第EX話 この世界、宇宙の成り立ち。ビッグバンからこれまでの事。
このまま話を書いていっても細かい設定とか出て来そうもなかったので設定話を書いてみました。
時系列的には、勇者召喚の前って事で。
異空戦騎 パラレルワールド大競争
第EX話 この世界、宇宙の成り立ち。ビッグバンからこれまでの事。
神話に云う処、最初世界に広さはなかった。
突如何もない世界に穴が開き、存在していない物が溢れ出して来た。
世界は光と共に広がり、その重さに耐えかねて直ぐに萎み始める事になってしまった。
だが、新たに現れた仕組みによって支えられ、広がりも萎みもしない世界となった。
重さは集まり球となり、新たな仕組みを封じ込めようとしたが、新たな仕組みはそれに対抗し釣り合いが取れた。
世界の中心で果てしなく対抗し続ける球体は最も大きな大地となった。その大きさは光の早さで横切っても一万年が十回も繰り返す程である。
暫くすると、周りの空虚な広がりに薄く漂っていた最初の粒が集まりだし星になった。
数多くの星が生まれ、自らを燃やして行くと最初の粒はくっつきあって徐々に重い粒になって行った。
最後にはもう燃えない粒になった、それが死を司る金属である『冷たい鉄』である。
星の中に冷たい鉄が満ちるようになると、その重さに耐えかねた星は縮みだし、まだ燃える粒はより濃くなっていった。
濃くなったまだ燃える粒は冷たい鉄の周りに集まり、ある時一気に燃えてしまった、それがこの世界で起こった最初の『死』である。
星は死の際に冷たい鉄よりも重い粒をまき散らして消えてしまった。
だがその遺骸は未だ星になっていなかった最初の粒を引き寄せて新たな星を作り出した、それが子供の星である。
子供の星は最初から冷たい鉄を持っていたので、最初の星よりももっと大きい星になった。
そして燃える粒が無くなるまで燃えて死んだ。
遺骸からはもっと重い粒が生まれた。
そうして生と死を繰り返していた星達だが、世界の中心にある最も大きな球体に近付いた者達は、球体に叩きつけられて死んだ。
そうして次々に星々が世界の中心の球体にぶつかり死ぬと、遺骸から生まれた粒達は球体の皮になった。
球体がすっかりと粒に覆われると、そこには果てしない海が生まれた、それが世界の果てまで続く『大海洋』である。
その頃、星達が居られる場所は世界の中心から大きく離れた世界の果てだけになっていた。
その世界の果てで、世界が始まって初めて『考える者』が生まれた。
星と星の燃える炎から生まれた考える者は世界を知りたがった。
彼は身体を大きくし、世界に広がっていった。
だが、広くなり過ぎた考える者はバラバラになり、無数の考える者達が生まれた、これが最初の『神々』である。
神々は世界の果てを調べ尽くし、初めて世界の中心に目を向けた。
果てしない時間をかけて世界の中心にある球体に辿り着いた神々はそこに果てしない海を見た。
しかし、光溢れる世界で生まれた神々には大海洋は暗過ぎた。
そこで神々の中でも力有る者は世界から力を貰い自らの身体を輝かせた、これが最初の地上の太陽、男神である。
だが何時までも輝かせ続けていると疲れて倒れる者が出てきた、そこで自らの身体を柔らかな光で包み込み男神を慰める神々が出てきた、これが最初の月、女神である。
神々の光が大海洋を照らし続けると、海の中に溶けていた様々な粒が絡み合い、動く物が生まれた、これが生き物である。
最初の生き物は単純でつまらない物だったが、神々の光を浴び続けると複雑で難しい生き物になった。
神々は喜び、それを続けた。
そして大きくなった生き物は大海洋に浮かび、背中の上に植物が生えていった、これが大地、最初の大陸である。
大陸の背中に生えた植物は大気に満ちた毒を取り込み、無害な呼吸出来る大気に変えていった。
そうすると大陸の周りの海に漂っていた生き物が大陸に上がり大気を呼吸し歩き始めた、これが動物である。
神々は喜び、動物に様々な力を与えていった、大きな口に鋭い牙堅い鱗に空を飛ぶための翼を持つそれはドラゴンと呼ばれた。
ドラゴンは全ての生き物の頂点に立ち、全てを支配した、最初の時代、ドラゴンの時代である。
だが、変化のない世界は神々を詰まらなくした。
ドラゴンは殺され、様々な生き物が大地に満ちた。
だが、その生き物達は単純で、神々のように考える者は居なかった。
寂しくなった神々の一人が、世界のひび割れの向こうから見た事のない考える生き物を連れてきた、これが最初の人たち、エルフである。
エルフは言った、この世界には精霊がいない、不完全な世界だ、神々は自らの一部を薄くして精霊を作った。
意志のない精霊はエルフに操られ力となった。
やがてその中の一部がエルフに似て考える事が出来るようになった、妖精の誕生である。
自由気ままな妖精は力を振るって様々な動物の姿を変えて人間に似た者を作り出した、それが亜人である。
不完全な亜人達が大陸に満ち、混沌とした大陸でエルフは滅びの道を辿ったが、一部の者は妖精の力を借りて自らの姿と力を変えた、それがドワーフやホビットである。
エルフはドワーフやホビットを誇りを持たぬ者達と忌み嫌い、ドワーフやホビットもエルフを嫌った。
そうして嫌い合った彼らは、エルフは森に、ドワーフは鉱山に、ホビットは草原に住み着いた。
そうした世界を詰まらなく思った神々は、世界のひび割れの向こうから別の者を呼び寄せた、それが人間である。
