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第9話 勇者の仲間

 定期更新が崩れてしまいました。

 取り敢えず更新します。

 異空戦騎 パラレルワールド大競争


 第9話 勇者の仲間


 勇者が送還され七ヶ月が経っていた。

 陽介は相も変わらず翻訳の仕事と現地の視察に赴くそれなりに忙しい日々を送っている。

 グウェンディロンの経過も順調で、ヒーヒー言いながら笑顔が絶えない。

 私生活は仕事に振り回されているが、それなりに充実していると言えるだろう。

 だが、戦争の陰は日々着々と影を落とし始めていた。

 王都の半島付け根付近の大神殿周辺には北から避難して来た難民のキャンプが出来始めていて、王国では軍隊増強の兵士と軍需物資生産の為に女子挺身隊の募集を行い始めている。

 治安自体は保安官が目を光らせているので未だに乱れてはいないが、不穏当な雰囲気は流れ始めていた。

 そんな中でも陽介の仕事は終わらない、駐屯地の候補は大体三ヶ所くらいに絞られてきたので現地を視察しに行ってきたのだが、天然の岸辺なので余り揚陸に向いていない地形であった。

 そこで最初の揚陸作業に便利なように水中から斜めに陸地に延びる傾斜路ランプを設置して貰うべく要請を出した所、凄腕のゴーレム使いが派遣されてきた。

 陽介が何処かで見た事あるようなと気にしていたら、ゾハラが勇者一行の先駆けで通っていった荷馬車にゴーレムを乗せた人だと指摘した。

 確かに背中に大剣を背負うその姿は陽介も見覚えがあった。

 陽介が自己紹介すると彼はゲオルグ・リオネフと名乗った。

 彼と共にやって来たゴーレムは、土の人形ではなく、様々な魔法金属や大理石や琥珀等を使って組み上げられたカラクリ魔法的な人型だった。

 陽介がゲオルグに世間話で聞いた所によると、彼の家は代々のゴーレム使いを続けていて、四代前の当主が戦争で戦功を上げて女王陛下から下賜された竜心珠カーバンクルを魔法機関にした戦乙女をモチーフにした機械人形オートマタを創り上げたのだと自慢げに話していた。

 そして陽介が作業内容を彼、ゲオルグ・リオネフに伝えた所、背中の大剣を構えて起動呪文を唱える。


「ドラゴンの心を持つ戦乙女よ、我が契約に従い起動せよ。ドラグラム・サディム・ヴァルナー!!」


 ゲオルグの構えた大剣が呪文に反応して光り輝く。

 荷馬車に乗せられた体長三メートル程のゴーレムは閉じられた目を開き、胸の辺りにある貴石が輝く。

 閉じられた瞼が開かれ、応答機構である口が開かれてこう答えた。


『まぁ……、マスター、あと五分』


 そう言うと瞼は再び閉じられた。

 陽介は呆れた様に思わず口に出してしまう。


「随分と斬新な設計なんですね」

「……魔人討伐で敵の根城に突入した時に、敵の魔女娘まじょむすめに祝福攻撃を食らってな。その時以来調子が悪いんだ」

「祝福攻撃?」

「ああ、俺の戦乙女はカーバンクルを魔法機関としているから生半可な魔法の攻撃や呪いが効かないんだが、それでは味方の援護を受け入れられないからな、祝福魔法に分類される魔力回復や体力快復等は受け入れられる様に調整している訳だが。ふむ、君はこう云う話を知っているかね? 屈強な女戦士が居たのだが、彼女は抗魔術のプレートメイルに身を包んでいたのだが、彼女の身内の神官が快復魔術を使用していたのを見て敵のソーサラーがシンデレラの魔法を使ったのだが、これは旧き時代から伝わる祝福魔法のひとつで、相手にフリフリのフリルとキツキツのコルセットで身体をビーナスラインに仕立て上げるドレスを相手にプレゼントする物なんだが、流石にプレートメイル自体はそのままだったのだが、身体に巻き付いたドレスが身体の自由を奪って身動きが取れなくなってしまったのだというのだが、知っているかね?」

「いえ、初耳です。それでその女戦士はどうなったのですか?」

「うむ、身動きが取れなくなって覚悟を決めたそうなのだが、相手が自分のドレス姿を見て抱腹絶倒で笑い転げているのを見てぶち切れてしまったらしくてな、拘束具のドレスを引きちぎってソーサラーをブン殴ったそうだが、うむ、俺の母方の祖父と祖母の話だな」

