行われる。
・証拠調べ手続、検察側と弁護側による証拠提示によって起訴内容の立証と起訴内容の否認を行う。
・弁論手続、提示した証拠により検察側弁護側双方が主張を行う。
・評議、裁判官により判決の内容を決定する評議を行う。
・判決宣告、評議による結論を法廷にて裁判官の口頭で告げられる。
以上の流れが事務手続きや諸準備により滞りながらも行われた。
結果、僅か半年で判決宣告が行われる事になった。
この裁判の判決はネットの録画再生にてニュースサイトに流されて、地球世界では固唾を飲んで見守られていた。
中継でないのは次元通廊に物理回線を引けない事と特殊相対性理論が適応されない為にレーザー回線も変調して使い物にならない為だ。
わざわざ情報チューブに記録して次元通廊を輸送しているのだ。
ニュースサイトに流れた動画は次のような物だった。
アクアマンデ側の代表である被告人・池面洋士が裁判官の前に立ち、パレード側の国王と陽介が席に座り、離れた別の席では洋士の奥さん方選抜20名と子供達沢山がハラハラした顔で判決文を待っている。
因みにチキンハートと元プラム姫は奥様側の席だった。
判決、魔王の驚異に対応すべく軍備を整える事は国家元首として当然の権利であるが、魔王とは関係のないと云う相手の主張を無視して攻撃を仕掛けた事は防衛の範囲を超えており宣戦布告の条件を満たしていない、よってアクアマンデ王国国家元首である池面洋士国王は都市国家パレードに対して戦時賠償を行う物とする。
都市国家パレードに与えた被害と捕虜となったアクアマンデ王国兵士の保釈金を支払う必要を認める。
額は国家間交渉にて決められる事。
以上が国家に対しての判決である。
戦争犯罪については都市国家国民はシェルターに避難が完了しており、軍人のみの被害者であった為に、不必要な都市施設への破壊行為の行われる暇もなかった為に戦争犯罪人カテゴリーのB級戦犯・戦争犯罪、C級戦犯・人道に対する罪は無かった。
突如元魔王城跡に出現した都市国家パレードは魔王の後継国でありアクアマンデ王国に侵略戦争を仕掛けてくると云う事実無根の理由をでっち上げて戦争を仕掛けたという事で、A級戦犯・平和に対する罪に池面洋士が起訴され、それをバックアップしたと云う事で国家宰相のダラパニ卿の息子以下の宰相府のメンバーも起訴される事となった。
検察側による求刑は死刑だったが、社会情勢に対する影響が大きすぎる事や当の都市国家パレードの姫君が戦争後に嫁いでおり「穏便に」と云う事で禁錮20年が妥当とされた。
宰相以下のA級戦犯逮捕者は軒並み死刑である。
これに対して都市国家パレード内部から不満が上がりそうな物だったが、洋士の子供達がパレードを訪れていてアクアマンデ王国に対する好感度を軒並み上げていた為に不満の声は少なかった。
ぶっちゃけ目的はパレードのアクアマンデ側への併合である。
これらの方策は、と或る人物による指示により現地への政治活動が行われていたのだ。
それが国王の洋士だと云うのだから禁錮はどうなったのかと疑問に思ってしまうが、国際法廷で行われた判決はアクアマンデ王国に押しつけられた訳だが、実行するのがアクアマンデ王国だと云うのが問題だった。
実際の所、洋士の場合は禁錮と云ってもアクアマンデ王国内の所定の施設の中で監視状態の元で軟禁されていると云う事で、専門の施設が作られていた。
定期的に国連停戦監視団による査察があったのだが、施設内への立ち入りが管理されているか、身内以外の人物の立ち入りが制限されているかを確認するのだが、婚姻相手が四桁に上り血の繋がった一親等の身内の数が尋常じゃなく多い上に軒並み政治的に重要な地位についていたりするので、監禁されている部屋の中でそのまま王国会議が開けるのであった。
そこから王妃のエメラダーに色々と指示を下していたのだから、国王としての洋士は外征が出来ない以外は以前の生活と変わりがなかったのだ。
判決が下っても国外で軟禁されるのではなく、運用するのが相手の国では骨抜きであった。
さて、パレードではVR技術を保有し、それを以て地球諸国と交易を行う方針を持ち、国連加盟国もVR技術と云う国内の情報技術だけではなく教育やインフラにも大きな影響を与える革新的な技術を手に入れられる機会を逃すつもりはなかった。
