第20話 説明回
異空戦騎パラレルワールド大競争
第20話 説明回
更に半年が過ぎPKFの反攻準備は整った。
アセアン諸国の防衛に必要ではない戦力を迎え入れ、オミスインフ公国の前線に程近い前線航空基地を設立拡充して戦力の拡充を図り、各国の航空戦力をも引き入れた。
お陰でアメリカ製やヨーロッパ製の戦闘機の他にもロシア製の戦闘機や自国開発の軽攻撃機の姿も多い。
基本的に自衛隊が魔王の本拠地を攻略するオフェンス組、その他が王国を侵略しに来る魔王軍を迎え撃つディフェンス組になっていた。
もちろん、各国の精鋭部隊や特殊部隊は魔王城攻略の特殊任務を行う為に現在も訓練を続けている。
勇者とその仲間達も落下傘による空挺任務に就ける様に習志野の空挺部隊の監督の元で連日の落下傘降下訓練を受けていた。
アンゲ・リオネフだけは身長が3メートル程と規格外の為に大振りの特別制作された物を使用していたが。
何せ身長が約2倍なのでそれに見合った大きさの物を使用しなければならないのだが、単純に2倍ではダメなのだ。
体重は立体なので縦(2)×横(2)×高(2)で8倍になるが、それを受け止める落下傘は面積なので縦(2)×横(2)で4倍となる為に単純に落下傘の長さを2倍の大きさにすると体重を支え切れず、落下速度が速すぎて危険なのだ。
使用する材料の強度も必要な為に単純に強化すると重過ぎるし、材質から変更して完成に非常に手間取った一品だった。
軽車両の降下用を使用出来れば良かったのだが。
それはさて置き、X Day が近付き社会状況が変化する中で、突然アクアマンデ王国の政治状況に変化が起きた。
エメラダー女王が懐妊したのだ。
王国の王室法典に基づき、姫巫女以外の唯一の親族であるグウェンディロンが副王として擁立されて、現在は女王の代理として公務に就いていた。
生粋の同性愛者であり、一時もブレずに無数の女性を恋人として愛し続けて来たエメラダーであったので周りに与えた衝撃は大きかった。
苔の一念は岩をも通したのか? 魔法がある世界だからとしても前例のない事態に王宮関係者も日本の医学会も大混乱に陥ったが、検査で得た遺伝子を解析した結果、父親は長田陽介である事が判明した。
身に覚えの無い出来事に陽介は必死になってそれを否定したが、グウェンディロンは笑って許した。
その笑顔に戦慄した陽介は頭を床に擦り付けて許しを乞うたが、そこまで恐れられたグウェンディロンはムッとして種を明かした。
半年ほど前に王宮で行われたパーティーには女王側とグウェンディロン側でそれぞれの思惑があった。
女王側はグウェンディロンも五人の子供を生んだ事だし王家の人間としての義務は果たしたとして、幼い頃から目を付けていた事もあり自分の愛人として後宮に引き入れようと画策した。
そして神託などと云う理不尽な代物により彼女の自由の枷となっている長田陽介を王配としてふさわしくない存在と印象付ける為に、彼がパーティーで恥を掻く様に画策した。
最近は陽介もしっかりして来たとは云え、上流階級のマナー等が身についている程の物ではなく、そのままでは女王の思惑通りに事態が進行してしまいそうだったのだが、それはグウェンディロンが内助の功でみっちりと教育し、パーティー会場で身近でフォローする事で回避することが出来た。
そしてパーティーの夜にグウェンディロン側の思惑通り、女王はグウェンディロンに用事があるからと王宮に部屋を用意し、陽介と子供達は屋敷に帰す様に指示した。
陽介が慣れぬパーティーで疲れているからとしてグウェンディロンに用意された部屋で『ご休憩』した後、陽介を子供達と共に屋敷に引き上げさせた。
部屋付きのメイドに部屋の片付けとベッドメイクをさせると、グウェンディロンは催淫性のある強めの香を炊きベッドに横になった。
