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黒髪の少年

かなり長文になりました。

誤字脱字、表現、言い回しの、間違い不自然さはご了承下さい。

行き交う人の群れに感動をおぼえていた。これが人のなみという物なのか。宮殿の真上から見下ろした事はあれど、間近で目撃した事は一度もない。水が流れる様に動く彼らは一つの風景であった。「いらっしゃい。いらしゃい! ゴッロゾ名産ゴンニャクいかがっすか!!」、「世にも珍しい伝説の剣、これさえあれば魔王もフルボッコ!!」などと商売を営む人々の声がする。

 これが平民街─────私が知らない世界。

 貴族街と違う重苦しい雰囲気など全くない。皆が自由に生き、考え、行動する。毎日の様に豪勢な宴会を行う事は無けれど、いきいきとしたこの空間はとてもすてきだと思った。これが今まで私のずっと側に存在していた事が不思議に思えてくる。

「……すごい、予想以上ね」

 あまりの感動に、心此処にあらずだった私に声が聞こえて来た。

「お嬢ちゃん、お嬢ちゃん」

 何だと思い声の方向に体を向ける。そこには果物を売っている店の女店主? が私の事をニコニコしながら見ていた。

「私に何か様ですか?」

 おばさんは笑いながら、

「リンゴはいらないか、安くするよ、何と銅貨2枚!!」

 どの程度安いのか理解できなかった。今の今まで銅貨なんて聞いた事が無い。

「ヘぇ……じゃあ一個もらおうかしら」

「まいどあり!!」

 おばさんはリンゴを袋につめて手渡して来た。

「ありがとう」

 私がそういって、その場から立ち去ろうとすると、

「ちょっとお嬢ちゃんお金、お金!」

 と言い止められた。

「お金? 何ですかそれ」

 私が意味深に返答すると、

「銅貨だよ、銅貨、言ったでしょ銅貨2枚って」

 そこで私は理解した、お金と言う物は、この国の通過だ。たしか金貨、銀貨、銅貨とがある、金貨一枚で銀貨10枚、銀貨1枚で銅貨10枚の価値があると、読書家の私は宮殿の図書室でそのような本を見たような気がする。だが迂闊だった、私はお金を持っていない。

「実は私、お金を持っていなくて……」

「え!? 本当に、それじゃあ売る事は出来ないよ」

「そんな……」

 私が捨てられた子犬の様な顔になると、可哀想に思ったのか、

「仕方ない、貴方どうやら見た感じ貴族の箱入り娘って感じね」

 正解だった。私は生まれてこの方、貴族街の外から一歩たりとも出て来た事が無い。一国の王女にも関わらず、この街に顔さえ見せた時すらないのだ。国民も私が王女である事すら分からないだろう。

「分かった、お金はいらないわ、おまけしてあげる、今日は特別よ」

 おばさんはニッと笑い、言って来た。

「本当ですか!? ありがとう御座います!! おばさま」

「いいって、いいって……あとおばさまじゃなくおねー様といいなさい」

 おねー様はそういって、リンゴをくれた。






 果物屋の一件で私は自分の現状を理解した。街で物をかったりする時はお金がいる。普段は使用人のメイが料理を運んで来たり、欲しい物があれば大体の物は手に入った。だが実際に自分自身で買い物した事がない、箱入りすぎるのも問題だなと飽きれる。

(宮殿に帰れば、金なんて腐るほどあるのに……全く迂闊だったわ。でも今から宮殿に戻っても、下手をすれば私が貴族街の外に無断で外出している事がバレる)

 途方にくれた私は、街の中にある店をみつける。

「ん? 何この店、此処だけ何か浮いてるわね」

 妙に渋い感じのするその店に、ついうっかり入ってしまった。。木で作られたそこは、『子供の入る所じゃない』と思うぐらいに、独特の雰囲気を醸し出している。

 辺を見渡す。そこには食事をしている人やガラの悪い連中が椅子に腰掛けていた。

(もっとも、金なんて無いから、ここにいても商売の邪魔ね)

 と思い、店から出ようとすると、

「ちょっと待ちな嬢ちゃん」

 ふいに呼び止められた。そこには奇麗に整えられたヒゲをはやした、ガタイのいいおじさんがたっていた。

「何処行くんだい? 浮かない顔して?」

 おじさんは渋い顔をこちらに向けてくる。

「あの、わたし……」

「待った、とりあえず店はあいてるぜ、席についてからじっくりと考えを整理すればいいさ」

 と私の言葉をさえぎる。

「え? ちょっと待ちなさいよ、私お金なんて持ってないわよ」

 つい素で話してしまった、私を気にする様子もなく、

「そんな些細な事気にしてたのか、ハハ、嬢ちゃんお客様は神様って言葉を知ってるかい? つまりそうゆう事さ、お金が無くても飲み物の一杯ニ杯サービスするぜ」

 どうゆう事かは分からないが、おじさんはいい人らしく、私を空いてる席に案内すると、ネバネバした液体をはこんできた。

「嬢ちゃんこれを飲みな、気分が落ち着くぜ。コーヒーの一種さ、名前は『never never die』明日への希望って意味さ……」(*意味不明)