「そ、壮絶な話ですね」

「うむ、良くある事だ。それはともかく、俺の戦乙女は祝福魔法を選択的に受け入れる性質を持っている、よって魔族が祝福魔法を使えるとは思わなかったが、魔女娘は人間界に潜入してあいわらいを振りまくのが使命だからな、問題は何の魔法だったのか良く分からないと云う事だ」

「何か問題が?」

「基本的に動作が不調かな。本番が近付いていると云うのに、困ったものだ。まあまだ動くから良いのだが、今度王都に修理に行くつもりなんだが、屋敷の方に行っても良いかな?」

「ええ、元々は勇者様の屋敷を借りているだけですし、歓迎しますよ」

「それは良かった、正直宿屋も一杯だし、値段も高くてな。よしよし、では仕事に入るか、五分経ったしな。目覚めよ、戦乙女よっ!」

『ふわぃ、マスター。お仕事はなんですかぁ』

「うむ、そこの岸辺にそこに置いてある石材を斜めに敷き詰めろ」

『ぅええ、濡れちゃいますよぅ。風邪を引いたらどうするんですかぁ』

「命令を実行せよ。と云うか何故喋れるようになったんだ? 前は『まぁ!』としか発音しなかったと思ったが」

『なんでなんでしょうねぇ?』

「ふむ、これも動作不調のひとつという訳か。さあ、作業に入れ」

『ふわぁい』


 何やらフワフワな雰囲気を漂わせた怜悧で硬い機械人形オートマタが3メートルの巨体を動かして作業に入った。

 岸辺の出っ張りを槌で突き崩し、水面下3メートルまでを斜めに整地し、杭を打ち込んだ後に石材で傾斜路ランプを形成する。

 流石は王国に名を知られた汎用人型雑用兵器である、その仕事は確実だ。

 ついでに地面をスコップで平らにすると円筒地均用具コンダラで地面を固める。

 敷地全部を整地する訳ではないのでそこで作業を終了、彼女(?)は荷馬車に戻るとゆっくりと横になる。


『ふわぁ~、おやすみなさぁい』


 それから四日後の事、ゲオルグ・リオネフが戦乙女を連れて王都の屋敷へとやって来た。

 陽介はゲオルグを迎えて駐車場へと出て来る。

 四日振りにあったゲオルグの表情は優れず、心労が顔に現れていた。

 流石に勇者一行の一人だけあって気丈に振る舞ってはいたが、何やら深刻な事態が起こっているようだ。


「ゲオルグさん、ようこそいらっしゃいました。お顔の色が優れませんが大丈夫ですか?」

「んむ、体調は悪くないのだが、心配事がな。悪いが、ここに天幕テントを張って貰えないだろうか。聖女を呼んであるので、ここで解寿を実施したいのだ」

「解呪、やはり敵の呪いが掛かっていたのですか。分かりました、直ぐに準備して貰います」


 陽介がティアンムに用件を頼むと、屋敷の中にいた使用人達が人数を出して作業を始めた。

 要塞都市だけあって、野戦準備の為の天幕などが常に保管されていたのである。

 昼イチでグウェンディロンの姉で姫巫女ひめみこの『白の聖女ミリティア』が屋敷に姿を見せた。

 神殿関係者でも普段は表に出て来ない人物である為、上流階級が多い貴族街でも注目を浴びるのは当然であった。

 彼女の乗る輿が通り過ぎると外出中の使用人達や若い貴族達は思わず視線を向けてしまう、だが、彼らが入っていった屋敷を見て思わず納得してしまうのであった。

 元勇者の屋敷の現在の持ち主が変わり者であり、元姫巫女の旦那であり、女王陛下がアレでなければ城の住民になっていただろう事など、くち五月蝿うるさい宮廷のスズメ達でなくても知っている話だ。

 よってこれから騒動が起こったとしても周りの住民達は大目に見てくれることだろう、彼の先達達もそうして来たのだから。

 さて、白の聖女も到着し、使用人達が張った天幕の中では戦乙女が地面に直接横たわっていた。

 地面にはベッドの代わりに聖印が白線で描かれており、簡易ながらも神殿のような雰囲気が漂っている。

 陽介はゲオルグと共にミリティアを迎えに行く。

 輿の四方を担いでいた強力達が慎重に地面に降ろすと女官が御簾みすを絡げ、ミリティアの姿が見える。

 白い聖衣を纏ったミリティアは輿から顔を出すと陽介に声をかけた。


「あら我が義弟殿出迎えご苦労、グウェンは居ないのかしら?」

「グウェンなら屋敷の中に控えております。何分身重なので」


 身内になったとは云え、流石に神殿での秘密兵器扱いの相手に馴れ馴れしい口を利くのははばかれたのか、うやうやしい態度で語りかける陽介である。

 そこへゲオルグが頭を下げながら大時代的な口調でミリティアへと感謝の言葉を捧げ始めた。


「ミリティア様、この度は我が戦乙女の解寿にまかり越し頂き恐悦至極に存じ上げまする。我が家伝来の機械人形が魔女娘の祝福攻撃により異常を訴え、このままでは魔王の軍勢との戦いに支障を来します故、何卒お力をお貸し戴けますよう伏して願い奉りまする」