これで何もなければ、明日家に帰ったら真っ先に陽介を押し倒さないと体が疼いてしょうがないな等と考えていた所、エメラダーが用事があるからと大振りな枕を持って部屋を訪れたのだった。
彼女は純真だったお姫様時代の様に横になりながら寝物語で『天下太平の夢を語ろうじゃないか』と云っていたが、それにしてはガウンの下に着込んでいた寝間着は扇情的に過ぎる代物であったし、グウェンディロンが炊いた香には負ける物の、なにがしかの昂揚作用を持つ香水を吹き付けて来ているようで、非常に甘ったるい匂いがグウェンディロンの鼻腔を刺激する。
予想通りに関係を迫ってくるエメラダーにグウェンディロンは嫌がる素振りを見せながらも、散々じらした後にエメラダーの誘いに乗り、貞淑な人妻が快楽に負けて身体を開く様を演出しながら一夜を過ごした。
エメラダー妊娠の原因は、グウェンディロンと核心部を押し付けあった時に取れたて新鮮な子種を空気に触れない様に密着させて直接エメラダーに注ぎ込んで人工授精させた事だ。
もちろん女性に存在しない体液への違和感を感じさせない為に明かりを消した上で香をキツくし、顔や手を近づけさせずに目的を果たしたのだった。
事後のグウェンディロンは、満足感に溢れ幸福な疲労感と共に眠り込んだエメラダーと自分の処理を済ませると、ベッドから抜け出してシャワーを浴びる事で嫌悪感にまみれた身体を清め、寝間着に身を包んでソファーで横になった。
翌日は気怠い幸福感に包まれて目を覚ましたエメラダーだったであったが、ベッドの隣に愛しい人の姿はなかった。
いつもの通りに朝六時には目を覚ましていたグウェンディロンはしっかりと寝起きの支度を済ませており、寝室の机に座ってお目覚のお茶を頂いていたのだった。
グウェンディロンの姿を見かけて寝乱れた格好のままで甘え掛かるエメラダーは冷たくいなされたのだが、エメラダーは更に深い関係になろうとグウェンディロンに後宮での朝食を誘うが、義理は果たしたとばかりにさっさと屋敷へと戻っていってしまった。
屋敷に戻ったグウェンディロンに陽介が朝の挨拶を交わそうとすると、彼女に手を引かれてそのまま寝室へと連れ込まれて押し倒された。
非常に熱心に行為に没頭するグウェンディロンに圧倒されながら、彼女の身体に見覚えのない痕跡が残っている事に気がついた陽介がそれを訊くと、城で姉とベッドを共にした事を告白された。
幸いにして「絶対に男の方が良い」だの「陽介じゃなきゃダメだ」と云われたので、崩壊寸前の矜持は保たれたのだが。
例えると、とある映画で旦那に男と駆け落ちされた女性が理不尽さとやるせなさを語っていたが、自分の妻が女性と関係を持ったと聞いた陽介も又、大きな精神的ショックを受けてしまった。
幸いにもEDになる事はなかったが。
だが後遺症は思いも寄らぬ場所に現れることになったのだ。
それまではグウェンディロンとの生活に役立つかと思いハウツー物のAVを集めていたのに、自分には参加出来ないレズ物とNTR物のAVを集めてしまう程にショックは大きかった様だ。
陽介自身は自分の同性にはどうやっても性的な興味を抱けなかったので、ある種の反動とも言えるかも知れない。
そんな事があって数ヶ月後、女王と後宮の数人が懐妊した事が世間に知れ渡った頃に、グウェンディロンの副王就任が発表されたのであった。
副王とは言え、基本的に女王と同じ方向性の政策を基に国家の運営を司らなければならない。
だが、グウェンディロンはより一層のPKFへの歩み寄りを考えて、政策を実行する。
これまでも国連軍と日本政府からの情報はもたらされていたが、グウェンディロンは更に大幅に生情報と分析結果を手に入れるべく、副王の執務室に電話機を数台と専属オペレーターに、陽介に使い方を習ったネット接続したPCを数台導入して情報の収集に努める事とした。
