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第23話 ジャッジメントです

 異空戦騎パラレルワールド大競争


 第23話 ジャッジメントです


 彼女の名前はエマナ、長田陽介の長女にしてガイアの双子の姉でもある。

 母親のグウェンディロンは彼女の住むアクアマンデ王国の王家の人間であり女王不在時には副王としてこの広大な王国の執政を司る重要な人間であった。

 つまり、自分はお姫様であり将来的には女王になる可能性の高い場所に居る事に気が付いたのは、五歳の誕生日を過ぎた頃だった。

 エマナは小さい頃から自分が知らない筈の知識を持っている事に気が付いていた。

 それによると、この世界はファンタジーな世界である、と結論付けられた。

 時間を経る毎に鮮明になって行く『前世の記憶』に従うと、ここは魔法と剣の世界であり冒険と活劇の世界である事が理解出来たのであった。

 前世では良く小説を読んでいたのだが、ネットに書かれた投稿小説にはまっていた。

 投稿小説サイトに掲載されていた物の多くは出来の善し悪しが激しく玉石混淆の状態であったが、その中でも一大ジャンルである『転生物』に『』はのめり込んでいた。

 別にそれまでの人生が嫌だった訳ではないのだが、何か全く違う人生を歩むという仮定の出来事に心が躍ったのであろう。

 だから転生物の醍醐味である『内政物』をたっぷり味わおうと、転生前の事をしっかりと思い出そうとして、自分がどう云う風に死んだのか、その死因を思い出していた。

 『彼』は自分の幼なじみにして恋人になったばかりの彼女とイチャついている所をトラックに牽かれて命を落としていたのだ。

 エマナは呆然とソファーに座ったまま、一緒に命を落としたであろう彼女の名前を呟いていた。


「……あかね……」

「なぁ~にぃ。ってエマナ?」

「え、ガイア?」

「今の名前を聞いてピンと来て思い出したんだけど、生まれる前に私は日向ひゅうがあかねって云うお姉さんだった……?」

「あたし……俺は延岡のべおかあさひって云うお兄さんで」

「旭ちゃん?」

「茜ちゃん?」


 顔の同じ二人はキョトンとした表情を浮かべて見つめ合った。

 前世で結ばれたふたり、運命の出会いであった。

 二人は現状を把握する為にお互いの知識を話し合った。

 そして今住んでいる国が魔法の存在する異世界ファンタジーであり、自分達が王家の姫君であり、この科学文明の発達していないであろう世界に内政物で活躍出来るのではないかと考えたのだ。