 おじさんは自信満々にそのネバネバの液体を私の前に置いた。

(よく潰れないわねこの店……)

「それ飲んで、気分が落ち着いたら、改めて愚痴でも何でも聞いてやる」といいながらおじさんはさって行った。

「変わった人ね、この街って皆アンナ人ばっかなのかしら」

 私は少し心配になった。




 おじさんから貰った、コーヒー? を生理的に受け付けなかった私は、一口も口にしないで、これからどうするか考えていた。

(うーん、本当にどうしよ、いっその事宮殿に帰って改めて街にこよう……イヤ、今日はたまたまうまく抜け出せたし、メイにも毎度迷惑はかけられない)

 と爪を噛みながら考えていると、後ろから誰かが声をかけて来た。

「おーいお嬢ちゃん」

(────?)

 私は後ろを確認する。そこには身長180センチくらいの、剣を腰に指した、茶色の髪の男が立っていた。

「何か様ですか?」

 私はカマトトモードに切り替え、様子をうかがう。

「お嬢ちゃん可愛いね、おっとごめんよ、俺の名前はカイウスって言うんだけど、お嬢ちゃんが余りにも可愛かったからついあわてて。」

 爽やかな顔の裏に下心の様な物を感じる。昔から大人の輪に入り、嘘と悪意の世界を目にして来た私は表情、目、仕草から、相手の感情を読み取る事ができる。コイツからは私の嫌いな匂いがプンプンとしていた。

「あっちで一緒に食事しない、おごるからさ」

「結構です」

 私はキッパリと答えた、幾らお金が無いとはいえ、こんなドコの馬の骨とも分からない奴と顔をあわせて食事をするなんて反吐がでる、それも下心見え見え、なおかつ14歳の少女をナンパして来る様なロリコン野郎ならなおさらの事。

「そんな事言わずに、今日だけで言いからさ……」

「嫌です」

 私は笑顔で返答する

「そこをなんとか」

 男はしつこい私の軽くイラッとする。そしてつい────

「うっとうしいわね、消えなさい」

 つい本心が出てしまった。そう言うと男は態度を豹変させて来た。

「何じゃ!? このアマァ!? 人が仕立てに出てりゃいい気になりやがって!!」

 爽やかな表情は崩れさり、下品な素顔があらわぬなる。

 怒り。傲慢で自分勝手な怒り。

(そっちがさそって来た癖に、思い道理にならなかっただけでソレ、何なのコイツ……」

 そう思った私の中で、何かが吹っ切れた。

(そうよ、今は自分を取繕う必要なんて無い、私を知る人間なんて此処には一人もいない、あぁそうよ、今は姫様じゃない。私は私だ!!)

「あんた息が臭いのよ、あと私の視界に移らないでくれる? 目が焼けそうだわ」

 私は心の底からはじめて本心を口にした。そして、

「死ね、豚、クズ、ゴミってホント無能ね、脳味噌付いてんの? いい良ーく聞きなさい、アンタの事なんてね誰も見ちゃい無いのよ、だから死ね! 誰にも迷惑掛けない様に苦しんで死ね!!」

(ハッハハハ最高、最高に気持ちいいわ!! 未だかつて無いこの満足感、開放感わたしは自由だ!!)

「このアマァ……殺すッ」

 男は相当ご立腹のようだ。適当にぶちのめそうかと思っていると、ふと視界の隅に人影が映った。

(ん? 何アイツ……子供? それに私と同じくらいの……)

 目をやった先に、くせ毛のある黒髪をし、全身真っ黒の服を着た男が椅子に座りながらこちらを眺めていた。男の目は真っ黒で吊り上がっている。

 私と視線があって男は何かに気づいたのか。顔をそらし横目でこっちの様子をうかがっている。

(なにアイツ、それにあの目……)

 私は知っているあの目を、人を見下したり、下げずんだりとは違ったあの目を、あれは──────

(人をバカにしている目だ。何アイツ、果てしなく殴りたい)

 そんな事を考えていると、私はある事を思い浮かぶ。そして黒髪の少年に指を向け言う。

「ってアイツが全て言えって、これで良いんですよね!!」

 黒髪の少年は殺意に近い怒りを表情に表し、私を見て来た。

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