貴族や諸外国への手紙は手書きのままであるが、その他の部署への報告書や命令書はPCで作られた文章をプリントアウトし、サインだけして渡す事により作業時間の短縮を図っていた。
その際に電気配線の工事や無線LANの中継器の設置工事等を日本政府経由で依頼し、電源は陽介の発見した雷力石の電磁誘導発電方式を元に日本のメーカーが開発した発電器を城の一角に設置させた。
日本側も色々と思惑があり、グウェンディロンの提案を快く受け入れた。
もちろん、電子経由の情報は日本側に筒抜けになる可能性が高いので、情報畑の人間やゾハラによる早駆けはより一層重要視されることになったが。
こうして着々と決戦に向けての準備が整えられていったのだが、この時のアクアマンデ王国のある大ユグドラシル大陸の状況は次の通りである。
北部辺境に発生した魔王とその軍勢は、周辺に存在する魔物達を併呑しその勢力を徐々に増しつつ一定量に達した時点で南下を始めた。
この大陸の中央部には大陸を二分する大山脈があり、大陸の東部と西部の行き来を阻害していた。
それにより魔王の軍勢も東軍と西軍に分かれて南進していて、大陸西部平原のほぼ真ん中にあるアクアマンデ王国は西軍と衝突していた訳である。
西軍の方はPKFの活躍により南進を妨げられていたが、東軍の方は東部中央諸国による抵抗を受けつつも徐々に南下を続けている事がPKFの無人偵察機のグローバルホークや有人偵察機U-2による長距離偵察行動によって確認されていた。
それに伴い、大陸南部諸国も戦争の準備を進めており、特に学園都市秘蔵の発掘兵器である古代ゴーレム部隊、通称・守護神軍団を中心とした強力な魔導兵団を組織して東部平原地帯へと派遣し始めており、特に一騎しかない水晶守護神は大規模広域攻撃魔法を以て撃退に貢献しているそうである。
PKFも敵の延びた兵站線を破壊するべく山脈を越えて攻撃機によるルート破壊を行っているのだが、中央山脈の標高は1万メートルを超える事もざらであり、進入不可侵の天界へと接している場所が多く、1万メートル以下の峡谷を選んで通過させる為に不便を囲っていた。
どの国も共存不可能な魔族に対する戦争は生存権を掛けた物である事を知っているが為に苛烈な戦争へも果敢に突撃していったのだ。
そしてどの国も自国の民だけでなく、流民となった他国の難民達をも保護していた。
この世界には神々が存在し、人間に厚い加護を与えている事は万民に知られているのだが、神々は地上に住まう人間の数が多いほど嬉しがる事が知られている。
下手に民族浄化などを行った圧制者は神々が使わした尖兵によって滅ぼされ、加護の力を失う事が知られている。
この大陸の上に燦々と輝く太陽と月が神々の御姿の一部である事は神話によって綴られており、太陽がなければ人類のみならずすべての生命が失われる事は明白。
もしもこの大陸から一定以上の人間が失われてしまえば神々の加護が失われ、主神の化身である太陽は姿を消して光を失ったこの大陸は忽ちの内に凍り付いた暗黒大陸へと化してしまうだろう。
よって人間の生命を守りながら戦うのが為政者としての努めだったからだ。
グウェンディロンが情報の重要性を理解して、PC等を導入した結果これらの諸外国の状況もほぼタイムラグ無しに掴める様になってきた。
人の立ち入りを拒み続けている峻険な山脈を挟んで反対側の国など、この国の国書を覗いても数回しか名前の出て来ない、遙か縁遠い国々でしかない。
それらの動向すら把握しているPKFと言う存在に、情報を知る立場にいる王国の重鎮達は戦慄と共に思い知った。
それと共に通廊の向こう側、地球に於いての情報もちょくちょく入ってきていた。
半年前まで戦力を持ち大手を振っていたオウベイジンと云う集団がこの国を去り、彼らも故国にて通廊を有し、そこへと戦力の投入を行っているのだと云う。