だが、暫定的に国連の支配下にはあるが、将来的には次元通廊の支配権を取り戻してパレードとの交易を支配できる立場にあるアクアマンデ王国としては嬉しいことではなかった。
なので世論を誘導する工作員を派遣していたのだ。
時間は掛かるがプラム姫との間に出来た子供をパレードの後継者に推して向こうからアクアマンデ王国と併合させて、尚且つ国民も支持をする様にすれば地球ですら持たない高度技術を手中に出来るとの目論見だ。
パレードの中枢にアクアマンデ王国国王の子供達が入り浸るようになり、このままでは自分達の独占技術がむざむざ自分達に戦争をふっかけて来た上に負けた筈の敵国の物にされ、そして密かに目の敵にされている自分達の立場は限りなく弱い物になるだろうと知れた。
VR技術の基幹部品は錬金術で構成した分子回路をブラックボックス化して供給する事になっている。
その製造者達は元プレイヤーの技術者で商工ギルドによって創られた生産拠点を中心にしているが、そう云う状況にあるならば安全な場所に移動したいと願うのも無理はない。
しかし、ここ以外に逃げ場があるのだろうか。
ここより北は大陸北端であり、大陸の東域は未だに未知の文明があるらしいと云う情報は入ったが、だがそれ故に逃げ込むのも難しいと思われた。
そこで唯一、アクアマンデ王国国王の政治的、魅了的破壊工作を撥ね除けて無事にいられる場所へと逃げ出す者が出始めるのだが、それが話の冒頭で行われたアクアマンデ王国と都市国家パレードとの国家間交渉で決められた事柄の一つである。
戦前に死んだとされていた陽介とその子供達であったが、その長田陽介が王国代表との間に交渉を持ち、勝ち取ったのがバン・シュワー湖の北岸にあるアボ市とその周辺の領有権だ。
基本的に何の権限も持たなかった陽介が領有権を持つ事は出来ない。
特にアクアマンデ王国では貴族のみが都市周辺を領有出来ると決められていたので、無位無冠で唯一王国の血を引く娘達の保護者であるだけの陽介がそんな事は出来ない。
会議にて陽介はパレード側に組みした立場を利用して幾つか発言をした。
ひとつ・バン・シュワー湖を実質的に保有しているアクアマンデ王国であったが、元々はこの湖を広く支配していた亜人類がいて契約によって「初代女王の血を引く娘と定期的に再契約を結ぶ」と云う条約を建国以来続けてきていた。
万世一系で女子の血筋を守ってきた祝福は定期的に行われてきたその為に存在したのだ。
だが、洋士と王家のエメラダー姉妹達から生まれた子供は全員が男児であり、ひとりも女児はいなかった。これは七代続く事になる。
つまりは再契約をアクアマンデ王国の王家は更新することが出来ないのである。
ふたつ・正統な血筋を持つエマナ達だが、洋士の血筋ではないために女王を狙う事は出来なかった。
だが何時までも彼女たちをそのままにしては置けないので、長女のエマナを公爵にして、ガイア、アルケー、ナネニー、以下を旧王室式に女子系統の公爵家を創設させたのだ。
陽介は娘達の後見人として、初代公爵はエマナが就き公爵領としてアボ市周辺が与えられた。
王室側も、どうせ洋士の血を引く美男子達の攻勢を受ければ直ぐに落ちるのだから新しいポストを創っても損はないとあっさり承諾された。
アクアマンデ王国がこの地を支配する前にあったカーリア公国から名を取ってカーリア公爵家として興った。
陽介が後見人としてエマナの全権を受けた代官としてカーリア公爵領の整備を始めて直ぐに5年が経過した。
都市国家パレードが洋士の子供達の攻勢を受けて骨抜きになりアクアマンデ王国の自治領扱いになった頃にはパレードの商工ギルドと冒険者ギルドの中枢は公爵領に密かに移転が済んでいた。
それまではVR技術の生産拠点を公爵領へと移してからも基幹部品はわざわざパレードから出荷していたので気付くのが遅れてしまったのだ。
また、アイムジャスティスの残党が度々パレードへと襲撃を掛けて来ていたので、そちらに気を取られていたのもある。
色々と隠れ蓑を用意して準備が済んだ頃、正式にアクアマンデ王国政府によりパレードが併合された時には洋士の子供に籠絡された人間以外は公爵領へと逃げ出していたのだった。
アクアマンデ王国が欲したのはVR技術もさる事ながら、雷管不発の呪いと云う魔法文明優性論者にとっては垂涎物の魔術であったのだが、既にその頃にはギルド書庫の中身と共に姿を消していた。
