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シュナイゼル・ワイズマン

 王宮の謁見の間に一人の男が訪れていた。謁見の間にはその男を除いて王座に腰掛ける金髪の男とその横で立っている無精髭を蓄えた男の二人。謁見の間の外では甲冑に身を包んだ騎士が待ち構えている。

 王座に居座る男はフランナイト国王ことマルク・フランナイト。

 そんなマルクが険しい面持ちで眼前の男に問いかける。

「今日君が呼ばれた理由は分かっているかね、シュナイゼル君?」

 シュナイゼル・ワイズマンこのフランナイト王国最強の男にして聖夜の騎士団騎士団長。一国の国王がいるにも関わらずシュナイゼルからは何の動揺も見受けられない。

「はて? 何の事でしょう国王。私にはこの様なお席にご呼ばれする様な事に心当たりがありませんが?」

「貴様、国王の前で戯言をほざくつもりか! お前が他国の者を我が国に招いて秘密裏に密会している事はすでに調べはついておるのだぞ!!」

 シュナイゼルの白々しい態度に、参謀のレナード・エルゲイダーは激怒する。

「まあ待てレナード。開口一番がそれではシュナイゼル君も困るだろ? シュナイゼル、今日君を呼んだ理由は他でもない。君がここ数ヶ月前に親しくしている異国の男についてだ」

 と国王はシュナイゼルに問いかけた。

「ああ彼ですか。彼は私の古い友人でして、ゴロッゾに訪れた彼を見かけ、行く宛も無いと言い出したものですから私の屋敷でかくまっているだけですよ。密会なんてとんでもございません」

「成る程、君の言いたい事は理解した。君がどこの誰とつきあおうが君の勝手だ。だが平民街ならともかく貴族街にどこの者かも分からない人間を勝手に招くのは頂けないな」

「申し訳ございませ国王。これは報告の責務をおこたった私の責任です」

 シュナイゼルは軽く頭を下げる。それを見たマルクは癪払いをすると、

「話は変わるが、ここ最近我が国で魔元素の濃度が著しく高くなっていると報告があった。貴様も知っていると思うが魔元素はありすぎれば我々人族にとって害でしかない。そのせいでゴロッゾ周辺の魔物の活動が活発化している。たしか君の言う友人とやらがこの国にやって来たのもここ最近であったな……」

「彼が何らかな形で関与していると?」

「まさかとは思うがな。しかし今の我が国の現状を考えて、慎重にならざる得ない。我が国は近年まで鎖国をしていたおかげで南大陸の中でもっとも発展が遅れている事は分かっているだろう。この国は開国して間もない。今が大切な時なのだ。それなのに国の内情がこれでは国民も他国の者も不安がる。今は一刻も早く皆の足並みを揃える必要があり、君には騎士団長として国の安全をまもるのに尽力して欲しいと私は考えている」

「とてもありがたいお言葉を頂きありがとうございます。ですが心配には及びません。私はこの国に忠誠をを誓った者です。そう仰らなくともこの身はこの国の為に仕えていく所存です」

 そのシュナイゼルを見たマルクは笑みを浮かべ、

「そうか。君がそういうなら私は信じよう。異国の友人と仲良くするのだぞ。これからもよろしく頼むぞシュナイゼル君」

 と労いの言葉をかける。

「ハッ! では私はこれにて失礼いたします」

 シュナイゼルがマルクに背を向け歩き出そうとした時、

「ちょっと待ってくれシュナイゼル君」

「ハッ、何でしょうか?」

「最近平民街の方で連続殺人事件が起こっているらしい。まさかとは思うが一応念のため速やかに事件の解明と解決をお願いできるかな?」

「了解いたしました」

 と言うとシュナイゼルは再び出口の扉にむけ歩み出す。




 王宮の外に出たシュナイゼルは物陰に隠れていた男に気づく。

「あれほど目立つ行動はするなと言っておいた筈だが……」

 シュナイゼルの眼光の先に一人の男が姿を現し。

「これはどうもすいませんシュナイゼル様」

 男は黒いスーツを纏い能面の様な笑顔をシュナイゼルに向ける。

「お前のその格好は嫌でも目につく。外に出る時は注意しろ、いくら気配を消してもバレるときははバレる」

「これはどうもすいません。しかしながらお客様のご様子を気にかけるのも我が社の社訓でして」

 黒スーツの男は一礼する。

「まぁいい。それより例の準備はちゃんと進んでいるか?」

「もちろんでございます。お客様に最大で最高級の満足を、これも我が社の社訓でございます」

「そうかそれは何よりだ」

「ふふふ」

 二人の男は不適に笑みを浮かべる。

 かつて勇者が生まれたこの国は欲望と陰謀の渦に飲み込まれようとしていた。人々がその異変に気づくまでそう長くはかからなかった。


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