戦力が引き揚げられた王国としては大変に嬉しくない。
更なる戦力が引き揚げられては正直厳しい物があるだろう。
よって彼ら王国も色々な手段を以て情報の入手に努めていた。
当然の如く、花街へも諜報機関は手を伸ばしていて、娼婦達からの情報も手広く集めていた。
そうして集められた情報は逐次纏められて報告書として副王グウェンディロンに届けられていた。
その中にあった真っ先に戦力を引き揚げたロシアの話題、『ロシア通廊アクセス不能』の情報にグウェンディロンは眉を潜めたが、そこへ報告に現れた者がいた。
「副王陛下、エマです」
「入って頂戴」
「失礼します」
屋敷の武装メイド長兼乳母長のエマが後ろ手に扉を閉めると、室内には秘書官達が忙しそうにPCの画面を見て、報告書を書いたり電話を掛けたりしていた。
「今週のお屋敷の報告です」
「読んで」
「……はい。エマナ様、ガイア様共に健康に成長されております。今週は日本から輸入した着ぐるみパジャマをお召しになり大層ご機嫌でございました。アルケー様、ナネニー様、マメミム様は離乳食への切り替え準備を始められ、最初の頃はグウェンディロン様が居らずに不安がちでしたが、ここの所はそれぞれの乳母達にも懐き、夜泣きの回数も減って来ております。動画はこちらのカードに入っておりますので後ほどどうぞ。陽介様ですが、未だに娼館へも行かずに日本から輸入したAVにて自己処理なさっております。内容は妻を寝取られた男の話や女性同士の睦み合いの話が多く、グウェンディロン様の行為の影響が強く心に影響を及ぼしている様子です。グウェンディロン様が王城に詰められ、一人寝を始められて既に四ヶ月です。反動として男に走ったりは性癖上無さそうですが、それ以外の『過度の抱擁感のある』対象に対して男性の浮気虫が騒ぎ出しそうな期間に入っていますね」
「ふぅん。代替手段で大丈夫かな、変な女に浮気されたりすると困るんだけど。正式な王配になった訳だし、欲張り貴族連中が変なちょっかい出して来ていない?」
「今の所は、誰か適当な相手をあてがいましょうか?」
「誰か居るの?」
「一応、下手に口を出してこない立場にいるそれなりに美人な女に心当たりはあります」
「未婚だよね?」
「未婚ですね。と云うか既婚者は拙いです」
「まあね。分かった、じゃあ頼むわ」
「謹んでお受けいたします」
「他には?」
「今週は以上です」
「うむ、下がって宜しい」
「失礼します」
途中でこの案に差し替えようかと思ったけど、エメラダーが暗黒面に突入しそうになったので元に戻しました。
【第一案】
これで何もなければそのまま帰る手筈になっていたのだが、計画通りにエメラダーが用事があるからと部屋を訪れたのだった。
昔の様に純粋に姉妹で横になりながら寝物語に王国の未来でも語り合おうではないか、と言っていたが、機会が有ればやる気は満々であった様だ。
グウェンディロンは嫌がる素振りを見せながらもエメラダーの誘いに乗って一夜を過ごした。
様子見だったのか、本番は次回に回すつもりで警戒を解く方策だったのか、エメラダーの方から手を出して来る事はなく、彼女は香が効いたのか直ぐに入眠した。
ベッドから抜け出したグウェンディロンは机の引き出しに仕舞って置いたスポイトと使用済みの避妊具を取り出すとベッドに戻ってゴソゴソと何かを仕込み始めた。
女性としての心情を慮るに、最悪の手段を以てグウェンディロンはエメラダーに王家の義務を果たさせたのである。
せめて想い人との情事のひとつでも交わせていれば心理的に自己解決も可能であっただろうが。 皆に祝福された、自らの奥に存在する不意に訪れた愛の部屋の住人に彼女は不快感しか感じる事は出来なかったのである。
【ここまで】