それに気が付いた洋士の子供達は、それまでの甘い顔を掌を返したかの様に一変させて元パレード国民を弾圧し始めたのだからたまったものではなかった。
となると逃した獲物を手に入れるべくカーリヤ公爵エマナ・長田・カーリアを標的とした洋士の息子の中でも最も父親に近い美男子である池面弾次が送り込まれた。
既に王都に50名の愛人を持つ弾次は、既に夫気取りで公爵家に乗り込み、出迎えたエマナを顔を見るなり、自信満々と開口一番にこう宣った。
「おい、俺の事を好きなんだろ? 今日から可愛がってやるからベッドへ案内しな。お前の物は俺の物、な~んちゃって」
「何だこの莫迦は? 無礼とか以前に常識とか知らないのかな?」
「おいおい可愛娘ちゃん。俺は池面洋士の息子の弾次だぜ? 俺に落とせないのはパパの愛人だけだっての。素直になりなよな」
「今のが自己紹介なのかな? まあいいや、私がカーリア公爵のエマナだ。何の用なのかな? 民間人の弾次さん」
「ふぅん。そう安く売る気はないって事なのね。OKOK。大丈夫だよ、そう頑なになるなって事さ」
「国王の息子だとしても庶子であろう? 王位継承権のあるのは私達の異父兄弟だけだし、だったらここに送り込まれる訳はないしな。正式な用件がないのならばこのままお帰り願わなければならないのだが?」
「俺たち2人の間にそんな野暮な物は必要ないのさ。そう、自分の気持ちに素直になればいいだけの事なんだよ。君は俺の事が好きなんだろ? 分かってるって」
「むぅ、普段から自分の性的魅力が通用する相手ばかりを相手にしているとこう云う勘違い男になってしまうのか。勉強になるな」
「おい、いい加減にしろよ。お前は俺の女なんだからな」
「ほっ、それは初耳だ。確かにイケメンである事は認めるがな。こう言う顔だけの奴を見ると異常にムカムカするのだが何でだろうな」
溜息を吐きながらエマナがそう言うと、後ろに控えていた同じ顔をしたガイアが突っ込みを入れた。
「それは、前世の自分と比較しちゃうからじゃないかしら。幼なじみの女の子以外からチョコレートを貰った事もないし」
「う、良いんだよ。ひとりだけで」
「うん。私もそう思うよエマナ」
「分かってるなら良いんだけどさ」
そう言うとエマナはガイアとスキンシップを取り始めた。
その様子を見た弾次は納得行った様な顔をして言った。
「何だ、お前等双子同士でレズなのか。大丈夫、俺は心が広いからな、2人とも一緒に可愛がってやるぞ」
「ちっ違うし、ただのスキンシップだし」
「男って直ぐにそう言う方向に持って行くからイヤなのよね、不潔だわ。女の子同士はプラトニックで純潔なのに」
「ガイア?! まさか、君はホンモノなのか!?」
「いやあねぇ、ただのスキンシップだってば。他意はないのよ。ドン引きしないでぇ」
ガイアはニコニコ笑っている、エマナはそれを見て引き気味だ。
ちっとも自分に注目を向けてこないふたりに弾次は少しイラッとした。
今までは自分が近くに寄っただけで女性と云う存在はそわそわし出し、少し水を向けるだけで向こうからスキンシップを取りたがり、直ぐにベッドインして来たと云うのに、と目の前の2人に理不尽さを感じざるを得なかった。
客観的に言って弾次の方が普通ではないのだが、彼の主観ではそれが常識だったのだ。
なので彼はエマナの肩を乱暴に掴み自分の方を振り向かせる。
「い痛ぅっ!! 何を!」
「おい、いい加減にしろよ。俺がこの公爵領を戴いてやるから、お前は俺の下でひぃひぃ喘いでいれば良いだけの簡単な仕事をさせてやろうって言うんだ。感謝しろよな」
「それって何処にも感謝する要素はないよね。とにかく、か弱い女性に暴力を振るうのは許せないな。ギガトロン、こいつを拘束して」
『イェス、マイマスター』
エマナが指示すると、壁際に立っていた女性の曲線を強調して突起を付けた様な姿の人形がエマナの前に立ち、弾次の腕を捻り上げる。
「ぐっ、コイツはゴーレムか?」
「ISDBの改良型だけど、もう王宮には配備されてないんだっけ? 相変わらずの懐古主義かぁ」
「とにかく、私はノーマルで、だけどアナタには全く興味はないの。お引き取り願います」
「はは、未練たらたらなんじゃないの? 今だったらまだ」
「連れて行きなさい」
『イェス』
「ぐっ、女が俺の言う事を聞かないなんて」
連れて行かれる弾次を見送りつつエマナは痛む頭を押さえてこれからの対応を考えていた。