 よって……。


「TS転生最強物キタ!」

「逆ハーよ、逆ハー! それで美形の騎士を集めて……うふフフ腐腐」


 彼女らの目は『希望』に輝いていた。

 だがそこでふたりは唐突に思い出す。


「そう言えば、お父様って日本人じゃない? ヨースケ・ナガタって名前だし」

「あ、そう言えば。異世界トリップ物の主人公な訳? じゃあ私達の介入する余地は……先を越されたって事なのかな、うう、お父様のバカ」

「って云うか、すっかりお父様って刷り込まれちゃってるんだけど」

「そりゃあ、さっきまでお父様好き好きぃー、ってファザコン振りを発揮しまくっていたし。強力なライバルがいつも側にいるしねぇ、ガイア」

「本当にそうよねぇ、エマナ」

「「フフフフフ」」

「って云うかサ、私達ってエマナとガイアだもの、旭と茜じゃないんじゃないの?」

「記憶はあるし、自覚もあるのにねー。まああくまで前世だし、今の私は私なのだから」

「じゃあBLも止めるんだ」

「それはそれ、これはこれ」

「で、これからどうしようか。俺……私……僕……ボク、うんボクッで行こうっと。前世については秘密にするとして、ノートに知識を書いて置くのは定番だよね」

「でも私まだ共通語書けないよ。日本語で書いたらバレちゃうじゃない」

「まだ小学校の就学前だもんねぇ。でもワザワザ隠すのも面倒だし」

「でも歳に似合わない賢さも気持ち悪がられたりしたらイヤだもん」

「ボクは普通に過ごすよ、無理に今まで通りにしても無理があると思うし」

「じゃあ私もそうする」

「決まりだねガイア」

「そうねエマナ」


 こうして一応の方針らしきもの立てたふたりは特に大きな行動を起こす事もなく過ごすことにしたが、やはり前世の記憶という物は生活態度に影響を及ぼすものであって、急に個性が芽生え始めたふたりに心配もし、安堵もした陽介とグウェンディロンだった。


 そうして過ごす事2年間、迎えた七歳の誕生日。

 王宮の一角に一族の者と神官長、そして執事とメイド達だけでプライベートな誕生パーティーを開くことになった。

 貴族達からも打診があったのだが、全てお断りである。

 始祖から続く呪いにより、集まった王家筋の子供達は女の子ばかりであり、やたらとピンクピンクしいパーティーとなっている。

 メンバーは本日七歳のエマナ、ガイアの両名と未だ五歳のアルケー、ナネニー、マメミムの妹たち、それに女王の娘にして腹違いの妹であるシーラが王家の血筋である。

 その他に女王の愛人達が連れてきた四人の娘達が、亜人である母親達の血筋を顕す形質を活かした愛らしいドレス姿で姿を見せている。

 この日以降、七歳迄は神の内と云う慣習から来た七歳からは正式に王家の人間になると云う事で神殿の神官長の祝福を受ける事になっている。

 まず神官長の指示を受けてグウェンディロンの末妹であるポメラが成長の祝いの神楽を舞い、神官長の手ずから上級の神聖魔法で祝福を授けた。

 もしもここで聖刻が顕れれば姫巫女へと道が開かれるのだが、<名誉という点では>残念ながら<親としては>嬉しい事に聖刻が出る事はなかった。

 パーティーに集まった皆から祝福の言葉を掛けられて嬉しそうに笑うふたりであった。

 そして父親の長田陽介が声を掛ける。


「お誕生日おめでとう」


 その瞬間、天上からファンファーレが鳴り響き、姫巫女であるミリティアとポメラが神懸かりの状態となった。

 白目を剥いた姿の見た目は怖ろしい物だが、身体の周囲をオーラの光が取り巻き、後光の様に輝きを放つ。


『審判の時、来たれり』

『ジャッジメントの時が来た、神妙に聞きませい』


 無表情のままミリティアとポメラの口から何者かの声が聞こえてくる。

 元よりこの国に住む者達はその正体に気付いたようであり直ぐに膝まづいて畏まった。

 陽介はその存在について半信半疑であったが皆に習って膝まづいた。

 子供達は普段と違う伯母叔母おばちゃん達の様子に怯える様に縮こまっている。

 何故かエマナとガイアは『イベントムービー来たよ』と他の人に気付かれないように小声で話していたが。


『魔王討伐の使命を果たした事、大変に目出度き事也』

『我々が課した運命にあらがい良くぞ魔王を打ち倒しました。流石は私の目を掛けた者達です。私は誇りに思いますよ』

『他の者共の約定を果した迄の期間は短けれども、些か物の道理を弁えて居らず失望せり』

『貴方達は一番勇者達との連携も取れていましたし、この大陸を支えている神々への畏敬も忘れずにいてくれました』

『其れ故、我々はそなた達の事を決して忘れじ』

『生き残った者達の中で、我々の基準での採点では貴方達が総合では最高の得点を得ました。全てを見通すかみは貴方達だけを見る事を決定しました、つまり貴方達だけが我々の加護の元で未来へ進む事が出来ます』

