空間支配《エリアコントロール》
「ようこそ、『ホープ』へ」
豪華な部屋にある豪華な装飾が施された机に座りながら、勝は言った。
「『ホープ』ってなんだ?」
こっちは、これまた豪華な椅子に座って少年、蓮哉は聞いた。
「簡単に言うと、自警団みたいなものかな。主な活動は、街で起きてる、無能力者の集団『アンジャッチ』による能力者の被害をなくすこと。」
「君も被害にあったよね♪」と萩原。
「あいつらか。」
「最近は、あいつら能力者対策用の武器なんてのを作ってんだ。そのせいで、被害が拡大してる。」
蓮哉が絡まれた時に取り出された棒型スタンガンもその1つだ。
「それはいいんだけどさ、俺今日帰るぜ?そんなこと聞かされても意味ないんだが。」
「お前…。あんだけの騒動おこしといて帰れると思ってんのかよ。事情聴取中に逃亡したしな。指名手配だ、指名手配。」
蓮哉は予想してなかったのか急に慌てだした。
「え、え!じゃあ俺どうすればいいんだ?」
蓮哉は勝に掴みかかるような勢いで尋ねた。
「まあ、指名手配のことはどうとでもなるんだが、」
慌てる蓮哉とは対照的に勝は落ち着きはらった口調で続けた。
「結論から言うと、お前はこの街から出れない。おっと」
勝の携帯が鳴りだした。
「ちょっと、席外すな。あとのことは、美千香が面倒見てくれる。」
言いながら、部屋を出て行く。
「では、着いて来て下さい。」
美千香も部屋を出て行こうとする。蓮哉は着いていくしかなく、「あ、はい。」と返事をしながら後に従った。
2人が部屋に入ると電気がついた。
「すっげぇ…。」
別に蓮哉は自動でついた電気に感動しているわけではない。それぐらいは本土にもある。
蓮哉が驚いたのは、その部屋の機械の多さだ。大半がこの街にしか出回っていなく、しかもかなり高価な機械だ。勿論、蓮哉は見たことがない物が大半だ。
「さっき、リーダーは言い忘れてましたが、理を無視した能力はセンサーに必ずしも反応するとは限らないんです。リーダーもそうだったんですよ。」言いつつ、1つの機械の電源を入れる。
リーダーとは、勝のことらしい。
「勝も?じゃあ、本土にはまだ能力者が一杯いるってことか?」
「いえ、この系統の能力者は限りなく少ないのでそれはないとは思います。準備が出来ましたので、ここに仰向けで寝て下さい。」
蓮哉は素直に従う。
「おそらくあなたの能力は、強力なのでしょう。あまりにも強力すぎて、体が拒否していると考えています。」
その拒否を解除するのがこの装置です、と本城は続けた。
「では、始めます。」
本城がスタートボタンを押した。
同時に、蓮哉の体に凄まじい痛みがはしった。
「ぐワァァァァァァァァァァァァァ。がぁぁ」
「気をつけてくださいね。能力を引き出すまで死んでもこの装置は止まりません。生きたかったら早く、発現してください。」とんでもないことをさらっと言い放った。だが、蓮哉にそれを気にする余裕はなかった。
「ごふ!げほげほ。」
蓮哉の口から赤黒い液体が噴出された。
みるみるうちに、蓮哉は生気を失いだした。
「ぎゃあああああああああああああああああああああああ!」
絶叫を発する蓮哉を黒い塊が囲んだ。その黒い塊はぶくぶくとひろがっていき、部屋全体を囲んだ。
その黒の塊の内側にさらに黒いモノが巨大な手をかたどり、機械をとらえた。
「!?」
先程まで傍観していた本城は、急な事態に少なからずパニックに陥った。機械が消滅している。
「っ!転移出来ない!この、黒い塊のせいか?」
そして、巨大な手が、次々に部屋にある機械を壊していく。
ついに、本城が狙われた。
「うわぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ、」
本城に手が届く直前で部屋に充満した黒い塊も巨大な手も消えていた。
そして、蓮哉が気を失った。