人間は様々な道具を造り、火によって恐ろしげな動物達を殺し大陸に広がっていった。
たちまち大陸に広がった人間達は仲間同士で殺し合いを始めた、戦争の始まりである。
戦争は大陸を包み、直接関係のない種族も巻き込まれ滅びの道を歩んでいった。
何故なら人の数が増え過ぎて始まりの大陸だけでは賄いきれなかったからである。
その時、始まりの大陸に他大陸が接近してきた。
その他大陸には既に太陽神と月光神の夫婦神が君臨していたが、大陸の上には動物が居なかったのでそれを寂しがった彼らは、始まりの大陸に君臨していた男神と女神に話をして、その半分を貰い受けた。
始まりの大陸とふたつ目の大陸では人数が減り最初の内は楽に暮らして行けたが、瞬く間にその数が増え、大陸から溢れ出した。
彼らは接近する他大陸を見つけては移住をし、新天地にて生活を始めていった、これが大拡散時代の始まりである。
産めよ育てよ大地に満ちよ、エルフもドワーフもホビットも人間も、その他亜人達も集散離合を繰り返し世界は広まっていったのだ。
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――これは我が大陸の聖典に書かれている、世界創造の物語である。
現代では科学技術が進歩し世界の始まりであるビッグバンすら解析し始めているのだが、宇宙を科学し解明が進む程、この聖典に書かれている神話の記述が間違っていない事に愕然とさせられる。
本来ならば古い迷信だと打ち捨てられる筈の神話がだ。
だとすれば、この神話を記述した何者かの存在が考えられる。
我らの大陸の歴史が始まってより既に二千有余年が過ぎたが、その間に接近接触した他大陸の数は百を超える。
その全てにこの神話とほぼ同様の記述が確認出来るのだ、であれば其れほど古くから観測し続けた存在が居たという事だろう。
我々はそれを知っている、各大陸を照らし続ける太陽の神と月の神、つまり神々と呼ばれるエネルギー生命体だ。
このエネルギー生命体の存在は普くこの世界に存在している。
身近な所では山野に現れる妖精族のニンフ達、嘗ては地に溢れ今では地の底へと続くダンジョンの奥に潜んでいるモンスター達、神々の中でも音楽を司る神は楽劇の神と共に人の営みに合わせて音楽を流す事もある。
だが、この宇宙由来のエネルギー生命体とは異なる起源のエネルギー生命体の存在が知られている。
それが魔族だ。
彼らは大海洋の底、暗黒物質の混沌の中から生まれ、浮遊する大陸生物の下部から進入し、地上に現れる。
しかし、光の無い世界で生まれた彼らにとって日光は致命傷を与える物であり、常に日陰に生きている、ダークストーカーと呼ばれる由縁だ。
よって彼ら魔族の目的は常にひとつ、その手段もひとつである。
目的は地上から光の源である太陽を取り除く事。
手段は世界征服と民族浄化である。
太陽、つまり太陽の神は彼らが加護を与える大陸を照らしている。
何故、太陽神は日の光を地上に注ぎ生き物を繁栄させているのか、彼らの無限とも云える寿命の中では何かを為さなければ退屈で溜まらないのだ。
そしてもう一つ、地上で人達が営みを行い、特に魔法を使う事で彼ら神々を慰める物が天上へと向かっているのだ。
その原理を述べる。
大陸生物は常に暗黒物質を喰らい地上に魔力の素であるマナを発散させている。
人間が魔法を使ったり、生活をする事でマナは不活性化するのだが、不活性化されたマナは重力方向に対して垂直に上昇して行く。
神々はそれを嗅ぐと人間が酒や煙草などを使うのと同じく興奮するらしいのだ。
神々が地上に恩恵を与えるのはそのような理由がある。
だが、その人間を含む生命が大陸から大量に消えたらどうなるだろうか、そう、興味を失った神々は大陸から去ってしまうのだ。
それが今まで接触してきた他大陸の中でも最大の禁忌である暗黒大陸だ。
暗黒大陸には地上を支配した魔族が蔓延り、上陸すればたちまちの内に殺戮され尽くしてしまう。
だが、暗黒大陸が接近してきた場合には無視すれば済むという物でもない。
暗黒大陸からは魔族が発する生の魔力である障気が篭もっている。
もしも濃い障気を纏った魔族が大海洋を渡り私達の大陸に上陸すれば、障気を嫌う神々は遠ざかってしまい、その加護が遠のいてしまう。
魔族を恐れよ、その存在は常に災いをもたらす。
科学が発達すれどもそれは変わる事のない事実なのだ。
アルパス大陸暦2012年 総合物理論科学者メロヌ・コーラ記す。
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前記の文章は以前他大陸との接触で得られた冊子の写本の一部である。
冊子に書かれた蔵書歴から計算すると大凡七百年前に執筆された物がオリジナルらしく、その写本が幾つかの他大陸を経て来たらしい。
そのアルパス大陸の存在を他の資料から調査したが、魔法以外の文明を持っていたらしい事が文章から判明するがそれ以外の事は判らなかった。
アクアマンデ王国図書館の蔵書には他にも魔族に関しての資料が埋もれているが、今回の魔族侵攻に際して早急にそれらを纏めなければならない。
また、勇者召還魔法の発掘も同時に行われている。
聡明な女王陛下の命に答える為にも、我々司書一同は不眠不休の覚悟で作業に邁進する事を誓う。