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真夜中の殺人魔

まだ未完成。読みずらかったらすいません。

 ゴロッゾの街に漆黒の夜が訪れ不気味な空間が広がっている。人々は生活の営みを停止し寝入っている。俺はそんな人気の無い街の夜道を闊歩していた。

 何故こんな不気味な夜道を俺が一人で歩いているのか、それは街に表れるという殺人魔とやらを探しているからだ。

 時は遡り数時間前、俺は街の飲食店で夜中に人を襲われる事件を耳にする。俺としてはどうでも良い事だったのだが、糞女ことエリザが殺人魔の正体を探るためある事を言い出した。

「あんたよ、あんた」

 エリザは俺に向け指を指して来る。話の流れからエリザが言わんとしている事が何となく予想が出来ていた。

「あんた囮になりなさい。そして殺人魔に襲われなさい」

「………………………………………………」

 俺は絶句する。余りにも自分勝手で自己中心的、残虐かつ非道な要求に対する答えは勿論ノーである。

「何言ってんだお前? 嫌に決まってんだろふざけんな!」

「よし、じゃあ早速情報収集にいくわよ、あっ料理ごちそうさま」

 エリザは人の意見を聞くという思考回路の回線が断絶しているのかもしれない。

「おいちょっと待てよ! 人の話を聞けよお前」

「何よ?」

 何よ? ではない。人の意見を聞け。

「俺は嫌だっていってんだ。何殺人魔をけしかけようとしてんだ!」

「けしかける? 人聞きの悪い事言ってんじゃないわよ。おとり作戦といいなさい。そしてアンタはそのおとり役。分かった」

「分かりません、全然分かりません!!」

「それに、あんたなら殺人魔に襲われても撃退できるでしょ、適任じゃない」

「俺を買いかぶってんじゃね~。俺を舐めんなよ」

 半分やけくそ気味にキレる。眉間にしわを寄せている俺にエリザは言って来る。

「ああ!! とにかくついてきなさい。文句なら後で聞くから」

「チョッ、待てよ!」

 そんな事もあり、なし崩しに説得されてしまった俺は、街の人から聞いた情報を元に、殺人魔が表れると予測される道を歩いている訳なのだが。

「おいおい本当に殺人魔なんていんのか……」

 かれこれ三十分近く辺をうろついている。時々足を止め、後ろを振り返ってもそこにいるのは俺の様子を観察するエリザがいるだけだ。

 殺人魔を捕まえる為にエリザがたてた作戦は至極単純だった。

 まず俺が殺人魔に狙われる。俺がそれを迎えうちつつ殺人魔と交戦。その交戦するスキを狙ってエリザが魔法を打ち込む。

 シンプルな作戦ではあるが、別に魔物や軍隊と戦う訳ではないので、念入りな作戦じゃなくても問題はない。だが、その作戦も殺人魔が表れなければ意味がない。

 夜になり俺は体の底からこみ上げて来る睡眠欲を押さえ込み、殺人魔の襲撃に備えてていた。

 その後、いくら待っても殺人魔どころか人の気配すら感じない。そんな現状に殺人魔なんているのかという疑心とエリザにたいする不満のきもちもあってかもう帰ろうかと本気で考え出していた。

(あぁ~めんどくさい……)

 もうしばらくうろついて何のアクションも起きなかった帰ろうと思ったその瞬間――断末魔の叫びが道の奥から響く。

「ギャァァァァァァァァァァァアアアアアアアアアア!!」

 その悲痛な叫びを聞いた俺は、脳のギアを通常モードから緊張モードにシフトチェンジすさせ、声のする方へ――駆ける。

 疾風迅雷のごとき速度で地を蹴り突き進んだその先に見えたビジョンに俺は絶句するしかなかった。

 血、夥しい量の血液の海が辺一面に広がっていた。そして滴りでる血潮の源を俺は目をこらし確認する。

「こいつはッ――――」

 そこにいたのはのは真っ赤な血を吹き出し仰向けにたおれて、絶命している男だった。俺はその男の顔を知っていた。今日の昼間偶然刃を交えた男の顔を、エリザに絡んでいた男の顔を。

 刹那――俺は頭上に気配を感じ後方へと跳ぶ。もといた位置に斬撃がはしり、石の地面が豆腐の様に切り裂かれ鋭い傷跡が刻まれる。

「ッ―――!?」

 俺の視界が人影を捉えた。

 影は全身をフードで身を包み、フードの奥に見えるその顔を仮面で隠している。仮面をつけた何者かの手には角の様な形をした剣が握られていた。その剣の刃からは金属光沢みうけられず、トカゲの様な黒い鱗が生えていた。

「お前が街を騒がせている殺人魔って奴か」

 俺は奴の動きを警戒しつつも、長剣あいぼうにてをやる。

「そいつやったのアンタ? ていゆうかその剣に見た事ない形してるね」

「……」

 質問に殺人魔は応答しようとしない。だが確かに俺は感じていた。首筋を流れる汗が緊張感を高める。

(……コイツかなりヤバいな……)

 街の外で魔物と出くわした時、闘技場でマイケルと一騎打ちした時、飲食店で喧嘩に巻き込まれた時、感じる事の出来なかった言いようのない緊張がわき上がる。殺人魔が纏うオーラはこの街にきて最大級のものと言っても過言ではなかった。

