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三幹部

国名は適当です。


 性格が根本的に合わない奴がいると言うがそれは本当の事だったらしい。磁石が反発する様に、この女とは気が合う気がしなかった。

「あの~、エリザさんエリザさん?」

「何よ?」

「一応聞くけどそれは何ですか?」

「何って? 料理でしょ?」

 エリザの前には山盛りに積まれた肉が並べられていた。その量は一日に必要するカロリーをはるかに凌駕している。俺が心配しているのはそのあまりの量を一人で食べるエリザの体の事ではない。『一体誰がこれだけの食事の料金を払うのか』である。

「あのエリザさん? お金は持ってますよね?」

「持ってないわ」

「じゃあその料理のご料金は一体誰が払うんですか?」

「あんたでしょ?」

 さも当然のごとく自信満々に答えるエリザ。俺のお財布事情を理解できているのか?

「……おいッ、ふざけんなよテメー。何が『あんたでしょ』だ? 俺はお前に街を案内する事は承諾したが、お前に飯をおごるとは一言も言った覚えは無いんですが? もしかしてエリザさんは空想とか妄想とかが得意なんですか? 年中お花畑ですか?」

「貴方まさか、そんな甲斐性も無いの?」

「俺が聞いてんのはそこじゃねぇ!」

 街を案内するとエリザに約束した俺がまず案内させられたのが人魔界屈指の飲食店『グスト』。グストは人魔界に支店が数多くあり、本店は南の大陸にある大国『サウスクロス』にある。

 エリザは出て来た料理をナイフとフォークを使って奇麗に平らげ、

「いやー食った食った! 意外とバカにならないわね平民の料理も」

 とお嬢様みたいな外見とは裏腹に豪快な山賊の様な感想をは恥ずかしげも無く口にする。こいつ本当に貴族街の行き方を知っているのかと軽く心配になった。

「お前よく食うな……」

「日頃の生活のストレスよ、夜中とかやたらとお腹が減るしね」

「腹ふくれたとこであらためて聞くけど……お前本当に貴族街に連れて行ってくれんのか?」

「え? そんな約束したっけ?」

「テメェふざけんな! 人に飯おごらせておいて約束を反故ほごにするつもりかよ!」

「嘘よ。ちゃんと覚えてるわ。お母さんの情報が欲しいのよね? でもぶっちゃけそんな情報、貴族街の人間が知ってると思えないんだけど。あんた偉い人なら何でも知っているとかそんな安易な考えで貴族街に行こうとしている訳じゃないでしょうね。ちゃんと宛はあるの?」  

 ドキッ! 俺の心の中で銃声がなった。もしかして俺は重大な勘違いを起こしてるのではないだろうか? 偉い人=なんでも知ってる人という認識は間違いだったのか。心の奥底で根底となる理論がハンマーで激しく叩かれ砕け散る。気づいた時には膝が床に崩れおち、両の手は床を押し込む様に奇麗に垂直立ちしている。額の汗腺かんせんから汗が噴出する。瞳孔が収縮し目の前がブラックアウトしていく。そして一言。

「確かにそうだぁぁぁぁぁぁぁあああ!」

 絶叫と嗚咽。息が苦しくなってきた。穴があったら入りたい。

「バカ……」

 さすがのエリザも手で口を抑え、哀れみの言葉をかけてきた。

 旅行は計画的にだ。適当な気持ちで飛び出すと旅の資金が無くなったり、忘れ物などをしたりする。

 俺は今回の食事で、資金を全て使い切り、当初の目的だった貴族街に行くとゆう目的に致命的にかけている物に気づいた。『行って何をするか』だ。俺はしばしその場で土下座体勢のまま考えていた。





            *





 ディエゴ・マルフォイは多いに退屈していた。一国の軍隊その精鋭部隊『聖夜の騎士団』その中で自分が最強であると信じて疑わなかった。だがどんなに強くても自分にはそれをふるえる機会がないのだ。あるとしても自分より遥かに劣る訓練兵との手合わせや、街の外に表れる低級の魔物。この小さな国で自分は腐って行くしか無いと思っていた。

 王都ゴロッゾ貴族街の一角にある聖夜の騎士団本部は白を主体とした石造りの建物だ。大きな門をくぐればそこに見えて来るのは緑あふれる広大な庭園。庭園には噴水があり、陽光にてらされ噴出する水が光沢する。

 そんな庭園のベンチに腰掛け怠そうに空を見上げるパーマかかった紺色の髪をした青年が一人とその横で木に背中を預ける紫の髪をした女があきれた様な顔をしていた。

「あー暇だな」

 そう呟く傍ら、クェス・マルキオットが呆れた様に問いかける。

「ディエゴ貴方は何時もそれね……そんなんだから兵に煙たがられるのよ」

「げッ! まじで!? あいつら俺の事避けてんだ……ちょっとムカつくな。後でお仕置きだなうん」

「貴方には騎士団としての自覚が足りないわね……そんな事したら問題に成るわよ。団長に迷惑かけるのだけは辞めてよね」

「ところで団長今何処にいんの? 姿が見えないけど。今日集合かけたの団長でしょ?」

「団長は会議中……今は手を離せない……今日は解散……」

 ディエゴの背後から声が聞こえた。

「うわぁ! ゴドウィン……急に出てくんなよビックリしたじゃん」

 ゴドウィンと呼ばれる大男はまるで機械の様に簡潔に事実だけをのべ、無駄な愚痴はは叩かない。

「お前さぁ無愛想ってよく言われない? 少しはリアクションぐらいすれば……」

 ディエゴは苦笑する。

「そうか今日は解散ね。了解、了解。じゃあここにいても意味ないな」

 手をひらひらとあげながらディエゴはその場を去ろうとする。

「ディエゴ待ちなさい何処に行くつもり?」

「何処って……うーんとね、お坊ちゃまのお守りかな」

「ああ成る程ね。くれぐれも機嫌は損なわ無い様にね」

「分かってるって、大事なお坊ちゃまですから、僕らにとって……」

「分かってるならいいわ」

 ディエゴ、クェス、ゴドウィン。三人の幹部達は短いやり取りを交わしその場から去った。


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