「相変わらず堅いわねぇ、魔人討伐の時からそんな感じのしゃべり方だったし、仲間だったのですから、もう少し砕けたしゃべり方でも無礼にはなりませんよ?」

「いえ、これが拙者の喋り方でありますので、それよりも……」


 ゲオルグは懇願する眼差しでミリティアを見つめていた、そこには焦りの心情しかなかった。

 ミリティアは過酷な旅の途中でゲオルグが普段から戦乙女に対する十分なケアを目にしていたが、ここまで道具に拘る性格だとは思っていなかった。

 これはミリティアの機械人形に対する認識から、機械人形は機械であり機械は道具であると云う考えだったので、ゲオルグが戦乙女の事をまるで大事な家族の様に大切に思っている事など想像の範囲外にあった為であった。

 であるが、ゲオルグが戦乙女に対して真摯な気持ちで懇願しているのは理解出来た、先ほどの言葉にもあった様にゲオルグは旅を共にした大事な仲間なのである、それをおもんぱかってこれから行う施術は成功させなければならないなと改めて決意する。


「分かっていますよ。それで何の術が掛けられたかは分からないのですね?」

「はい、残念ながら。ただ、あれ以降、戦乙女が感情的な反応を示すようになったので。知能強化の祝福か何かだったのではと愚考しますが」

「ふむ、ふむ。取り敢えず祝福の正体を捉えてからの対処という手順で参ります。皆は後ろに控えていて下さいね」


 彼女が微笑みながら皆に促すと、陽介、ゲオルグ、その他イザと云う時のために控えている兵士達は天幕の端の方へとぞろぞろと移動する。

 彼らが安全な距離に移動した事を確認したミリティアは胸元から聖刻を取り出すと聖印の形に腕を振り、神へと信仰を告白する。

 両手を目の前で合わせ、目を瞑りながら陽介には理解の出来ない古代言語で言葉を紡いでいる。

 その真剣な雰囲気は荘厳であり、グウェンに見せるお姉さん然とした様子は窺えない。

 二十ほどのフレーズを唱え上げたところ、聖刻から光が零れ、ミリティアの身体全体から光が立ち上り始めた。

 見る見る内に強くなった光はまるでガスの様に漂うと、横になっている戦乙女の身体を包み込む。

 しばらく様子を眺めていたミリティアは「ムー」っと声を上げて伝わってくる感覚に唸りを上げる。

 暫く悩んでいるとゲオルグを呼び寄せて分かった事を話し始めた。


「何となくだけど、掛けられた術の種類は分かったわ」

「おぉ、流石は聖女様、して、如何様いかような物だったのでしょうか」

「う~む。ピュグマリオーン、かな?」

「ピュグマリオン、っと云うと?」

「神話によると、現実の女性に幻滅したピュグマリオーン王が自らが作り上げた理想の女性を象った彫像に恋をして、哀れに思った女神が彫像に命を吹き込んだって云う話。実際にそう言う事があったかは別にして、この術が使われた記憶はないなぁ」

「プロデュース・フレッシュゴーレムみたいな物でしょうか」

「材料は死体じゃなくて、石像だけどね。だけど、大分進行しているから。止められないと思う」

「そんな、どうにかならないのですか?」

「ええ、と云うか今すぐにでも変化が・・・ホラ」


 ピキッと何かがヒビ割れる様な音が響いた。

 戦乙女の本体表面は大理石と琥珀で出来ている。

 それを覆うように白銀の鎧や兜が装着されているのだが、それを含めて網の目状のヒビが走って行く。

 全身がヒビに覆われたかと思うと、次の瞬間にはそれらが弾け飛んだ。

 弾け飛んだ大理石や琥珀の破片が辺りに飛び散り、その場にいた者達は目や口を押さえて離れた場所へと移動する。

 コンコンと破片が転がる音が聞こえてきたが、それも収まるとミリティアとゲオルグ、陽介は爆心地である戦乙女に目を向ける。

 そこには標準的な体型の女性の裸体が寝転がっていた。

 顔付きは戦乙女らしく吊り目気味で、年頃の娘さんと云った雰囲気である。

 それなりにある胸の谷間には赤い貴石が顔を覗かせていて、そこだけが人間とは違う形状であることを主張していた。

 ただし身長3メートルであるが。

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