『魔王討伐を成した者達は願いを乞うべし』

『一応は魔王を倒した全ての者達には聞いているのですが、願い事を言いなさい。聞きましょう。ただし、王家の者で一番若い者、つまりエマナとガイア、貴方達です』


 わざわざ誕生日を待ったのだろうから当然と言えば当然なのだが、今日この時に王家の人間になったふたりに願いを言う権利が与えられた。


「どうする? ガイア」

「私としては新しい本とか手に入れたいし、やっぱりアレかな? エマナ」

「うん、ボクも同意するよガイア」

「私もだよエマナ」


 ふたりは向かい合って相談すると直ぐに結論を出した、前世は違えど流石は双子である。


「「お父様の国へ行けるようにして下さい」」

『願いは聞き入れられた。魔法の通廊は一両日中に開かれるであろう』

『ではジャッジメントは』

「ちょっと待ったぁっ!!」


 神々というモノは自分の都合のみを押しつけるものである。

 触らぬ神に祟り無し、それはこの世界に於いても共通の認識だ。

 それ故に顔を伏して黙って話を聞いていたと言うのに、陽介は空気を読まずに神々に向けて声を上げたのだ。

 だのでその場にいた者たちはギョッとした表情で陽介を見てしまった。


『何か』

「もう決まった事だから他の人達の事を助けて欲しいだとかは言わない。ただ、どうしてどうなったのか、それだけは聞かせて欲しいんです」

『ふむ、お前がキーパーソンであった訳だからな、その願いを叶えよう』

「ありがとうございます」


 陽介は深々と頭を下げて礼をした。


『運命は幾つかに分けられる。

【魔王を倒せなかった世界】

 これは単純に滅ぼされた。

 魔王を倒した者達は幾つかに分けられる。

【魔王を倒すのに反応兵器を用いた世界】

 これは巨大な生物である移動大陸に刺激を与えてしまい海中に没した。

【大陸を荒廃させ民衆にも王家の者にも苦役を課した世界】

 魔王を滅ぼした故に唯一生き残っていた王家のポメラに願いを訊くと《みんな死んでしまえば良いのに》と乞われた、故に全ての人間種を我々が滅ぼした。

【自らの崇拝する架空の神格を布教したる世界】

 魔王を滅ぼした事への褒美として与えた我らへの願いを宣教師達は悪魔の勧誘として否定した、改宗した民衆は架空の神格を信仰し我々を忘れた為に太陽の加護を失い滅んだ。

 これが全てである』

「なるほど、ありがとうございました。参考になります」

『ではサラバだ』


 神々が去るとミリティアとポメラのふたりは脱力し床にヘタり込んだ。

 神懸状態トランスは高位精神体との交感を維持しなければならない為に、憑代よりしろは精神的にも肉体的にも非常に消耗する。

 よって質問によって神懸状態トランスを延ばした陽介に非難の目が向けられたのは仕方のない事であるのだ。

 ジト目で見つめて来るミリティアとポメラのふたりに陽介はタジタジとなるが、目を反らして言葉を放った。


「何にせよ、これで私達は何の気兼ねもなく未来へ向かう事が出来ます。日本に繋がる次元通廊も再接続される様ですしこちらの世界に取り残された地球の人達も故郷へ帰す事が出来ます。私としてはこの国の益々の発展を祈念せずに居られません。それからエマナとガイア、お陰で助かった、良くやったな」


 陽介は状況を簡単にまとめて見せてから、今日のパーティーの主役達に笑い掛け、頭を撫でた。

 ふたりは何かに葛藤している様だったが、直ぐに太陽の様な目映い満面の笑みを浮かべた。


「「はい、私達のお父様」」

 魔王討伐で終わって中篇にする予定でしたが、もうちょっと伸ばします。

 こう言って本当にもうちょっとで終わる人は少ないかと思いますが。

 折角、異世界トリップ物にしたのだから、異世界転生物とVRMMO異世界転移物にも手を出してみたりして。


 PS.エマナとガイアの名前をどこから取ったか分かる人はいますでしょうか。

 Studio LAP.と云う所で作ったアニメがヒントです。

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