「ねえ、あんた何者? どうでもいいけ――」

 言葉を発しきる前に殺人魔は間合いを一瞬でつめ剣を縦に切り下ろす。

「クソッ――!」

 背中から相棒を引き抜きその一撃を真っ向から迎え撃つ。二つの刃が軋み合い、夜の街に豪快なサウンドを響かせた。殺人魔の角の様な剣が相棒の刀身で静止する。

 剣と剣の押し合いは俺の力が勝った。相棒を真横に振り払うと同時に、殺人魔は後方へと跳んだ。

「おいおいマジかよ……」

 俺は驚くしかなかった。

 なぜなら俺の使用する『極東流剣術ごくとうりゅうけんじゅつ』は本来魔物の鱗、牙、爪、尻尾などを切り裂き、破壊し、抉りとる事を目的とした対魔物戦闘特化型剣術。斬撃の速度、腰の振り、踏み込み、あらゆるモーションを一瞬で行い必殺の一撃を決める。

 真横に薙いだ俺の一撃は防御ではなく武器に対す破壊攻撃だったにも関わらず、角の様な剣はヒビが入るどころか傷一つついていない。

 殺人魔のほうも自分の一撃が受け止められた事が信じられないのか、首を傾げている。

 殺人魔の実力は予想に反し相当のものだった。後方に跳んだときの身のこなしにしてもかなりのもの、相当な訓練を積んでないとあの様な動きはなかなか出来はしない。

 それ以上に注目すべきは俺の一撃を受け止めたあの歪な形をした剣。只の剣じゃない事は明白だった。

(しかたねぇ試してみるか)

 地を足が蹴った。縦一文字の一撃を繰り出す。

 殺人魔はそれに応じるかの様に真横に剣を薙ぎ払う。

(かかった!!)

 俺は息を吸い込み手に力を込める。手から魔力が剣に伝わり刀身がスプリンググリーンの色彩を放ち加速する。

 魔技の一つ『烈風』。剣に風の勢いを加えたその斬撃は『烈風斬』と呼称される。烈風斬を極東流剣術の型にのせ切断に特化した一閃を殺人魔の剣に打ち込む。

「らぁ!」

 殺人魔の剣へと向けた剣撃はわずかにだが鱗の刀身を抉り、縦一ミリを傷をつけ静止する。俺は技が止まった事を確認すると同時に殺人魔を蹴り跳ばし、その反動を利用して後方に退く。殺人魔もまた体勢を保ったまま地に着地する。

「くそッ、なんだよあの剣、無茶苦茶かて~」

 切断は出来なくとも、もう少し抉れると予想した筈だったが、鱗の刀身はよそう以上に強固なものだった。

「しゃあない、もう一度いって見ようか。今度はとっておきを使ってやるよ、特別にな」

 次の攻撃を繰り出そうとした俺は、殺人魔の様子を確認するとその挙動を中断させる。

「――?」

 目の前に立っている殺人魔の剣の刀身が竜胆色りんどういろに輝いた。鱗の様な刀身はメキメキと動き、さっきの一撃でつけた傷を塞いでいく。

(なんだよあれッ……魔技? イヤ何か……)

 殺人魔の剣から発せられる光は魔技の発動による発光現象と似て非なるものだった。鱗の刀身から滴りでる光はおぞましく立ち上る炎、漆黒の闇の中、その炎は不気味な光の空間を作り出し、浸食していく。

 俺は生唾を飲み込み殺人魔の行動に注意をはらった。渦巻く緊迫した空気、今にも殺し合いが始まる極限状態。

 だがその厳戒態勢は突如として打ち砕かれる。

 殺人魔の頭上に瀑炎の玉が複数降り注いだ。複数の瀑炎は夜の街に激しい爆発音を轟かせる。その衝撃により殺人魔の姿はかき消される。

 おそらくこの魔法は下級魔法の『炎弾』。単発の威力はそこそこだが複数に成って来ると中級魔法クラスの威力になる。

(おいおい、どこの鬼だよこんな事する奴……)

 俺は頭上を確認。視線の先には殺人魔に火炎の豪雨を降らす鬼畜な攻撃をを放った悪魔の様な女が立っていた。

「やっぱりお前か……エリザ」

「まさに作戦どおりね、完璧なタイミングだったわ」

 エリザは俺が殺人魔と命がけで戦っている間に何時の間にか、住居の屋根の上に上っていた。おそらくあの女はスキが出来る瞬間まで様子を伺っていたのであろう。

「そんな事よりお前、鬼だな……」

「ばか言ってんじゃないの、アレぐらいがちょうどいいと思ったからうったのよ。私も人に向けて魔法なんて撃った事ないし手加減なんて無理」

(これが初めての実戦経験か、末恐ろしい)

 俺はエリザに恐怖を抱きつつ再び視線を殺人間の立っていた方向に戻す。煙が上がりまだ殺人間を視認できずにいたその刹那――黒い火柱が煙の奥から出現しエリザに向かって直進していく。

「あぶねぇえッ 避けろエリザ!!」

 俺が叫ぶ前にエリザは回避行動を起こしていた。エリザは横に跳びそれを回避しようとする。黒い火柱が振れた屋根の一部は抉り取る様に焼け消失する。横に飛び回避行動を行ったエリザは体勢を崩し屋根から落下、素早く風の魔法を発動させ、発生した浮力により無事着地する。

 それを確認した俺は煙が霧散し、奥に立つ殺人魔へ視線を移す。

 殺人魔は仮面に空いた目の隙間から赤い光を放っていた。

 


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